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ボカヒト日報

デイリー版「ボカロとヒトのあいだ」 年別厳選マイリストは http://bit.ly/1TS3nYb レビューはtwitterで

20160622のオススメ

昨日引用した『職業としての小説家』をきっかけにしたボカロに関する考察その2

ちょっと長いので、↓をクリックして読みたい人だけ読んで下さい。



あくまで目安に過ぎないのですが、習慣的に積極的に文芸書を手に取る層は、総人口のおおよそ五パーセントくらいではないかと僕は推測しています。読者人口の核とも言うべき五パーセントです。(中略)その五パーセント前後の人々は、たとえ「本を読むな」と上から強制されるようなことがあっても、おそらくなんらかのかたちで本を読み続けるのではないかと想像します(職業としての小説家 p70)


この文章にある「文芸書」をCD/レコードに、「本」を音楽に置き換えれば、僕が音楽を巡る状況に対して漠然とイメージしていることになります。「日本の総人口の五パーセントといえば、六百万人程度の規模」というわけで、20人にひとりだから、たとえば、ひとクラスに生徒が40人いたとしたら、そのうちの2人が「音楽リスナー人口の核=音楽ジャンキー」ということになります。

そんなもんでしょう。自分の学生時代を思い返しても、納得できる数字だと思います。都心にある文化レベルが非常に高い進学校には当てはまらないかも知れませんが、地方のパッとしない学校ではそんなもんだと思います。ひとクラスにふたり。そんなもんです。


ただし音楽は文学と異なり、年を重ねるにつれ多くの人が聴かなくなります。仕事のノルマとか、家のローンとか、子供の学費とか、離婚の危機とか、愛人とのセックスとか、老いの不安とかで頭がいっぱいになり、かつての音楽ジャンキーも音楽どころではなくなってくる。悲しいことですが、僕のまわりにいた音楽ジャンキーも「いま何が流行ってんの?」とぬるいことをほざく元・音楽ジャンキーばかりになりました。というわけで、音楽リスナー人口の核は読者人口の三分の二くらいが妥当かも知れません。つまり400万人程度。


さて、ここからが本題ですが、この400万人がボカロを聴いているかという、そのほとんどは聴いていないでしょう。

ボカロリスナーは何人くらいいるのか推定するに、ボカロリスナーのボリュームゾーンと思われる10才から30才くらいまでの人口は総人口の五分の一くらいですから、400万人の五分の一で80万人。そこからこのアンケート結果を参考に「ボカロを聴く」四分の一を抽出して20万人。これがライトリスナーといいうる数でしょう。

で、ここからさらに、コンサートに参加したり、DVD/CDを買ったりする積極的なリスナーを抽出すると、その割合は自分の見積もりですが、おそらく10人にひとりくらいで2万人。ここからさらにさらに「ボカロを聴いてないとかありえない」と誰彼の区別なしに噛みつくようなMADでジャンキーなリスナーを抽出すると、その割合は、これも自分の見積もりですが、20人にひとりくらいとして1000人。

ニコ動にアップされる人気P以外のボカロ曲のほとんどは、この1000人で享受している、といっても過言ではないでしょう。そんな実感が毎日ボカロ曲をチェックしている自分にはあります。



1000人・・・・・

すくねえ・・・・・

せめえ・・・・

あまりにもシーンの規模がちっせえ・・・・



仮に1000人から火がついても上限は20万人。ということは、400万人の残り380万人は、ボカロ曲とは無縁のリスナーライフを送っているわけです。この状況をどうにかできないか、というのが僕が常々、悶々と悩み、考えていることでして、それはつまり、1000人から20万人の飛び火ルートよりも、1000人から380万人の飛び火ルートをどうやって構築するかということです。

再生数1000を10000に、CD売上枚数100を1000にするには、20万人よりも380万人のリスナーの聴きたい/買いたい欲望に火を点ける必要があり、そのためにはまず、ボカロシーンの外周らへんをうろうろしている「常に新しくて面白い音楽を探し求めているリスナー」を引きずり込まなければなりません。彼らを火種にすれば、飛び火ルートを構築できるかも知れない。

しかし、これがなかなかに難しい。ボカロのプラットフォームであるニコニコ動画は、クローズドすぎて、オタクローカルすぎて、「常に新しくて面白い音楽を探し求めているリスナー」であっても容易には入れない。入ったとしても、音楽よりもキャラクターが重視されるムードは、彼らにとっては息苦しいものかと思われます。落ち着いて音楽を探す気にはなれないでしょう。

だから飛び火ルートを構築には、必然的にニコニコ動画を介さないことが重要になります。


現在、コンピCDを制作し無料か無料に近い価格でネットにあげているクリエイターたちがいますが、これなどはまさにニコニコ動画を介さない飛び火ルートの構築でしょう。中には6000を超えるダウンロードを記録しているものもあり、これらによって蒔かれた種はニコニコ動画の外側で芽を出し、着実に育っていることだと思います。今後、ニコニコ動画をスルーして、レーベルや個人のブランド力を頼りに、CDを買い求めたり、音源をDLするボカロリスナー以外のリスナーが増えていくことと予想されます。


しかし、

何だかんだいって、ニコニコ動画にはまだ、20万人規模までならば、ついた火種を爆発させる能力があります。youtubeにはない祝祭ムードがあり、それゆえの団結力とノリの良さがある。それはもうこれまでに何度となく発揮された能力で、否定しようがありません。

ただし、人気の爆心地から離れてしまうと、途端に音が聴こえなくなる。「常に新しくて面白い音楽を探し求めているリスナー」には届かなくなる。

当然ながら「いいじゃん20万人で。囲えるし。上客だし」という前向き?な捉え方もできます。20万人はそれなりのビジネスが成立する数だからです。10人にひとりがCDを買ってくれたら、売上枚数は2万枚です。20人にひとりでも1万枚です。充分にヒットと言える枚数です。僕が理想とする1000枚よりはるかに多い。

でも僕としては、あくまでも380万人を、それが無理なら、そのうちの数十パーセントを占めるであろう「常に新しくて面白い音楽を探し求めているリスナー」をどうにかしてボカロに引きずり込みたい。仮に10%だとしてもその数は38万人で、20万人より多いのです。1000枚を一瞬で完売に至らせることができる人数です。

おそらく20万人にはもう伸びシロがない。でも38万人には342万人という残りがある。目先の獲物にとらわれて、その先にある大きな獲物を取り逃がすのは浅はかな選択なのか。それとも実利を取る現実的な選択なのか。なんとも言い難いですが、前者のほうが夢はある。世界の音楽シーンと繋がれる可能性もある。



そして、そのために、自分は何ができるのか。

・・・・うーん、とりあえず、このブログでは駄目だな、と何となく思ってます。非力ですみません。







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