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第二十三話「信用の理由」
ミグルド族の村を一言で表すなら『極貧』だった。
十数軒の家。
家の形は説明しにくい。
地面を掘って、亀の甲羅でも被せれば、こんな感じになるんじゃなかろうか。
アスラ王国の建築技術が高いのがよくわかる。
もっとも、アスラ王国の建築技師が木材の取れないこの土地に来ても、
材料がなくてお手上げ状態だろう。
外からも見えたが、畑にはしなびた葉っぱをもつ植物が均等に並んでいる。
枯れかけに見えるが、大丈夫なのだろうか。
ロキシー辞典には農業の事はあまり詳しく書いていなかった。
野菜は苦くて美味しくない、とかその程度だ。
ちなみに、畑の端には、パッ○ンフラワーみたいな牙の生えた禍々しい花が咲いていた。
植物なのか動物なのか、乱ぐい歯をギリギリと鳴らしている。
あれは確か、畑に侵入する害獣対策だ。
村の端の方では、中学生ぐらいの娘たちが火を囲んで何かをやっている。
林間学校か何かのようにも見えるが、彼女らがしているのは食事の準備だ。
一箇所で作って、みんなで分けるのだ。
男はほとんどいない。
幼い子供が遊んでいるだけだ。
それ以外では、先ほど門番をしていたロインと、長ぐらいか。
確か男は狩りに出て、女は家を守る。
そういう集落だ。
なので、男は狩りに出ているのだろう。
「このへんで狩れる獲物ってなんです?」
「魔物だ」
恐らくこの答えは、正鵠を得ているのだろうが、ちょっと説明不足だ。
漁師に向かって何が取れるのか聞いて、魚介類と答えられたようなもんだ。
ま、突っ込んで聞いていけばいいか。
「えっと。あの家の上に乗っかってるのも、魔物なんですか?」
「大王陸亀だ。甲羅は硬く、肉はうまい。筋は弓の弦になる」
「それを主に狩ってるんですか?」
「ああ」
肉はうまいのか。
しかし、あのサイズのカメとか想像がつかないな。
一番大きい家の甲羅とか、20メートルぐらいありそうだし。
などと考えていると、ルイジェルドとロックスはその家の中へと入っていく。
一番大きい所=長の家、ってのはどこの世界でも一緒らしい。
「お邪魔します」
「お、お招き頂き、ありがとう御座いますわ……」
俺とエリスも、一応の挨拶をしつつ、中へと入る。
外から見るより、中は広かった。
床には毛皮が敷き詰められ、壁には色彩豊かな壁掛けが掛けられている。
部屋の中央には囲炉裏のようなものがあり、火が細々と燃え、部屋の中を明るく照らしていた。
家の中に区切りは無い。夜になれば、そこらの毛皮にくるまって眠るのだろう。
端の方に剣や弓も置いてあり、狩猟民族であることがよくわかる。
村長についてきた二人の女性は家の中まではついて来なかった。
村の入り口までは何で付いてきたのだろうか。
まあいい。
「さて、では話を聞くとしましょう」
ロックスは囲炉裏の近くにどっかりと座り、そう言った。
ルイジェルドがその正面につく。
俺はルイジェルドの隣にあぐらをかいて座った。
エリスはとみると、所在なげに立っていた。
「家の中でも床に座るの?」
「剣術の授業では、よく床に座ってただろ?」
「そ、それもそうね」
エリスは地べたに座ることを躊躇するタイプではない。
だが、礼儀作法で習ったこととのギャップに戸惑っているのだろう。
