軍事技術関連の研究 禁止や制限の国立大は4分の1

日本の科学者の代表機関、日本学術会議が戦後維持してきた、「軍事目的の研究は行わない」とする声明を見直すかどうかなどについて、24日から本格的に議論を始めました。NHKでは全国の国立大学を対象に、軍事技術に関わる研究について、禁止したり制限したりするガイドラインなどを設けているかアンケートした結果、設けていると答えた大学は、およそ4分の1にとどまることが分かりました。
科学技術と軍事を巡っては、防衛省が去年、将来的な防衛装備品の開発につなげたいとして、大学などに研究費を提供する制度を導入したのをきっかけに、科学者の間で議論になり、日本学術会議が戦後維持してきた声明を見直すかどうかなどについて、検討委員会を設置し、24日から本格的な議論を始めました。
NHKは科学と軍事の関係について、全国86の国立大学を対象にアンケートを行い、7割以上に当たる65校から回答がありました。
この中で、防衛装備品を含む軍事技術に関わる研究について、禁止したり制限したりするガイドラインなどを設けているか尋ねたところ、「設けている」が17校、「設けていない」が47校、「回答保留」が1校で、ガイドラインなどを設けていると答えた大学は、およそ4分の1にとどまることが分かりました。
このうち、大阪大学は「軍事を目的とする研究を行ってはならないという基本的な考え方を持ち、学内通知で明文化している」としています。
一方、「設けていない」とした大学に今後の対応を聞いたところ、11の大学が「設けることを検討している」と答え、筑波大学や群馬大学などは日本学術会議の議論を踏まえて検討するとしています。
また、長岡技術科学大学は「防衛目的で、人の安全などに貢献する研究であれば、大学で行うことを禁止すべきではないと考える」としています。

専門家「大学は説明責任を」

政策研究大学院大学の専門職で、科学技術と軍事に詳しい小山田和仁さんは「科学と軍事の問題に対応している大学がまだ多くないと感じる」としています。
小山田さんは「最近の科学技術は、情報通信技術や人工知能、新素材などに代表されるように、民間用と軍事用の技術の境界線があいまいになるなど、状況が大きく変化している」と指摘しています。
そのうえで、小山田さんは「大学が研究の自由を確保することは大切なことだが、一方で、研究結果が軍事や防衛に関連する技術にもなりえる状況にある以上、大学は、みずからの研究が社会にどのように影響するかこれまで以上に説明責任を持つ必要がある」と指摘しています。