EUはリベラルかソーシャルか?
今日(もう昨日ですが)はイギリスのEU離脱国民投票で世界中大騒ぎでしたが、EU労働法政策などというタイトルを掲げている本ブログからすると、いろいろと感じるところがありました。
もともとEEC(欧州経済共同体)は名前の通り市場統合を目指すもので、ほとんどソーシャルな面のないリベラルなもの。
かつて労働組合がえらく強かった頃のイギリスは、保守党政権時代に勝手にECに加入したのはおかしいといって、労働党政権が国民投票をやり、離脱票が少なかったので残った経緯があります。ソーシャルなイギリスがリベラルなECを嫌がってた時代。
ところが、サッチャーが政権について、労働組合は徹底的にたたきつぶす、最低賃金から何から労働法護法は廃止する、福祉も住宅も教育も片っ端から叩く。ぼこぼこにぶん殴られた労働組合は泣きながらEUに駆け込んで、助けてくれと言い出す。「社会なんて存在しない」というサッチャーにとって、市場統合以上の余計なことにくちばしを入れたがるソーシャルなEUは邪魔者。
その後労働党政権になり、EUのソーシャルな労働法も持ち込まれる。これがイヤだという、反ソーシャル・ヨーロッパのリベラルUKという文脈も、一応細々とあって、日経新聞あたりに載る離脱派のEUの規制がどうのこうのというのはこの話。でもそれはメインじゃない。
むしろ21世紀になってから、EUは再び市場統合を旗印に自由市場主義を各国に強制する傾向が強まる。細かいことは全部省略するが、南欧諸国の反EU運動は基本的にこれ。リベラルなEUに対して各国のソーシャルな仕組みを守ろうというリアクション。そして、イギリスの反EUの気持ちの中にも結構これが大きい。労働党支持層の中でもEU残留に熱心になれないひとつの背景。
そして、どの国にもあるけれども特にイギリスに強い「ヨーロッパはドーバー海峡の向こう側、俺たちはヨーロッパじゃない」ナショナリズムがこれら錯綜するリベラルとソーシャルのぐちゃぐちゃとない交ぜになったのが今日(昨日)の結果なのでしょう。
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