他国籍取得が増加…「EU内就職に必要」
離脱警戒
23日の国民投票を巡り、残留派と離脱派の支持率が拮抗(きっこう)する中、離脱を恐れて隣国のEU加盟国・アイルランドの国籍を取得する英国人が増えている。EU離脱の場合、英国籍のままでは加盟国への移動や就職の障害になる可能性があるからだ。
「離脱が決まったらすぐにアイルランド国籍を取得する。職を探すためにはEUを自由に行き来できる国籍が必要だ」。ケント大学院でコンピューターを学ぶジェームス・ヒュージさん(29)が言う。ヒュージさんの母親はアイルランド国籍。両親または祖父母の1人がアイルランド人なら、国籍取得が可能だ。
ヒュージさんは2009年に大学を卒業。専攻を生かせる音楽関係の職を探したが、リーマン・ショックの影響で望むような職は見つからず、病院の清掃員として半年働いた。その後、インターネットで職を探し、フランスのホテルに就職、ウエーターになった。「ビザ申請や仏での住民登録もせずに移住できた」と振り返る。
現在は英国に戻り、今秋から再び就職活動するが、EU離脱の場合は先行きが不透明だ。「英国には職がないかもしれず、(給料によっては)物価が高いロンドンでは暮らせない」と心配する。アイルランド国籍は今後のための「保険」だ。
世論調査によると、EU加盟後に生まれた若者世代には残留派が多い。ヒュージさんは「これまで当然のように加盟国を移動してきた我々にとって離脱のメリットはない」と強調した。
アイルランド外務省によると、国民投票の実施がほぼ決まった昨年、国籍取得に必要な出生登録をした英国人は917人で前年より3割増加。国籍取得資格がある英国人は600万人以上おり、離脱した場合は申請が殺到する可能性がある。