人前だから礼儀正しくしなければいけない。
けれども習った事と違っていて戸惑う。
帰った時に礼儀作法に悪影響がでなければいいが……。
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今後について話す前に、
俺は自分の名前・歳・職業・住所。
エリスとの関係・エリスの身分といった個人情報。
ワケのわからないうちに魔大陸にきてしまったので帰りたい、という旨を伝えた。
人神のことは黙っていた。
あの神が魔族の間でどういう立ち位置かわからない。
邪神扱いされていたら、変な疑いを持たれるかもしれないからだ。
「……と、いうわけです」
「ふむ」
ロックスはそれを聞いて、顎に手を当てて考えだす。
中学生が難問を前に悩んでいるような顔だ。
「……そうさのう」
結論を待っていると、エリスが隣で船を漕ぎ始めた。
傍目から見るとまだまだ元気がありそうだったのだが、
やはりなれない旅で体力を消耗していたのかもしれない。
昨晩も、あれからずっと起きていたようだし。
さすがに限界か。
「話は僕が聞いておくから、寝ててもいいよ」
「………寝るって、どうやってよ」
「多分そのへんの毛皮にくるまって」
「枕がないわ」
「僕の膝を使いなよ」
アン○ンマン風に言って、太ももをぽんぽんと叩いた。
「ひ、膝ってなによ……」
「膝を枕にしていいってこと」
「……………そう? あ、ありがと」
いつものエリスなら、なんやかんや言ったかもしれない。
だが、眠気がマックスだったのか、遠慮する素振りもなく、俺の膝に頭を載せた。
緊張した面持ちで手なんかギュっと握りしめていたが、
目を閉じて、数秒もしないうちに、ストンと眠りに落ちてしまった。
やっぱり疲れていたか。
エリスの赤毛をさらりと撫でる。
彼女はむず痒そうに身を捩った。
むふふ。
ふと、視線を感じた。
「………なんです?」
ロックスになんとも微笑ましいものを見る目で見られていた。
ちょっと恥ずかしい。
「仲がよろしいのですな」
「それはもう」
けど、まだお触りは厳禁な仲だ。
うちのお嬢様は貞操観念をしっかりと持っているのだ。
そして、俺はそれを尊重するのだ。
「それで、どうやって帰るつもりかね?」
ロックスの質問は、ルイジェルドにされたものと同じであった。
「お金を稼ぎながら、徒歩で」
「子供二人でかね?」
「いいえ、金は僕が一人で稼ぎます」
世間知らずのエリスに任せるわけにもいかないだろう。
まぁ、世間知らずという点では俺も大概だが。
「二人ではない。俺が付いて行く」
と、ルイジェルドが口を挟んだ。
心強い味方だ。
だが、人神の件もある。
信用したいのは山々だが、ここで別れたほうがいいだろう。
後顧の憂いは断っておくのだ。
しかし、さて、どうやって断るべきか。
「ルイジェルド、おぬし、付いて行ってどうするつもりかね?」
悩んでいると、ロックスが難色を示した。
むっとするルイジェルド。
「どうもこうもない。
俺が二人を守り、無事に故郷に送り届けるのだ」
微妙に噛み合っていない会話。
ロックスはため息をついた。
「お主、町に入れんじゃろう?」
「む……」
む?
町に入れない?
「子供を連れて町に近づいたら、どうなる?
衛兵に追い回され、討伐隊を組まれたのは、百年前じゃったか?」
百年?
