2016-06-25 いい人生の探し方 第四話
このエントリは連載モノです。
今日からは Mさんへのインタビューを通して、私が学んだことをまとめていきます。
他者に弱みを見せられるという強さ
Mさんが最悪の状態から立ち直ることができたのは、「知り合いや友達に弱みを見せることができた」からでしょう。
試験に落ち、無職で職歴無しのまま 30代に突入。しかも子供を連れて離婚。
そんな状態になったら、昔の友達から「大丈夫?」と心配する連絡があっても無視して引きこもり、
「あたしのコトなんて放っておいて!!!」
「オレに話しかけるな!」 みたいになってしまう人もたくさんいます。
そういう態度をとると、みんなそのうち 「そっとしておいてあげたほうがいいのかな?」 となり、意地を張っているうちに連絡線が切れてしまう。
そしてそのまま長期間にわたり、社会的な引きこもり生活に入ってしまう。
弁護士や博士号など、世の中で尊敬される難しい資格を目指していた人ほど、プライドが邪魔して弱みが見せられない。
でも Mさんは、「すべてから逃げ出したいほど惨めな状態の自分」を、昔からの、なんの苦労もしていなかった頃の友達の前にさらすことができました。
友達からかけられる声や、差し伸べられる手を、無視したり振り払ったりしなかった。
これが、彼女が立ち直ることができた理由でしょう。
彼女には「弱い自分を見せる」という強さがあったんです。
★★★
親や先生はよく子供に「ヒト=他者に迷惑をかけるな」と言います。
「ヒトに迷惑さえかけなければ、何をしてもいい」という言い方も、「人に迷惑だけは、かけてはいけない」と聞こえます。
まじめな人ほどこういう言葉を真に受け、とても困った状況になっても我慢を続けたり、「ヒトに迷惑を掛けてしまうダメな自分」が許せなくなって、心を壊したりします。
そして(母子家庭や障害のある家族を抱えて餓死に近い死に方をするなど)誰にも迷惑をかけずに死んでいこうとする人まで出現する。
「他者(ヒト)に迷惑を掛けてはいけない」というのもまた、多くの人が脱却しなければならない学校的価値観のひとつなんじゃないでしょうか?
学校的価値観に関してはこちら↓
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最近、「自分が辞めるとバイト先が回らないから」「自分が辞めると教え子の子供達が困るから」といった理由で、ブラック環境にあるバイトを止められない人がいるらしいけど、
そういう人達もきっと小さい頃から「他者(ひと)に迷惑をかけてはいけない」と教えられ、大人になってもそう思い込んでいるのでしょう。
みんな「良い子」すぎるし、「しつけが行き届きすぎ」なのです。
だったらホントは「人に迷惑をかけるな」みたいなコトより、
・人間はひとりでは生きていけない。だから「助けてあげること」、「助けてもらうこと」を覚えないとダメだよ、とか
・人に迷惑をかけてでも、とにかく生き残ることが大事なんだよ、とか
・「ヒトに迷惑をかけちゃいけない」と思う人の善意は、時に利用される。だから「一定以上、理不尽なことには我慢すべきではないんだよ」
といった、社会を生きていくためのリアルな知恵を教えたほうが、寧ろよくない?
それともうひとつ。Mさんの言葉で印象に残ったのが、
「忘れる」という大事な機能
「人間は忘れるコトができるから強いと思いました。
あんなに好きだった人と離婚することになったし、ご飯が喉を通らないくらいショックだったことでも、数年たてば平気な顔で振り返ることができる。
忘れられるから幸せになれるんだと思った」って言葉。
ホントそうだよね。
心をもつ人工知能を開発するというのなら、この「忘れる」という機能を人工知能にも備えるべき。
「忘れることのできない頭脳」なんて、まともに生きていけるとは思えないもん。
そんじゃーね