[PR]

 東日本大震災後の避難所で被災者に処方された抗菌薬の約9割が不適切だったとする調査結果を、神戸大や石巻赤十字病院などのチームがまとめた。ウイルス性の風邪など、抗菌薬が効かない病気の患者に出していたケースが目立ったという。

 チームは、宮城県石巻市内の避難所98カ所で2011年に医師の診療を受けた7934人の診療記録を調べた。抗菌薬は1896人に計2646回処方され、このうち、細菌が原因と考えられる肺炎や尿路感染症などに正しく処方されていたのは228回(9%)だった。一方、症状に合っていない処方は2418回(91%)あり、ウイルスが原因と考えられる風邪や気管支炎、胃腸炎などに出された例もあった。

 神戸大の岩田健太郎教授(感染症内科)は「検査しづらいなど避難所という環境を差し引いても、不適切な使用が多い」と話す。医師の知識不足や、被災者に「何かしてあげたい」との思いから、不必要な処方がされている可能性もあるという。

 抗菌薬には吐き気などの副作用の恐れがあるほか、多用すると薬が効かなくなる耐性菌の発生につながると指摘されている。

 岩田教授によると、応援に駆けつけた熊本地震の避難所でもインフルエンザの患者に抗菌薬が処方されていたという。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(竹野内崇宏)