「それは、だが……俺ひとりで町の外で待てば」
「町の中の出来事は知らんか、無責任じゃのう」
呆れ顔になるロックス。
ルイジェルドはぐっと歯噛みした。
スペルド族は嫌われている。
それは魔大陸でも変わらない。
しかし、討伐隊はやり過ぎではなかろうか。
魔物扱いなのだろうか。
「町中で何かあれば……」
「あれば、どうするんじゃ?」
「町の人間を皆殺しにしてでも二人を救い出す」
目が本気だった。
怖い。
怖すぎる。
この男は本当にやる、そんな覚悟が伺えた。
「子供のこととなると見境がないのぉ。
……思えば、この里で認められたのも、魔物に襲われていた子を助けてくれた事じゃったか」
「そうだな」
「あれが五年前か、時が経つのは早いもんじゃな……」
長がやれやれとため息を吐いた。
味方をしてもらっているのに大変申し訳ないのだが、かなりむかつく動作だ。
調子こいた中学生が大人の馬鹿さ加減を嘲笑っているようにしか見えない。
「しかしルイジェルドよ。
そんな強引さで、お主の目的は達成できるのかな?」
「む………」
ルイジェルドは眉をひそめた。
目的。
この男は何か目的があるらしい。
「その目的というのは?」
と、口を挟んで聞いてみる。
「単純なことじゃ。スペルドの悪評を取り除きたい、というな」
それは無理だと言いそうになった。
差別問題というのは、一人が頑張ったところでどうにかなるものではない。
クラス単位のイジメですら、一人では解決できないのだ。
まして、スペルド族の迫害は全世界に根付いている。
あのエリスがブ○リーを前にしたベ○ータみたいになるぐらいだ。
子供の頃から悪と断じられてきた存在を、どうやって善に変えるのだ。
「でも、戦争で敵味方区別なく襲ったというのは本当の事なんでしょう?」
「それは!」
「いくら悪評とは言っても、スペルド族が怖い種族だって事実は……」
「違う! 事実ではない!」
ルイジェルドに胸ぐらを掴まれた。
すんげー怖い目で見てくる。
やばい、震えてきた。
あわわ……。
「あれはラプラスの陰謀だ!
スペルドは恐ろしい種族ではない!」
なん、なん、なんなの?
やめてちょっとこわい。
身体の震えが止まらない。
ていうか、陰謀?
陰謀論なの?
ラプラスって400年前の人物だよね?
「ラ、ラプラスがどうしたって言うんですか?」
「奴は俺たちの忠誠を裏切った!」
力が弱まった。
ルイジェルドの腕をぽんぽんと叩く。
彼は俺の胸ぐらから手を離した。
しかし、その手はわなわなと震えている。
「奴は……奴はな………!」
ギリギリと歯ぎしりをしながら、
「その話、詳しく聞いても?」
「長いぞ」
「構いません」
そこからルイジェルドが話したのは、
歴史の裏とも言える話だった。
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ラプラス。
彼は魔族を統一し、人族から魔族の権利を勝ち取った英雄だ。
スペルド族は極めて早い段階からラプラスの配下となっていた。
スペルド族の戦士団。
高い敏捷性と、凶悪な索敵能力。
極めて高い戦闘能力を持つ彼らは、ラプラスの親衛隊だった。
その専門は奇襲と夜襲。
額の眼はレーダーのように周囲を見ることが出来る。
彼らは決して奇襲を受けず、必ず奇襲・夜襲を成功させる。
精鋭だった。
当時の魔大陸において、
スペルド族という名前は、畏怖と尊敬を持って呼ばれていた。
ラプラス戦役の中期。
ちょうど中央大陸の侵攻が始まった頃、
ラプラスがある槍を持って戦士団を訪問した。
悪魔の槍。
ルイジェルドは槍の正式名称を語らなかった。
ただ、悪魔の槍と呼んだ。
ラプラスはそれを戦士団に下賜した。
見た目はスペルド族の持つ三叉槍と一緒だが、
黒く禍々しく、魔槍と一目で分かったという。
もちろん、戦士団の中には反対する者もいた。
槍はスペルド族の魂。
それを捨ててこんなものを使う事など出来ない。
しかし、主君たるラプラスの用意した物だ。
最終的に、リーダーであったルイジェルドは、
全員にその槍を使うことを強要する形となった。
それがラプラスへの忠誠を示すものだと信じて。
「ん? リーダー?」
