ドル安加速し95円へ、一方でユーロは底堅い

「EU分裂」よりも「大英帝国分裂」に現実味

読みが甘かった。2015年5月の総選挙で国民投票を約束してしまったキャメロン首相は、残留を呼びかけるも敗れ、今年10月の保守党大会までの辞任を表明した。苦悶の表情は英国の未来を暗示しているのか(写真:ロイター/アフロ)

欧州連合(EU)離脱を問う英国民投票は接戦の末、巷間の予想を覆し、離脱派が勝利した。今後起こり得る展開について、為替見通しへの影響も含め、整理してみたい。

まず、今後の英国はリスボン条約50条に沿って離脱手続きを粛々と進めることになる。同条は「欧州理事会(=EU首脳会議)における全加盟国の延長合意がない限り、脱退通知から2年以内にリスボン条約の適用が停止される」と規定するものである。つまり、今後の重要な節目としては(近日中に欧州理事会へ脱退通知を行ったとして)2018年6月が注目される。

叩き台になるのは「カナダ・モデル」

キャメロン首相は10月に辞任することを表明した

言い換えれば、2018年6月までに英国はEUとの「新たな関係」を交渉し、確定しておく必要がある。この点、過去にEUと特別な政治・経済協定を結んだ一部の国々のモデルが参考になる。これらのモデルに関する仔細な分析は類似の論考が出ているので本欄では割愛する。

結論としては、単一市場へのアクセスを一部諦めつつ、EUからの介入を遮断した上で、交渉によってはうまく付き合っていける余地を残すカナダのように、包括的経済貿易協定(CETA)をEUと締結する道を探る公算が大きいだろう。英国におけるEU離脱派はこのカナダ・モデルを叩き台として、現状よりも旨味のある対EU関係構築が可能だと考えているからこそ、離脱を主張してきたわけである。

これはあくまでも対EUでの関係構築であって、英国はEU以外とも「新たな関係」を構築し直す必要がある。EUは現在、53の国・地域とFTAを結んでいるが、離脱に伴い、英国はこれをすべて喪失する。すべてを復元するためには長い年月がかかることは必至であり、しかも、現在締結しているものほど良好な条件になるとは限らない。

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