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視点・2016参院選 沖縄と本土 「寄り添う」とは=論説委員・佐藤千矢子

 きのうは沖縄の「慰霊の日」だった。太平洋戦争末期の沖縄戦の犠牲者らを悼む日だ。

     71年前、壮絶な地上戦で住民の4人に1人が犠牲になった沖縄は、戦後も27年間、米軍の施政下に置かれた。そして、本土復帰から44年たった今も、日米安保体制のために、過重な基地負担を強いられている。

     いびつな構造は、もう限界を迎えている。沖縄県うるま市に住む20歳の女性会社員が殺害され、元米海兵隊員の男が逮捕された事件は、そのことを衝撃的な形であぶり出した。

     慰霊の日の追悼式で、安倍晋三首相は「今後とも国を挙げて、基地負担の軽減に取り組んでいく」と語った。そういう国に対し、翁長雄志(おながたけし)知事は「日米安保体制と日米地位協定のはざまで生活せざるを得ない県民に、憲法が保障する自由、平等、人権、民主主義が等しく保障されているのか」と根源的な問いを投げかけた。

     残忍な事件が起きてもなお、安倍政権の政策と沖縄の思いはすれ違う。

     安倍政権が基地負担軽減策の象徴と位置づける米軍普天間飛行場の名護市辺野古への県内移設計画は、沖縄の理解を得られていない。多くの県民にとって、辺野古移設は負担軽減ではなく、新基地建設という新たな負担の始まりにしか見えない。

     日米両政府が検討している事件の再発防止策も、日米地位協定の抜本的改定などを求める沖縄からは付け焼き刃に映る。

     首相はよく「県民の気持ちに寄り添う」と言うが、普天間返還も再発防止策も、沖縄が納得しなければ意味がない。

     そのためには、国と県が話し合い、共通理解の基盤となる信頼関係を築き、折り合える内容を探るしかない。安倍政権はそういうプロセスを踏むのがよほど苦手なのだろう。

     そして深刻なのは、本土の無関心が政権の強引な手法を支えているということだ。

     参院選で、辺野古移設をはじめとする基地問題は、沖縄選挙区を除けば全国的な関心が低く、論戦は盛り上がっていない。

     事件に抗議するため19日に開かれた県民大会で、壇上に立った21歳の女子大生は「本土に住む皆さん、今回の事件の第二の加害者は誰ですか。あなたたちです」と訴えた。厳しい指摘だが、本土に暮らす一人として、謙虚に受け止めたい。

     沖縄に寄り添うとはどういうことか。首相も本土に暮らす人々も、今一度、自らに深く問い直し、行動に移す必要があるのではないか。そうでなければ沖縄の問題は解決しないだろう。

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