「ああ、俺はスペルド族の戦士団のリーダーだった」
「………今、何歳なんですか?」
「500から先は数えていない」
「あ、そう……」
ロキシー辞典には、スペルド族が長寿だって書いてあったっけか。
まあいい。
スペルド族の戦士団は、自前の槍をある場所に突き立て、
悪魔の槍で戦い続けた。
悪魔の槍は強力な力を持っていた。
身体能力を数倍に引き上げ、
人族の使う魔術を無効化し、
感覚はさらに鋭敏になり、
圧倒的な全能感をもたらした。
そして、次第に悪魔と呼ばれる存在へと変貌していった。
悪魔の槍は血を吸えば吸うほど、使用者の魂を黒く染め上げた。
誰も疑問に思わなかった。
全員が同じぐらいの頻度で精神を蝕まれたのだ。
そして、悲劇が起こり始める。
戦士団は敵味方の区別がつかなくなり、
周囲にいる者たちを無差別に襲いだすようになる。
老若男女関係なく、子供であろうと容赦なく。
別け隔てなく、あらゆる者に襲いかかった。
ルイジェルドはその時の記憶を鮮明に覚えているという。
いつしか魔族からは「スペルド族は裏切った」と言われ、
人族からは「スペルド族は血も涙もない悪魔だ」と言われるようになる。
当時のルイジェルドたちは、その噂を愉悦の表情で聞いたらしい。
それこそが誉れだと。
敵だらけの中で、しかし悪魔の槍を持ったスペルド族は強かった。
一騎当千の者たちを殲滅出来る者はおらず、
戦士団は世界で最も恐れられる集団となっていた。
しかし、消耗が無いわけではない。
人族、魔族、双方から敵対され、日夜を問わず戦いを続け、
スペルド族の戦士団は一人、また一人と数を減らした。
誰もそれを疑問には思わなかった。
戦いの中で死ぬこと、それこそがまさに至高だと酔っていた。
そんな中、風の噂で、スペルド族の集落が襲われているという話を聞く。
場所はルイジェルドの出身地。
スペルド族をおびき出す罠なのだが、正常な判断を下せる者は残っていなかった。
スペルド族の戦士団は、
久しぶりに帰ってきた集落を……襲った。
そこに人がいるのだから殺さなくては、と思ったのだ。
ルイジェルドは親を殺し、妻を殺し、姉妹を殺し。
最後に残った己の子供を刺し殺した。
子供とはいえ、彼はスペルド族の戦士になるべく鍛えていた。
死闘というほどの戦いではなかったが、
戦いの最後に、子供は悪魔の槍を折った。
その瞬間、
気持ちのいい夢は終わった。
同時に、悪夢が始まった。
口の中にコリコリとした何かがあった。
それが息子の指だと気付いて、ルイジェルドは吐いた。
まず自殺を考え、すぐにその考えを打ち消した。
死ぬよりまず、やることがあった。
例え死んでも噛みちぎるべき敵の存在がいる。
そのとき、スペルド族の集落を魔族の討伐軍が包囲していた。
仲間は10人しかいなかった。
悪魔の槍を持った時には200人近くいた戦士団が。
あの勇猛果敢な戦士たちが。
すでに10人しかいなかったのだ。
片腕を失った者や、片目や、額の宝石を砕かれた者もいた。
こんなボロボロになるまで戦わされたのだ、スペルドの戦士団は。
彼らは満身創痍でなお、
好戦的な表情で千近い討伐軍を睨みつけていた。
犬死になる、とルイジェルドは悟った。
ルイジェルドはまず、
仲間たちの持っていた悪魔の槍を、全て叩き折った。
次々と我に返り、呆然とする仲間たち。
家族を手に掛けた事を嘆く者、滂沱の涙を流す者。
しかし、あのまま夢を見させてくれと言う者はいなかった。
そんな軟弱者は一人もいなかった。
誰もがラプラスに復讐を誓った。
誰一人として、ルイジェルドを責める者はいなかった。
彼らはもはや、悪魔ではなかった。
戦士などという誇り高い者でもなかった。
ただの薄汚い復讐鬼であった。
10人がどうなったのか、ルイジェルドは知らない。
恐らく、生きてはいないとルイジェルドは言う。
悪魔の槍を手放せば、スペルド族はちょっと強いだけの戦士でしかない。
まして手に馴染んだ己の槍もなく、他人の槍で戦って、生き残れるはずもない。
だが、ルイジェルドは包囲を突破した。
半死半生で逃げ切った。
そして、三日三晩、生死の境を彷徨った。
ルイジェルドが持っていたのは、息子の槍だった。
