法改正前夜「DOMMUNE~THE SHAPE OF CLUB CULTURE TO COME~」で語られたこととは?
culture,CULTURE,NEWS,
2016.06.24
Written by Jun Fukunaga
6/23、改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律)が施行され、日本国内において、深夜のクラブ営業が条件付きでついに「合法」化されることとなった。
その前夜、今回の法改正を受けて、これまで様々なロビー活動を行ってきたDJ、アーティストらによる団体「クラブとクラブカルチャーを守る会(CCCC)」のメンバーが、「DOMMUNE~THE SHAPE OF CLUB CULTURE TO COME~」に出演し、これまでの活動を振り返りながら、今、日本のクラブシーンはどのような状況にあるのか、この法改正で残った「問題」とはどういったものなのか、などについて語り合った。
同討論会は4部構成・5時間に及ぶ内容で放送され、1部にはZeebra、Darthreider、2部には、Watusi、DJ AMIGAに加えYAMA、3部ではなんとDJ EMMAがホストを務める「EMMAの部屋」に、HIROSHI WATANABE、須永辰緒、DJ Dragon、DJ Shufflemaster、VENUS KAWAMURA YUKI(しぶや花魁)、Nagi (Dazzle Drums)、Nari(iFLYER)、4部のDJ TIMEには須永 辰緒、DJ EMMAがそれぞれ出演した。
▶︎1部(Zeebra、Darthreider)
1部ではまず、同日午前11:30より渋谷・Visionにて行われたCCCCによる記者発表会についての感想が述べられ、今回の法改正では「100%意見が通ったわけではない」と前置きをした上で、今までの法律との”グレー”な関係から一歩踏み出し、向かい合い、”昼”と”夜”の両方の生活者がお互いに尊重できる関係となるまでにアップデートできたことはクラブシーンにとって大きな一歩となったという認識を示した。
また彼らが参加したアムステルダムでの「ナイトメイヤー(夜の市長)サミット」でのエピソードを交えながら、「法律は文化のスピードに追いつくことがないから、こちら側から働きかける必要がある」と発言。また、サミット参加でわかったことは「どの都市でも抱えている基本的な問題(騒音、酩酊者による迷惑行為など)は同じ。それに対しての解決策のバリエーションは多くあるわけではないということに気づき、問題解決の道筋が見えた」とも語った。
「自分の責任でコミュニティーに参加する意識が必要」
さらに、渋谷のような都会では、多様なライフスタイルが存在するので、その”価値観をお互いに尊重しあうこと”が重要だと改めて発言。そして最後には法改正施行日である6/23も持ってCCCCの解散を発表。今後はこのできあがったコネクションを有効利用し、さらに大きな枠組で活動できる組合の設立を考えて動いていくという考えを示し、Zeebra氏選曲の「Mary Jane Girls - All Night Long」が流れ、この1部は終了した。
▶︎2部(Watusi、DJ AMIGA、YAMA)
2部ではまず、最初はクラブシーンに身を置くものとして、自分が活動することは、これまで関係があったクラブ関連事業者に「迷惑」がかかるかもしれないという考えがあり、最初は活動からは距離を置いていたことや、自分より自分の子供たちにクラブカルチャーを残すために参加したことなど、3人それぞれの立場からのCCCCの活動に参加した経緯が語れた。
「90年代の国内テクノアーティストが海外にデモテープを郵送していた時代より日本は世界と離れてしまった」
印象的だったのはこのWatusi氏による言葉。またこの問題が起こった初期は、「日本に守るべきクラブカルチャーはまだ存在するのか?」という厳しい声もあったという。そういった状況下で彼らは、自分たちがどうなるかわからないが、法を変えることで良い状況になるのでは?と考え、”自分たちの正義をぶつける”ため、CCCCの活動を活発化させていったことを明かした。
また、株式会社”俺”という立場を越えて、個人ではなく、”クラブとクラブカルチャーを守る”ために自ら律して動いてきたこと、CCCCに参加し、対話をすることでこの活動は進んだこと、若い世代にもSNSなどを通して、今この国のクラブシーンで実際に起きている問題を伝えることができたことも評価したいと語った。
そして、「ひとつの場所で問題が起これば、アンダーグラウンドな小規模な音箱も、大規模な大箱も関係なく一網打尽にされる。だからこそ、マナーとルールが必要だ。」、「クラブを文化として考えるなら、遊びにくる客側もシーンに”参加”しないといけない。」という認識を改めて示し、最後に「クラブに遊びに来てお金を使っている人は、やはりクラブカルチャーを作っていることに参加しているという自負と自責を持って欲しい」という言葉とともに、Watusi氏選曲の「Lil Louis - Club Lonely」が流れ、幕を閉じた。
