舛添要一氏が東京都知事の職を辞した。退任会見を開くこともなく無言で都庁を去った。

 不適切なホテル宿泊費の寄付などの約束はどうなったのか。金銭問題はなお未解決であることを忘れてはなるまい。

 高額な海外出張費を発端に、舛添氏の一連の問題が浮上して約2カ月半になる。

 その経緯を振りかえれば、問題は、政治家による公金の使い方がずさんすぎることにあるのは明らかだ。舛添氏に限った問題ではない。同じような公私混同を繰り返させない仕組みをつくることが肝要だろう。

 だが、今回焦点になった様々な問題点は、再発の防止に向けて入り口の論議にすら至っていない。

 たとえば海外出張費のあり方について、都は検証チームをつくり、今月末にも結果を出すはずだった。ところが都政トップが不在となったのを機に見送りになった。今後の方針は新知事に委ねられることになった。

 政治資金規正法にもとづく使途公開の「基準の差」も、手つかずのままだ。

 「ナントカ還元水」で知られた07年の農水相の疑惑などを受け、国会議員や国政候補者が代表をつとめる政治団体の支出報告は厳しくなった。1件1万円超について、政治資金収支報告書への明細記入や領収書の添付が義務づけられている。

 しかし地方自治体の首長や議員の場合は、こうした義務は法律上、1件5万円以上に限られる。公開へのハードルが高いのだ。参院議員時代の舛添氏のように資料代として1万~3万円台の美術品などを繰り返し買っても、収支報告書に店の名前などを載せなくてよい。

 07年の規正法改正では、そうした「差」の解消を、3年後をめどに検討するはずだったが、実現していない。

 都議会は舛添氏を厳しく追及したが、同じように自分たちにも公正さを課すべきだ。政治資金の使途をもっと細かく公開するよう、条例を提案し、改革に乗り出してはどうか。

 身を律するという点で、都議会が8月のリオデジャネイロ五輪への視察団の縮小を検討しているのは当然だろう。

 いまの計画では経費が計1億円前後にのぼる可能性もあるという。次の開催都市として視察はすべきだが、30人近い都議が行く必要があるのか。

 政治とカネの問題を見つめる有権者の厳しい目は、舛添氏の退場後も何ら変わりはない。都議を含むすべての政治家がその視線を理解し、行動すべきだ。