息子は悪魔の槍を折り、己の魂でルイジェルドを守ったのだ。
それから。
数年間の潜伏生活の末、復讐に成功した。
魔神殺しの三英雄とラプラスとの戦いに横槍を入れ、
一矢報いることに成功したのだという。
だが、ラプラスを倒しても、全てがリセットされるわけではない。
スペルド族は迫害され、
ルイジェルド達の手で滅ぼされた集落以外のいくつかの集落もまた、迫害を受けて散り散りとなった。
彼らを逃がすため、ルイジェルドはまた魔族を殺した。
今、他のスペルド族が全滅したのか、
それとも、生き延びてどこかに村を作ったのか、
ルイジェルドにもわからないらしい。
もう300年近く、魔大陸で他のスペルド族には会っていないという。
戦後のスペルド族の迫害は、それほど苛烈を極め、
ルイジェルドの反撃もまた、烈火のようであった。
こんな事になったのは、全てラプラスのせいだ。
「だが、スペルド族の悪評は、俺の責任でもある。
例え俺が最後の一人でも、この悪評だけは無くしたい」
そう、ルイジェルドは締めくくった。
---
言葉は拙く、
決して情に訴えかけるようなものでは無かった。
だが、ルイジェルドの無念、怒り、やるせなさ。
あらゆる感情が伝わってきた。
もしこれが作り話であるなら、
あるいは話し方や声音が演技であるなら、
俺は別の意味でルイジェルドを尊敬するだろう。
「酷い話ですね……」
話を鵜呑みにするなら、スペルド族が恐ろしい種族というのは誤りだ。
ラプラスが何のために悪魔の槍を渡したのかはわからない。
戦後の後始末を考え、スペルド族をスケープゴートに仕立てあげようとしたのかもしれない。
だとしたら、ラプラスは最低のド畜生だ。
忠義の厚いスペルド族に、せめて一言言ってやればよかったのだ。
スケープゴートにするにしても、騙し討ちのようなやり方で切り捨てる必要なんてなかったはずなのだ。
「わかりました。
僕もできる限りのお手伝いをしましょう」
心のどこかで、別の俺が言った。
そんな余裕はあるのか、と。
他人の事を考えている余裕はあるのか、と。
自分のことで精一杯じゃないのか、と。
旅はお前が思っているより大変だぞ、と。
しかし、口の方は止まらなかった。
「アイデアがあるわけではありませんが、
人族の子供である僕が手伝えば、
何かしらの変化があるかもしれません」
もちろん、哀れみや善意だけじゃない。
打算的な気持ちもある。
話が本当であれば、ルイジェルドは強い。
英雄と同クラスの力を持っている。
そんな力で俺たちを守ってくれるというのだ。
少なくとも、道中で魔物に襲われて死ぬことは無いだろう。
ルイジェルドを連れて歩くということは、
町の外では安心を、
町の中では不安を、
それぞれ持つことになる。
しかし、町中での不安が解消できるなら、
この上ない戦力となる。
なにせ、奇襲も夜襲もくらわないと豪語する猛者である。
町中でスリや盗賊なんかに狙われる可能性もぐっと低くなるはずだ。
それに。
なんとなくだが。
何の根拠もない話だが。
ルイジェルドという男は、嘘をつけない不器用な男だ。
信じられる人物だ。
「できる限りの事をすると、約束しましょう」
「あ、ああ」
ルイジェルドは驚いた顔をしていた。
俺の目から、猜疑的な色が消えたからだろうか。
なんでもいいさ。
俺は信じることを決めた。
あんな話一つで、コロっと騙されたのだ。
生前は、お涙頂戴のストーリーを聞いても、鼻で笑っていたのに。
こんなにあっさりと。
それだけ心に響いたのだ。
だからいいじゃないか。
騙されたって。
「しかし、本当にスペルド族は……」
「いいんです、ロックスさん。なんとかしますから」
町の外では守ってもらい、町の中では守ってやる。
ギブアンドテイクだ。
「ルイジェルドさん。明日から、よろしくお願いします」
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一つ不安があるとすれば、
恐らくこの流れが、人神の思惑通りということだ。
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