東海旅客鉄道(JR東海)は24日、2020年度から東海道新幹線に新型車両「N700S」を投入すると発表した。最高営業速度は最新車両と変わらないが、軽量化により消費電力量を7%削減する。普通車でも全席にモバイル電源用のコンセントを設けるなど、客室装備も充実させる。
柘植康英社長は同日、都内で開いた記者会見で「飛躍的な進化をとげた革新的な車両だ」と胸を張った。試験車両は18年春までに完成させる。先頭車両の表面にエッジ(角)をつけることで走行音や風の抵抗を減らす。最高営業速度は時速285キロメートル(東海道新幹線の場合)で従来と同じ。
乗客の利便性を高め、これまで全席にモバイル電源用のコンセントがあるのはグリーン車のみだったが、新型車両では普通車を含めた全席に設置。小型・大容量のリチウムイオン電池を採用することで停電時にもトイレを使えるようにする。
新型車両の稼働は13年に投入した最新の「N700A」以来、7年ぶりとなる。柘植社長は具体的な投資額を明らかにしなかったが、主力に育てるまでの投資規模は1000億円を大きく超えるのが確実。27年にリニア中央新幹線が開業するまで、運輸収入の9割を占める東海道新幹線の屋台骨を背負う。
「のぞみ」が走り始めた1992年に投入した「300系」をアルミ合金で製造して以降、同新幹線の車両史は軽量化の歴史ともいえる。N700Sの1編成・16両あたりの重量はN700Aと比べて約20トン軽くなり、初めて700トンを切る。初代の「ゼロ系」と比べると300トン近く軽い。
新型車両の軽量化に最も貢献するのが、東芝や日立製作所など大手電機4社と4年前から共同開発してきた新技術だ。車両下の駆動システムに炭化ケイ素(SiC)のパワー半導体素子を組み込み、小型化する。車両の編成が柔軟にできるようになり、4両、8両など多様な編成に対応できるようになる。
同社は米テキサス州の企業が2021年の開業を目指す新幹線プロジェクトを技術面で支援しており、台湾でも系列の車両メーカーなどと更新車両の受注を目指している。両地域の1編成は東海道新幹線よりも短い見通しで「(N700Sは)テキサスでも台湾でも使える」(柘植社長)というメリットがある。
軽量化した車両で専用軌道を走る日本の新幹線システムはセット販売のために価格も高く、海外での高速鉄道受注競争で中国などの安値攻勢に競り負けるケースも多い。N700Sは技術力だけでなく、システム全体の柔軟性をPRする切り札になりうるとみている。