チャイナリスクは膨らむ一方で、収拾の見通しが立たない。本欄でも何度か警告してきた中国の債務爆弾である。
グラフは中国の銀行融資残高と銀行不良債権の推移である。銀行融資は2008年9月のリーマン・ショック以降、年率15%前後、一直線で増加してきた。不良債権のほうは12年から徐々に増加し始め、15年から前年同期比50%前後のペースで急増中である。
融資残高に占める割合は今年3月末時点1・4%で、日本の13年当時の水準並み(16年3月は0・97%)である。
ここで気をつけなければならないのは、中国の不良債権認定基準のいい加減さである。日米欧の場合、企業など借り手が90日以上返済を延滞すると不良債権として分類するのだが、中国の銀行は銀行が担保などを高く評価して「回収できる」と認定すれば、不良債権に計上しなくても済む。
大手国有商業銀行は主な貸出先が国有企業であり、共に党官僚が支配している。党の裁量がものを言う。貸し倒れはありえないと国有大手銀行は判断すれば、当局が追認するというわけである。
親中派のラガルド専務理事の国際通貨基金(IMF)も、いんちきなチャイナスタンダードを鵜呑(うの)みにすれば恥をかくと思ったのだろう。独自の分析で不良債権を算出した。IMFが4月中旬に発表したグローバル金融安定報告によると、融資残高に対する中国の不良債権比率は14%、国内総生産(GDP)に対する比率は20・7%に上る。円換算の不良債権額は中国当局データから算出すれば、3月末23兆円だが、IMF報告ではその10倍、230兆円へと膨れ上がる。