▶︎3部(EMMAの部屋)
そして放送前から話題となっていた、あのDJ EMMAによる「EMMAの部屋」の幕が開き、参加者によるトークセッションが行われた。このトークセッションのテーマとなったのは、「法改正後、一部地域でしか、特定遊興飲食店営業が取れないことに対して、どう考えるか?」ということで、それを軸に「現状のクラブシーンにおいて、毎週クラビングを楽しむ人がコア層を担い、そういう人が音箱を支えている。しかし、そういう場は、改正法に含まれない郊外の中小規模箱がほとんどであり、今回の法改正で、そういうクラブが逆にダメになる可能性を生んだのではないか?」といった疑問から、問題となる中小箱の在り方などが討論された。
その中では、遊ぶ人のリテラシーに任せるが、それが高すぎるのもまた問題といった声や、法改正後もグレーな場はグレーなままで、そのグレーさの加減が少し薄くなる程度では?といった意見や、また一部の中小箱にとって良い恩恵を与えなかった今回の改正法も、面積問題については中小箱側の意見も汲み取ってくれた形となったことを認識しているなどといった意見が上がった。
「法は変わるが、それでもある程度の自主規制は必要」
また、今回の法改正で法の適用範囲となる地域は、実はこれまでの営業延長指定地域をスライドさせただけで、行政による精査がされていない事実なども語られ、逆にその点が今後、変えることができる部分でもあり、地域から声をあげていけば変わっていく可能性があるという意見も。また、客が集まれば、踊ってしまうようなグレーな空間も今後どうしていくか?ということに対しても、”ある程度の線引きが必要”という認識が示された。
その他には、この法改正を受けて、今後は「これからは朝までやっているクラブはどこ?」という質問はなくなり、もう一段掘り下げた「今日のDJは誰?どんな選曲?どんな雰囲気?」などといった質問が出てくることになり、これまでのコア層でなかったライト層の客側も自然とこれまで以上に深くこのシーンに関わることになるから、悲観的な部分があるわけではないという意見も上がった。
「クラブが持つ自己責任を持って集まるビカレスクな匂いが好き。そういった「自由」があるからこそ律する必要がある」
そして、次に「これからの日本のナイトカルチャーに必要なものとは何か?」というテーマで討論が行われた。そこでは、DJという職業の立場の向上を図ること、社会性を持つこととともにこれまであったアンダーグラウンドを維持することも両方大切だということ、クラブミュージックで懸命に自己表現をしている人の良いイメージを植え付けていくことなどが語られ、自由な場だからそこの自己責任が必要で自ら律する必要があるいう声が出て、参加者一同はそれに賛同する反応を示していた。
なお、最後はDOMMUNEの宇川氏の「クラブはこれまで”マイノリティー”を受け入れてきた現場。現在はSNSがその代用品になっているかのように思われるが、それは輪郭しか捉えていない。ナイトクラブの復活はサブカルチャーの復権でもある。」という言葉とともに終了した。
▶︎4部 DJ Time(須永辰緒、DJ EMMA)
そして、3部と4部の間に、もう一度Zeebra、Darthreider、Watusi、DJ EMMA、そして当日の司会の磯部涼らが着席し、「今回の法改正は色々な切り口があり、それ故に様々な視点から話し合うことができる。」といった発言や、「CCCCは色々な対立場から集まった人間がひとつの問題の解決に取り組む場だった。」という活動の総括的発言が行われ、最後に磯部氏の”CCCCの誠実さはジャンルや箱の規模を問わず、ありとあらゆる方面の意見を聞こうとしたことにある。」という言葉で占められ、須永辰緒によるDJ TIMEへと移行した。
今回の法改正では、「条件付」という部分が各方面から問題視される声は決して少なくない。しかし、今回この放送に集まった業界の識者達は、問題が残るからこその今後のクラブカルチャーの在り方、その中での自分の立ち振る舞い方を示したのではないだろうか。
この放送の中で何度も出た言葉は”自己責任”、”自主規制”、”立場の違いを越えてお互いを尊重し合うこと”、”自分自身がこのカルチャーに参加しているという自負を持つこと”、そして”自分たちの場所を守るためには自ら行動に出る必要がある”ということだ。
確かにこの法改正では「問題」は残るが、これまで苦しめられてきた中での「改正」という形となったことは、やはり大きな一歩で、あまり悲観的に考えすぎることはないだろう。
最後に、クラブミュージックが好きで、クラビングが大好きなこのカルチャーを支えている貴方に届けたい言葉がある。それはこの放送の3部でVINUS KAWAMURA YUKIが発現した言葉”皆さん、誇りを持って遊びましょう”というメッセージ。
今、再び”世界から取り残された日本のクラブカルチャー”が動きだす。貴方は今週末はどこに踊りに行きますか?
