※画像は、Wikipediaより
TOCANA

――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答える

 ネトゲの嫁が男だった……。ネットで出会った可愛らしい女の子が実は男だったというのは稀によくある悲劇であるが、元男性の女性が生まれつきの女性より魅力的に映るというのは、どうも人間だけではないようだ。今月7日付の「Science」のニュースによると、オーストラリアには遺伝的にはオスだがメスとして生まれた性転換メスは通常のメスより沢山の卵を産み、通常のメスを駆逐する可能性があるトカゲがいるという。


■性転換メスの驚異的なパワーとは!?

 問題のトカゲはフトアゴヒゲトカゲという、オーストラリアの東部から南東部の乾燥地帯に生息する固有種だ。爬虫類の性別決定機構は遺伝的なものと温度依存的なものが知られている。フトアゴヒゲトカゲの性別は孵化した時の温度が22〜32度では持っている性染色体の組み合わせにより遺伝的に決まり、それ以上の温度では温度依存的に決まる。高温下ではほぼ100%がメスとして孵化するため、本来はオスとなる性染色体を持ったメスが生まれる。

 先月13日に学術誌「Proceedings of the Royal Society B Biological Sciences」に掲載された論文によると、本来はオスだったはずの性転換メスはメスよりもオスに近い身体的特徴を持ち、性格的にも大胆かつ冒険的でオスよりもオスらしい性格をしているのだという。実験の結果、この性転換メスは通常のメスよりも多くの卵を産んだそうだ。

 オスよりオス的なのに、性転換メスはオスにモテるということだろうか? 生物学に詳しい理学博士X氏に尋ねてみた。

「性転換メスがオスにとって魅力的なのかは分かりませんが、性転換メスの方が通常のメスよりも環境に適応しており、子孫を残しやすい性質を持っているということではあると思います」

 X氏によると、大きな体や活発な性格は厳しい環境下において有利である可能性があるという。そもそも孵化する段階で32度になるというのは、彼らにとっても異常で過酷な環境であると考えられる。そのような環境で種が生き延びるためには、当然メスが多い方が有利だ。そして、そのメスたちがより逞しい方が良いのは言うまでもない。性転換メスがオスよりオスらしいのにも意味があるのだ。 

 さて、オカルト業界でトカゲといえば爬虫人類ことレプティリアンだ。もしかして彼らも似たような機構を持っているのだろうか。X氏はあくまで想像ですけど、と前置きして、次のように語った。

「レプティリアンが卵生で温度決定性の性別決定システムだというならありうるかもしれません。孵化の際に一手間かけることでより優秀な子孫が得られるのですから。性別の比率が偏ってしまう可能性はありますが、そんなのは後知恵でどうにでもなります」なるほど、狡猾で冷徹だと言われるレプティリアンにはありそうな話である。


■世界からメスが消える可能性も……?

 ところで、とX氏は話を戻した。「この話にはもう一つ面白いポイントがあります。それは性転換メスによってこの種から遺伝性の性決定機構が失われてしまう可能性があることです」

 このトカゲに限らず、爬虫類はZW型という遺伝的性決定機構を持つ。このタイプの生物はZ染色体とW染色体という性染色体を持っており、Z染色体を二本持っている場合はオス、Z染色体とW染色体両方を持っている場合はメスとなる。つまり、性転換メスだけが繁殖してしまうとW染色体をもつ個体がいなくなってしまうのだ。

「爬虫類の進化を見てみると、遺伝性と温度依存性の二つの性決定機構を行ったり来たりしていることが分かります。このトカゲの研究によって、その不思議の一端が分かるかもしれません」

 生物の進化は今この瞬間も続いている。オーストラリアのトカゲはそれを端的に示す一例なのだ。
(吉井いつき)


※画像は、Wikipediaより

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