北朝鮮ミサイル 国際包囲を更に強めよ
北朝鮮が中距離弾道ミサイルの発射実験を行った。日米韓が「ムスダン」と呼ぶ推定射程2500〜4000キロの新型ミサイルのようだ。
発射された2発のうち1発が、高度1000キロ超の大気圏外に達し、発射地点から約400キロ離れた日本海上に落下した。
金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は「太平洋地域の米軍を攻撃する確実な能力を持つことになった」と述べ、新型ミサイルの威力を誇示した。
朝鮮半島有事に備えるグアムの米軍基地を念頭に置いた発言だ。北朝鮮による脅威のレベルが高まったと考えるべきだろう。
国連安全保障理事会の制裁決議は北朝鮮の弾道ミサイル発射を禁じている。22日に開かれた緊急会合ではすべての理事国が決議違反という認識を共有したという。
国際社会の警告を無視する行為を放置してはならない。安保理は早急に対応策を取ってほしい。
北朝鮮は4〜5月に同型のミサイル4発を発射したが、発射直後に爆発するなど失敗が続いていた。今回成功したのであれば、短期間のうちに技術力を高めたことになる。
北朝鮮のメディアは、金委員長が「失敗に萎縮しないよう」科学者を鼓舞したと伝えた。
金委員長は先月の党大会でも、冷戦終結後に社会主義圏が崩壊して北朝鮮が孤立したことや、経済建設が期待通りに進んでいないことを認めている。若くて未熟だと見られがちだが、柔軟な一面を持ち合わせてもいるということだろう。
そうした人物が、体制の生き残りをかけて核・ミサイル開発を着実に進めている。侮るべきではない。
北朝鮮は、米本土を射程に収める長距離弾道ミサイルの発射実験も繰り返している。潜水艦発射ミサイルの開発も日米韓の予測を上回る速さで進んでいると見られる。
核・ミサイル開発を止めるためにさらなる制裁強化などが必要だ。
日本として懸念されるのは米国の動きが鈍いことである。
北朝鮮は、自らの生き残りには米国との交渉が必須だと考えている。挑発行為は米国を振り向かせるためのものだ。一方で、国際的な包囲網強化でも米国が中心とならざるをえない。
それなのにオバマ政権は、イラン核問題で見せたような積極性を北朝鮮の問題では見せようとしない。日本政府には、もっと米国の関与を引き出すための外交努力を傾けてほしい。その際には利害を共有する韓国との協力も有用だろう。
北朝鮮問題でカギを握る中国に真剣な取り組みを迫るためにも、日米韓が連携して強い姿勢を見せることが求められている。