6/23、改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律)が施行され、日本国内において、深夜のクラブ営業が条件付きでついに「合法」化されることとなった。
その前夜、今回の法改正を受けて、これまで様々なロビー活動を行ってきたDJ、アーティストらによる団体「クラブとクラブカルチャーを守る会(CCCC)」のメンバーが、「DOMMUNE~THE SHAPE OF CLUB CULTURE TO COME~」に出演し、これまでの活動を振り返りながら、今、日本のクラブシーンはどのような状況にあるのか、この法改正で残った「問題」とはどういったものなのか、などについて語り合った。
同討論会は4部構成・5時間に及ぶ内容で放送され、1部にはZeebra、Darthreider、2部には、Watusi、DJ AMIGAに加えYAMA、3部ではなんとDJ EMMAがホストを務める「EMMAの部屋」に、HIROSHI WATANABE、須永辰緒、DJ Dragon、DJ Shufflemaster、VENUS KAWAMURA YUKI(しぶや花魁)、Nagi (Dazzle Drums)、Nari(iFLYER)、4部のDJ TIMEには須永 辰緒、DJ EMMAがそれぞれ出演した。
▶︎1部(Zeebra、Darthreider)
1部ではまず、同日午前11:30より渋谷・Visionにて行われたCCCCによる記者発表会についての感想が述べられ、今回の法改正では「100%意見が通ったわけではない」と前置きをした上で、今までの法律との”グレー”な関係から一歩踏み出し、向かい合い、”昼”と”夜”の両方の生活者がお互いに尊重できる関係となるまでにアップデートできたことはクラブシーンにとって大きな一歩となったという認識を示した。
また彼らが参加したアムステルダムでの「ナイトメイヤー(夜の市長)サミット」でのエピソードを交えながら、「法律は文化のスピードに追いつくことがないから、こちら側から働きかける必要がある」と発言。また、サミット参加でわかったことは「どの都市でも抱えている基本的な問題(騒音、酩酊者による迷惑行為など)は同じ。それに対しての解決策のバリエーションは多くあるわけではないということに気づき、問題解決の道筋が見えた」とも語った。
「自分の責任でコミュニティーに参加する意識が必要」
さらに、渋谷のような都会では、多様なライフスタイルが存在するので、その”価値観をお互いに尊重しあうこと”が重要だと改めて発言。そして最後には法改正施行日である6/23も持ってCCCCの解散を発表。今後はこのできあがったコネクションを有効利用し、さらに大きな枠組で活動できる組合の設立を考えて動いていくという考えを示し、Zeebra氏選曲の「Mary Jane Girls - All Night Long」が流れ、この1部は終了した。
▶︎2部(Watusi、DJ AMIGA、YAMA)
2部ではまず、最初はクラブシーンに身を置くものとして、自分が活動することは、これまで関係があったクラブ関連事業者に「迷惑」がかかるかもしれないという考えがあり、最初は活動からは距離を置いていたことや、自分より自分の子供たちにクラブカルチャーを残すために参加したことなど、3人それぞれの立場からのCCCCの活動に参加した経緯が語れた。
「90年代の国内テクノアーティストが海外にデモテープを郵送していた時代より日本は世界と離れてしまった」
印象的だったのはこのWatusi氏による言葉。またこの問題が起こった初期は、「日本に守るべきクラブカルチャーはまだ存在するのか?」という厳しい声もあったという。そういった状況下で彼らは、自分たちがどうなるかわからないが、法を変えることで良い状況になるのでは?と考え、”自分たちの正義をぶつける”ため、CCCCの活動を活発化させていったことを明かした。
また、株式会社”俺”という立場を越えて、個人ではなく、”クラブとクラブカルチャーを守る”ために自ら律して動いてきたこと、CCCCに参加し、対話をすることでこの活動は進んだこと、若い世代にもSNSなどを通して、今この国のクラブシーンで実際に起きている問題を伝えることができたことも評価したいと語った。
そして、「ひとつの場所で問題が起これば、アンダーグラウンドな小規模な音箱も、大規模な大箱も関係なく一網打尽にされる。だからこそ、マナーとルールが必要だ。」、「クラブを文化として考えるなら、遊びにくる客側もシーンに”参加”しないといけない。」という認識を改めて示し、最後に「クラブに遊びに来てお金を使っている人は、やはりクラブカルチャーを作っていることに参加しているという自負と自責を持って欲しい」という言葉とともに、Watusi氏選曲の「Lil Louis - Club Lonely」が流れ、幕を閉じた。
▶︎3部(EMMAの部屋)
