【北京=原田逸策】中国主導で1月に開業したアジアインフラ投資銀行(AIIB)は24日、第1弾の融資案件としてバングラデシュの送電線事業など計4件、5億900万ドル(約520億円)を決めたと発表した。融資の形態、対象事業など各方面に配慮した形跡がある。まずは運営を軌道に乗せるのを最優先して安全運転に徹した格好だが、一部には中国政府の影響も垣間見える。
4件のうち1件はAIIB単独の融資。バングラデシュでの送電線の新設や地中化に1億6500万ドルを貸し出す。4件を協調融資だけにせず単独融資も盛り込んだのは、自前の融資審査能力を訴える狙いとみられる。
残り3件は他の国際金融機関との協調融資だ。世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、欧州復興開発銀行(EBRD)のいずれとも協調融資を手掛け、既存の国際金融機関と対立しない姿勢を示した。関係者によると世銀との案件は難航し、5月下旬にAIIB職員がインドネシアに飛んで詰めを急いだようだ。EBRDの案件は金額が小さく融資効率は悪いがあえて盛った。既存全3行との協調融資を並べるのにこだわったフシがある。
対象事業も春の段階で候補に挙がっていたのは道路と送電線の2種類だけだったようだが、そこに世銀との都市開発事業を加えて幅を広げた。
融資の対象国の選定には最大出資国である中国政府の影もうかがえる。春にはインドで送電線を整備する事業も具体的に検討していたが、途中で脱落。一方、インドとライバルで中国が外交面で極めて重視するパキスタンの事業は残った。
25、26日には北京で初の年次総会を開く。加盟57カ国の財務相らが参加し、加盟国の拡大などを話し合うとみられる。