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孤高の凡人

猫の写真のブログです

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竜宮城のコンパニオン

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私は『性欲』という概念が欠落している。

そんな事を赤裸々に語ってしまうと、「子供がいるというのに、なぜそのような嘘を付くのか。死んで詫びろムッツリスケベ!変態土方!」というブクマコメントが寄せられそうなので予め断っておくが、私のマイサンは、クララや、ジョーよりもゲットアップスタンダップせず、子供のようなおめめの私とは対照的で、悟りを開いたゴータマ・シッダールタのように、生い茂る菩提樹の木の下でゴロンと横たわり、ローソンのフランクフルト、いや、盛った。スーパーのシャウエッセンのように、いや、盛った。冷蔵庫のポークピッツのように謙虚に、私の右足と左足の真ん中でデザイナーズのインテリアように佇んでいるのだ。

それもこれも、ある出来事が原因であると私は考えている。

私は現在、建設業で働いている。

建設業と言えば、ド底辺にプライドの高さを掛けて、それを2で割り、見事、格差社会のピラミッドの三角形を求めてしまうような下の下、ゲノゲの鬼太郎の集まりであり、それはもう口では説明できぬような下品な連中の集まりなのである。

そんな業界に私の様な紳士が、なぜ働いているのかというと、それは私が過去にしてきた愚行が原因なのである。

私は過去にアナーキストを気取り、よく分かっていないにもかかわらず、この国の政治をディスり、ジョンレノンのパワートゥーザピープルを熱唱しながら、選挙ポスターを固定する為に周囲に貼られている星のようなシールを剥がして、候補者のおめめに貼り付け、万華鏡写輪眼のようにしたりと、とてもいけない事をしてきた。

そのカルマ、つまり業がツムツムされ、このように建設業という三角形の底辺の一部となりて、過ごすしかなくなっちゃったのである。

建設業には忘年会、新年会、納涼会、慰労会などのイベントがある。

もちろん皆さんの会社にもそのようなイベントがあると思うが、建設業のなんだか儲かってしまっちゃった、わはは、な感じの会社のそういうイベントは文字どおり酒池肉林なのである。

本来、酒池肉林の『肉』は女性という意味ではないが、私が申し上げた、建設業における酒池肉林は、もうめっちゃ女性。すぐ呼んじゃうのである。

それはコンパニオンを指すのだが、ごく稀に、『ピンクコンパニオン』と呼ばれし集団を召喚するパターンがあり、うぶでかわいらしい私は彼女たちの存在を知らなかったのだ。

そのイベントに参加した時は、まだ私は20代前半で、まだ菩提樹も生い茂っていないし、ポークピッツもフライパンの上で踊る程度は活躍できた。

しかしこの日を境に、私の中のナニかが音を立てて崩れ、ポークピッツは、ころんとその場に寝そべり、以後ゲットアップルーシーしなくなったのだ。

 

150人は収まるであろう大宴会場。

会社から『何事も経験』という指令を受け、私は九州の会社の慰労会に参加した。

フジロックフェスティバルにも勝るとも劣らない熱気、その中で誰も知り合いがいない私は、静かに佇んでいた。

仲居さんであろうおばちゃん達が、お膳の上に料理を運んでくる。

「うんべらほんぬらばあにゃあのう、なはらばけらこらにゅうらっぱぁっ!!」

私にはその社長挨拶が理解できず、ただ隣に座る人々の真似をして、うぉぉ!と叫んだ。

どす黒い顔面のおっさんがコップを片手にマイクの前に立つ。

その直後、襖がバッと開き、20人ほどの女性が現れた。

動体視力がズバ抜けている私は瞬時に彼女達を把握したが、それはただの百鬼夜行であった。

オーケストラのシンバルより大きい乾杯が鳴り響き、宴は始まる。

私が大好きなエビをむいむいして食べていると、ステージで催し物が開始された。

適当に選ばれた若い男が、エビみたいな顔面のお姉さんとジャンケンを始めた。

エビはチョキを出し、勝負に負け、服を脱ぎ始めた。

野球拳だ。

私は心の中でエビを応援した。

頼むから勝ってくれ、誰もお前の甲殻は見たくない。

私の応援は届かず、エビは負け、その手ブラで乳を隠す様は、熱を加えたエビそのものであった。

エビは男と舞台袖へ消えていった。

 

続いて現れたのが、カニであった。

もう分かっている。カニはチョキしか出せない。

案の定、カニは負けた。

手ブラでその乳を隠し、恥ずかしそうにカニは男と舞台袖へ消えていった。

 

その後も、タコがグーで負け、ヒラメがパーで負け、その濃い化粧と同じ濃さの毛、その奥にあるアワビをビール片手にビアビアさせ、舞台袖へと消えていった。

 

彼女らが舞台袖へと消えるたびに、何も見ていないような顔で、仲居さんが海鮮料理を私のお膳へ運んだ。エビ、カニ、イカ、タコ、アワビ、ホタテが私のお膳に並んでいった。

 

そうか、私は今、竜宮城にいるのだ。

 

全てを把握した私は、茶碗蒸しの蓋を開けた。

むわっと湯気が出て、いいにおいが私を包んだ。

 

この時に、私はおじいさんになってしまったのだ。

 

身も心も、ポークピッツも。

 

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