そして放送前から話題となっていた、あのDJ EMMAによる「EMMAの部屋」の幕が開き、参加者によるトークセッションが行われた。このトークセッションのテーマとなったのは、「法改正後、一部地域でしか、特定遊興飲食店営業が取れないことに対して、どう考えるか?」ということで、それを軸に「現状のクラブシーンにおいて、毎週クラビングを楽しむ人がコア層を担い、そういう人が音箱を支えている。しかし、そういう場は、改正法に含まれない郊外の中小規模箱がほとんどであり、今回の法改正で、そういうクラブが逆にダメになる可能性を生んだのではないか?」といった疑問から、問題となる中小箱の在り方などが討論された。
その中では、遊ぶ人のリテラシーに任せるが、それが高すぎるのもまた問題といった声や、法改正後もグレーな場はグレーなままで、そのグレーさの加減が少し薄くなる程度では?といった意見や、また一部の中小箱にとって良い恩恵を与えなかった今回の改正法も、面積問題については中小箱側の意見も汲み取ってくれた形となったことを認識しているなどといった意見が上がった。
「法は変わるが、それでもある程度の自主規制は必要」
また、今回の法改正で法の適用範囲となる地域は、実はこれまでの営業延長指定地域をスライドさせただけで、行政による精査がされていない事実なども語られ、逆にその点が今後、変えることができる部分でもあり、地域から声をあげていけば変わっていく可能性があるという意見も。また、客が集まれば、踊ってしまうようなグレーな空間も今後どうしていくか?ということに対しても、”ある程度の線引きが必要”という認識が示された。
その他には、この法改正を受けて、今後は「これからは朝までやっているクラブはどこ?」という質問はなくなり、もう一段掘り下げた「今日のDJは誰?どんな選曲?どんな雰囲気?」などといった質問が出てくることになり、これまでのコア層でなかったライト層の客側も自然とこれまで以上に深くこのシーンに関わることになるから、悲観的な部分があるわけではないという意見も上がった。
「クラブが持つ自己責任を持って集まるビカレスクな匂いが好き。そういった「自由」があるからこそ律する必要がある」
そして、次に「これからの日本のナイトカルチャーに必要なものとは何か?」というテーマで討論が行われた。そこでは、DJという職業の立場の向上を図ること、社会性を持つこととともにこれまであったアンダーグラウンドを維持することも両方大切だということ、クラブミュージックで懸命に自己表現をしている人の良いイメージを植え付けていくことなどが語られ、自由な場だからそこの自己責任が必要で自ら律する必要があるいう声が出て、参加者一同はそれに賛同する反応を示していた。
なお、最後はDOMMUNEの宇川氏の「クラブはこれまで”マイノリティー”を受け入れてきた現場。現在はSNSがその代用品になっているかのように思われるが、それは輪郭しか捉えていない。ナイトクラブの復活はサブカルチャーの復権でもある。」という言葉とともに終了した。
▶︎4部 DJ Time(須永辰緒、DJ EMMA)
そして、3部と4部の間に、もう一度Zeebra、Darthreider、Watusi、DJ EMMA、そして当日の司会の磯部涼らが着席し、「今回の法改正は色々な切り口があり、それ故に様々な視点から話し合うことができる。」といった発言や、「CCCCは色々な対立場から集まった人間がひとつの問題の解決に取り組む場だった。」という活動の総括的発言が行われ、最後に磯部氏の”CCCCの誠実さはジャンルや箱の規模を問わず、ありとあらゆる方面の意見を聞こうとしたことにある。」という言葉で占められ、須永辰緒によるDJ TIMEへと移行した。
今回の法改正では、「条件付」という部分が各方面から問題視される声は決して少なくない。しかし、今回この放送に集まった業界の識者達は、問題が残るからこその今後のクラブカルチャーの在り方、その中での自分の立ち振る舞い方を示したのではないだろうか。
この放送の中で何度も出た言葉は”自己責任”、”自主規制”、”立場の違いを越えてお互いを尊重し合うこと”、”自分自身がこのカルチャーに参加しているという自負を持つこと”、そして”自分たちの場所を守るためには自ら行動に出る必要がある”ということだ。
確かにこの法改正では「問題」は残るが、これまで苦しめられてきた中での「改正」という形となったことは、やはり大きな一歩で、あまり悲観的に考えすぎることはないだろう。
最後に、クラブミュージックが好きで、クラビングが大好きなこのカルチャーを支えている貴方に届けたい言葉がある。それはこの放送の3部でVINUS KAWAMURA YUKIが発現した言葉”皆さん、誇りを持って遊びましょう”というメッセージ。
今、再び”世界から取り残された日本のクラブカルチャー”が動きだす。貴方は今週末はどこに踊りに行きますか?