JR神戸駅近く、子ども服メーカー「ファミリア」旧本社前(神戸市中央区相生町1)の歩道に「スヌーピー」の石像があったのをご存じだろうか? 5月末、突如、その姿を消した。市民らから“安否”を尋ねる問い合わせが相次ぎ、会員制交流サイト(SNS)でも話題に。お目見えして約35年。市民や観光客に親しまれてきた石像の行方を追ってみると、東へ約2キロ、同社の新本社(同区磯上通4)前に鎮座しているのを確認した。
(井上太郎)
像は白御影石製で、台座も含めて高さ約1・2メートル。1980年ごろに完成し、神戸・元町にあった当時のファミリア本社前に据え付けられた。同社が日本で最初期にスヌーピーの関連グッズを製造、販売していたことが背景とみられる。
のんきに笑顔を振りまいているように見えるが、実はなかなかの「苦労犬」。阪神・淡路大震災で倒れ、一部が破損するなどの“大けが”を負った。また、スヌーピータウン(大阪市)に一時移設され、97年に旧本社前に戻ってきた。
同社は本社の三宮移転に際し、スヌーピーも一緒に移すことを計画。念のため所有権を調べたが、正確な記録が見当たらなかった。銘板に刻まれた神戸・元町の地域団体は約15年前に解散。「神戸市に寄贈されていたのでは」との見方も浮上したが、約360点ある市の野外彫刻リストに、スヌーピーは含まれていなかった。
旧本社跡にはマンション建設が予定されており、同社は「像を残したままだと撤去される可能性が高い」と判断。所有者不明のままだが、市も移設に理解を示し、同社が「実質所有者」となり、新本社が入るビルに移すことになった。私有地でないため倉庫での保管も検討したが、ビル管理者の厚意で5月31日、1階の歩道沿いに設置することができた。
旧本社前から突然、スヌーピーが消え、市民らから安否を尋ねる約30件の問い合わせがあったほか、跡地に一時ベニヤ板と土のうが置かれた光景に、ブログやSNSでは「スヌーピーが砂袋に!?」などと書き込まれた。同社がフェイスブックで移設を報告すると「元気にしているのはうれしい」「また会いにいきます」とコメントが相次いだという。
ファミリアの担当者は「今や社員にとっても大切な仲間。今後も皆さんに愛されるよう、しっかり管理したい」と話している。