「奇形」の言い換え検討 「形態異常」が有力
医療現場で使われてきた「奇形」という医学用語について、日本医学会(高久史麿会長)が言い換えの検討を始めることが分かった。日本小児科学会の用語委員会が患者・家族の尊厳を傷つける恐れがある言葉として同学会に見直しを提案した。言い換え候補には「形態異常(異状)」が挙がっている。日本医学会は今年度内の決定を目指すという。
日本小児科学会の用語委員会委員長を務める森内浩幸・長崎大教授によると、「奇形」という用語は、基礎医学分野でヒトの初期発生段階での形態異常を起こす病気を指す。小児科や形成外科の医療現場では病名として使われ、患者や家族が「心情を傷つける表現だ」と見直しを求めていた。「先天性心奇形」を「先天性心疾患」とする言い換えが実現した症例もある。
一方、言い換えの候補となっている「形態異常」は、「奇形」だけではなく「変形」「変成」「欠損」など他の概念も含む表現として医学界で使われており、「正確性に欠ける」との批判もある。そもそも「言い換えただけでは差別は解消しない」という意見も出ている。
今後、日本小児科学会が関係学会とともに日本医学会へ変更を求め、今年12月に開く日本医学会の用語管理委員会での議論を経て、日本医学会として今年度内の決定を目指す。森内教授は「患者の心情に配慮して表現を変えた『認知症』や『統合失調症』のように、医学的な正確性も担保できる表現に改めたい」と話す。【高野聡】