空想生物的には食べたら死ぬってのが最悪だと思っていたのだが、
よくよく考えたらそれより上がある。
食べたら化け物になってしまうというやつだ。
存外そういう怪物は結構存在して、人魚の肉を食べると不死になると
いうのもその類型である。
近年、といってもそう新しいものでもないのだが、そこに新たな
怪物がラインナップされることになってな。
マタンゴである。
マタンゴというのは御存じの方も多かろうが、知らない方に説明すると
ウィリアム・H・ホジスンの小説に描かれ、日本で映画化された怪物で
キノコの一種である。
キノコの一種であるにもかかわらず、動く。
キノコに似たようなもんで動くって何だ細胞粘菌か、またかよと
言われそうだが、ヒト並みのサイズででかい。
…森丸ごと細胞粘菌の群集すらあるというのに何をいまさら。
だがこのマタンゴ、普通の細胞粘菌と少し変わった性質を持っていて、
食べられることにより増える。
しかもマタンゴ美味いらしい。
…毒キノコでもベニテングタケとか半端なくうまいらしいからなぁ。
毒の成分(イボテン酸)がうまみ成分であるという。
おっかない話だ。なお蓄積性もあるらしい。
…こいつは人類をどんだけ殺したいんだ。
マタンゴにはイボテン酸が含まれるかどうかは知らないが、それ以前に
人肉を消化してマタンゴと同化するってんだから洒落にならない。
さらにマタンゴと同化すると気持ちいいらしい。
私と一つにならない?それはとてもきもちのいいこと…
キノコにいわれたくないわ!!
…失礼。
ところが、自分を食われることで増える生物って存外多いんだよなぁ。
果実の類も種を運ばせるために自分からああいう美味しい形態に
進化しているし、花の蜜は花粉を運ばせるため、ある種の寄生虫は
アリの脳を操作することで胞子をまき散らしやすくするアリタケ、
カタツムリを操作して鳥に食われやすくするロイコクロリディウム…
あれ?なんかこうやってよく考えたらマタンゴって存外ふつ…
謝れ!ホジスン先生に謝れ!!
食うなといわれると食いたくなるがやはりガンマ線滅菌かなぁ…
ぬか漬けとかにすると増殖しかねないし。
あるいは塩漬けも悪くないかもしれない。胞子がない状態にしてから。
マタンゴが海を越えられない理由がわかったかもしれない。
なお、鳥はマタンゴに近づかない性質があるらしい。
もしあったら人類滅亡待ったなし…ってこともないか。
こわいようでこわくないなぁマタンゴ。