日本の高校教師は、たとえば数学の先生であれば「数学の教科指導」+「担任」というように、教科指導以外の仕事を併せ持つことが一般的だ。
一方、アメリカでは担任は担任のためだけの先生がいるのが普通だ。詳しくは知らないが、ヨーロッパもそういう国が多いらしい。何でも欧米をマネすれば良いわけではないが、これに関してはマネすべきだとぼくは思っている。
勘違いされないように一応言っておくと、ぼくは教員ではない。ただこの問題を外から見ていてあまりに理不尽だと思い、筆をとった。社会に一石を投じようとまでは思わないが、多くの人がこの問題を認識してくれたらと思っている。
問題意識
教員がとにかく多忙であることと、生徒の進路指導が不十分であること。
この解決策として、担任(または進路指導職員)として社会人経験のある専門家を雇うことを提案する。具体的な内容や、問題意識の詳細については以下で述べる。
具体的な運用方法
いままで1人の教師が担っていた仕事を2人に分離する。
教科指導教員の仕事
教科の先生は教科指導のみを担当。
この仕事に従事するのは、教員免許を持っている人たち。
担任の仕事
進路指導やクラス統括。生活指導もいくらか割り振ってもいいかも。
従事者のイメージは定年後の元会社員とか。
この他、部活動専門のコーチも数を増やす必要があると思う。部活は積極的にやりたがる教員もいる一方、負担に感じている教員もかなり多いようだ。
担任の仕事の詳細
担任がどの業務を担うかというのはいろいろやり方があると思う。以下に挙げる仕事の中からいくつか担ってもらうのがいいと思う。
現状、以下の全てを教科指導の教員たちが分担してやっている。これを見るだけでも教員の業務量の多さが分かっていただけると思う。
生活指導
イジメ対応、制服等の規則のこと、生徒の校内掃除やゴミ出しの管理。
現在では生徒の心理面のサポートは、スクールカウンセラーという心理職専門の職員が入っている学校も多く、これについてはこのまま専門家に任せるのがいいと思われる。
行事の計画と実行
遠足・修学旅行・文化祭等の行事ごとの計画やしおり作成。
広報活動
中学校への説明会や高校のパンフレット作成等。
教務
時間割作成、その他教員の動き方の管理。
進路指導
生徒の進学相談や就職相談、あるいは大学や企業との調整・斡旋等。
これらのうち、生活指導や広報活動については、専門家ではない教科指導教員が受け持ってもいいと思うのだが、進路指導については絶対に専門家あるいは専任の職員が担当するのが望ましいと思う。
なぜなら、教員のほとんどは教員以外の職業に従事したことがなく、人生のほとんど全てを学校に通学・通勤して生きてきた人たちだ。このような特殊な人生を歩んできた人が、多様な生き方・考え方を指向する生徒たちの進路相談を請け負えるかというとどうしても限界があるのだ。
教員の業務負担の軽減という目的もあるが、それ以上に、生徒の人生を適切に導くという仕事が、一般社会で働いた経験に乏しい教科指導教員の手には負えないのではないかという懸念がある。
進路指導職員専門化の利点
教師にとってのメリット
業務負担の軽減。教員という職業は極めて多忙であるにもかかわらず、そもそも残業というシステムが存在しないがために、労働時間に応じた対価が支払われていない現状がある。部活動の顧問をしている教員は、年間で数日しか丸一日の休みがないというのも当たり前という現状なのだ。
熱心な教員はそれでもやりがいを感じてやっているようで、個人単位で納得しているのならそれはそれでかまわないが、システムとしては狂っていると言える。
定期テスト作成と採点の委託
また、話はずれるが、教科指導教員の一番の苦しみは定期テストの作成と採点だ。これについては予備校にテスト作成から採点まで一括して委託するのがいいと思う。教員が範囲を予備校に連絡するだけで予備校がテスト作成(から採点まで)をやってくれる仕組みにしてしまえばいい。
その分のお金はどこから出るのか、という人もいるかもしれないが、教員が家での自分の時間を割いてまで無償でやっている現状がおかしいのである。財源はどこかから工面して、きちんと教員の業務量を適正なレベルに持っていってあげるのが本来正しいやり方ではないだろうか。
生徒にとってのメリット
現状、高校生は、実際に働くというのがどういうことなのか知れる機会が圧倒的に少ない。身近に聞けるサンプルが、親と社会経験のない教員というのでは、将来を思い描くための材料が少なすぎるだろう。
高校生の頃から、いろいろな選択肢を実体験とともに聞くことで、それに向けて大学進学や就職について逆算して考えることができるようになる。
一般市民にとってのメリット
こうした施策は税金を支出することになるので、直接的にサービスに関わる人達(ここでは先生と生徒)だけでなく、一般社会にとっても有益である方がより望ましい。
近年、若年者の離職率が高いことが問題視されている。大卒新卒の3年以内離職率は30%を超えているそう。必ずしも離職することが悪いこととは言わないが、企業にとっては育成コストの無駄といえるし、働き手にとっても転職は膨大なエネルギーを消費する。であれば、初めから自分に合った職業に就けるよう、高校生のうちからいろいろな選択肢を知る機会を提供してあげることで、3年以内離職率を下げることができれば一般社会にとっても大きなメリットではないだろうか。
デメリットはコスト。 ただ、定年退職直後のまだまだ元気な働き手に有意義な仕事を提供しつつ、若者の将来もきちんと導けるので、かけるコストに十分見合う社会的な価値があると思う。
また、「教員は進路指導もやりたいはず」という意見もあるかもしれない。これについては、気持ちはわかるが、「やりたい」と「やるべき」は違う。いくらやりたがったとしても、彼の手に負えない仕事なのであれば彼に任せるべきではない。
まとめ
担任、特に進路指導の業務を教科指導教員から切り離し、社会人経験の豊富な専門家にこの任務を任せることで、教員、生徒、一般市民の全員にとってメリットになるのではというお話でした。
もちろん、多額の税金が必要になるのでその辺のコストパフォーマンスはきっちりと第三者の目で精査する必要があります。
公的サービスは費用対効果の数値化が難しくどうしても迷走しやすい性質がありますが、価値のあることにはきちんと適切な支出がなされることを望みます。
また、当然のことですが、アメリカは何でも優れているというわけではありません。アメリカは高校の先生の社会的地位が低くて、バイトと掛け持ちをしていたりといった負の側面もあります。冒頭で書いたとおり、マネすべき部分はマネしようという趣旨です。