前回の記事で、NHKスペシャル「キラーストレス」から、ストレスのメカニズムと心身への影響について書きました。
引き続き本エントリーでは、ストレス解消や対策法として、運動、コーピング、マインドフルネスの3つを紹介します。
「運動」して鈍感になる
汗をかく爽快感、最中は夢中になれる、適度な疲労・・・。
感覚的に運動はストレス解消に良いと分かりますが、科学的な裏付けがありました。
それは、乱暴な言い方をすれば「運動して鈍感になる」ということなのです。
ストレスは、脳にある「扁桃体」が反応して、神経細胞を通じて、ストレス反応を起こす自律神経や副腎に指示を出します。これは、首のあたりにある「延髄」を経由します。
運動をすると、延髄にある神経細胞の突起数が減り、指示が伝わりにくくなるのです。結果、多少のストレスくらいだと自律神経や副腎が反応しなくなるのですね。
と言うことで、運動をすると、ストレス系の神経回路が脆弱になって、ストレス反応しにくくなる(=鈍感になる)のです。
「水道の蛇口を閉める」ようなものですね。
逆に、運動しなければどんどん敏感になっていきます。そして、大したことのないストレスにも、大げさに反応するのです。
では、「どんな運動がいいか」ですが、ウォーキングなどの有酸素運動を息が少し上がる程度行うのが良いとのこと。週3回、30分以上、速歩きするというイメージです。
おまじない?のような「コーピング」
究極のストレス職業である「宇宙飛行士」が行っているストレス対策「コーピング」。
これは、自身のストレス状況を意識し、かつ、意図的にその対処を行う方法です。
具体的には、
- ストレスがかかったとき気晴らしとなる解消方をリストアップする
- ストレスがかかるたびにリストから解消方法を選んで実行する
- その方法が効果があったかどうかを判断、なければ他の方法に切り替える
と言うもの。
リストアップするのは、どんなつまらないことでもOKで、とにかく数を多く(100個くらい)、紙に書き出すことが大切。
ストレスがかかったときに実行できるものなので、「海外旅行に行く」などの大掛かりなのはダメ、ということでしょうね。
番組では、
木に触れる、散歩する、空を見る、炭酸水を飲む、宝くじがあたったと妄想、7億円で何をするかを妄想、サッカーの三浦カズ選手だったらどうするか考える・・・
などが出されていました。
また、リストに得点を付けていくと、「どんなときには、どの方法がよい」というのがはっきりしてくるので、より効果的であるとも。
実際に、「うつ病予備者」を対象に実験を行ったところ、劇的な変化が見られたそうです。
この「コーピング」、自分のストレスを観察し、意識的な対策を繰り返すことですが、これによって脳の「認知」を司る「前頭葉」が活性化され、「扁桃体」の活動を抑えるのです。
ロジックとしては、ストレスを意識し、その対処によってストレスは解消されるというフローを、脳に擦りこんでいく、ということだと思います。
そう考えると、いわゆる「おまじない」みたいなものですよね。
だったら、少ないバリエーションであっても、擦りこみがしっかり出来ていれば、効果的にストレス解消できるのではないかと思うのですが・・・。
(だったら良いなぁと思っただけで。ぶっちゃけ、100もリストアップして、そこから都度選ぶのは大変ですから・・・。でも、それくらいやらないといけないのでしょうね)
「マインドフルネス」という瞑想
正式名は「マインドフルネスストレス低減法」、一言で言えば「瞑想」です。
そもそも人のストレス反応は、大昔、天敵である獣に出くわしたときに防御&攻撃態勢に入るためのもので、獣がいなくなると戦闘モードは解除され、ストレス反応もなくなっていました。
ところが現代では、獣こそいないものの、そこらじゅうストレスの元だらけなので、ストレス反応が止まらない状態だと言うのです。
おまけに、「マインドワンダリング(心の迷走)」と呼ばれる、過去や未来を想像して心配することが多いのですね。
日中の活動時間の半分近くは、「今」ではなくて、過去や未来のことを考えているとか。
「上司に怒られた」という過去のストレスと、「また上司から怒られるのではないか」という未来のストレス、いわば「ストレスの再生産」によって心が蝕まれていくのです。
「マインドフルネス」は、「今」に注意を向けることに主眼をおいたもの。
過去や未来の想像を断ち切り、ストレスの増幅を止めることで、脳に良い変化をもたらすものです。
8週間のプログラムで、萎縮していた「海馬」が復活するとともに、「扁桃体」が小さくなってストレスに過剰反応しにくくなるなどの劇的な効果があったそうです。
「マインドフルネス」の具体的な方法は、
- 背筋を伸ばして、両肩を結ぶ線がまっすぐになるように座り、目を閉じる
- 呼吸をあるがままに感じる
- わいてくる雑念や感情にとらわれない
- 身体全体で呼吸するようにする
- 身体の外にまで注意のフォーカスを広げていく
- 瞑想を終了する
を、はじめのうちは10分くらいかけて行います。
この説明だと分かりにくいと思いますので、より詳しくは、NHKのHPをご覧ください。放映された解説音源もUPされています。
まとめ
ストレスに上手に対応していくためには、
- 「運動」によって、ストレスに鈍感な体質を作り上げ
- 日々、発生する「頑張るストレス」と「我慢するストレス」は、「コーピング」で解消し
- 「マインドフルネス」によって、未来や過去のストレスの増幅を抑えつつ、過剰反応しない脳に切り替える
といったことを、生活の中にうまく取り込むことが大切だと言えます。
この3つの方法、理に適っているというか、私にとって、とても納得のいくものでありました。
一方、「マインドフルネス」は、なかなかうまく出来ないですし、他の2つも1ヶ月や2ヶ月くらいでは、効果を感じられないかもしれません。
でも、頑張って続けてみたいと思っています。
本番組、ご興味のある方は、NHKオンデマンドで見られます(視聴期限あり)。
NHKオンデマンド | NHKスペシャル シリーズ キラーストレス 第1回「あなたを蝕(むしば)むストレスの正体~こうして命を守れ~」
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では、また。