リンクは自由か?
2002年8月15日号
UP03/03/22
最終更新03/07/13
本文約2000字
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 2002年5月1日、日本弁護士連合会のホームページが全面的にリニューアルされ使い勝手がよくなった。しかし残念なことにトップページ以外へのリンクを制限するなど、以前はなかったリンク条件が付されて問題となった。現在はこのリンク条件、一部手直しされているが、今回はこの問題を題材に、リンクの法的意味をまとめてみたい。





リンク禁止の意味


 ネットサーフィンをしていると「無断リンク禁止」とか「トップページ以外リンク禁止」といったリンク条件をつけたページを見かける。

 しかしリンクはインターネットの本質的機能である。「リンク制限は誤っている」として、こうしたページを引用・批判・批評をすることもできなくなる。

 著作権法第32条は「公表された著作物は、引用して利用することができる」とし、「引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない」とする。つまり著作権法は、原則として、引用を認めている。

 それではリンク先の文章を引用するのではなく、リンクだけをはる行為はどうか?
 
 実はこれは著作権法に予定する引用ですらない行為というのが、学者の通説でもあり、政府見解でもある。なぜならリンクは「昨日の○○というテレビ番組見た?」とか言った類の情報の所在を示すものにすぎず、言わば「参考文献」の表示でしかないからだ。

 1997年5月22日に開催された第140回国会参議院文教委員会でも、政府委員の小野元之文化庁次長は、「ホームページの表示をするためのデータの中に他のホームページの情報も入れておくということにすぎない」「著作権法上の利用行為には該当しない」「リンク先のホームページ作成者の許諾というのは不要」と答弁している。



日弁連サイトのリニューアル


 2002年5月1日、日本弁護士連合会のホームページが、全面的にリニューアルした。サイト内検索エンジンがつけられ、また全国の弁護士が検索できる「弁護士情報検索」が新設されるなど、よりいっそう便利なものとなった。

 ところが以前はなかった概要次のようなリンク条件がつけられていた。

 (1)リンク先はトップページに
 (2)リンクを張る前に日弁連にメールで報告
 (3)リンク元サイトのホームページのURL、リンク元サイトの管理者の住所及び氏名又は名称(団体の場合は代表者の氏名を含む)、担当者の氏名、電話番号及びメールアドレスの開示
 (4)日本弁護士連合会が不適切であると判断したものはリンクを断る。



ネット上での批判


 こうしたリンク制限が馬鹿げたものであることは上述のとおりであるが、ネット上でも、「無断リンクの禁止は表現の自由の侵害」、「実名を要求するのは行き過ぎ」、「日弁連が不適切と判断してリンクを断るのは言論の封殺」といった批判がおき、報道される事態となった(http://ascii24.com/news/i/topi2002年6月17日の記事など)。

 その結果、日弁連は、リンク条件を2001年6月13日に変更。「原則自由であるリンクについて、当ホームページのリンク条件の記載はリンクを厳しく制限しているような表現になっていました。また多くの方々からリンクを禁止する趣旨とも受け取られる表記であるとのご指摘も頂戴しました。そこで、リンクについて原則自由であることを明確にし、誤解を招かないように、6月13日付で表現を改めさせていただきました」とお詫びを掲載した。

 ただし変更後のリンク条件も「リンク元サイトのコンテンツや運営が以下のいずれかに該当するもののリンクはお断りします」とし、「(1) 公序良俗に反するもの(2) 法律、法令等に違反し又は違反するおそれがある内容を含むもののいずれかに該当すると日本弁護士連合会が判断しリンクの解除を求めたときには、ただちにこれに応じていただきます」とされ、なお権威的なものとなっている。

 「リンクが原則自由」と言うなら、引用の仕方やその方法に問題があれば、端的に、「リンクの解除を求め、応じていただけない場合は、損害賠償等を求める場合があります」と記載すべきであり、「お断りする」「応じていただきます」とするのは威圧的だ。

 「応じていただきます」と言っても、自由が前提のこの社会では、応ずるか否かは相手の自由であり最終結果は裁判所が決めることになるからだ。

 リンク以外にも免責事項が定められ、概要「日弁連は、利用者が当ホームページの情報を用いて行う一切の行為に何ら責任を負いません」とあるが、サイトの内容に問題があれば、責任を問われるのは当然のことで、こうした条項は法的に無意味とするのが法的な解釈である(講学上こうした条項は「例文」と言わている)。

 「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」(弁護士法1条)弁護士の集まりである日弁連の態度としては妥当でなく、悪影響もはかりしれない。

 せっかくのリニューアルで便利になった日弁連のホームページだが、結局、官僚的な色彩を帯びてしまった。

 筆者のホームページでは、弁護士会サイトの格付けを行っているが、今回、日弁連サイトの評価を、○+から○に引き下げることにした。読者の皆さんはどう思われるだろうか?注5







以下の注は、03/07/13現在のものです。


注1 最近のリンク問題その1−「読売新聞」対「デジタルアライアンス」
 争われているリンク→


注2 最近のリンク問題その2−「産経新聞」対「連邦
 紀藤の意見→http://renpou.com/cgi-bin/news/index.html 03/03/22付け


注3 無断でリンクを張ることは著作権侵害となるでしょうか(提供:社団法人著作権情報センター)。


注4 リンクの法的問題については、後藤斉東北大学助教授の「リンクおよびその他の利用について」、奥村晴彦松阪大学教授の「リンクに許可は必要か」が参考になる。 筆者は、両先生の意見に全面的に賛成である。


注5 日弁連の見解が記事となっています。−リンク許可問題、日弁連は「あまり深く考えていなかった」ASCII24 2002年7月22日付け


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