イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票がいよいよ23日に迫ってきた。メディア報道等によれば、EU離脱反対派のジョー・コックス下院議員の射殺事件以来、EU残留派の勢いが増しているとされている。
例えば、イギリスのブックメーカー(賭け事サイト)の一つである「Predictwise」では、EU残留確率が75%に達し、EU離脱確率を大きく上回る展開となっている。
それにともない、イギリスのEU離脱を懸念したマーケットでは、「リスクオフ」モードの強まりから株価下落と円高が進行していたが、その動きも一服した感がある。このままイギリスのEU残留が決まれば、マーケットは何事もなかったかのように元の状態に戻るだろうが、新聞等の世論調査では、なお、残留派と離脱派は拮抗しており予断を許さない。
また、イギリスのEU離脱が多数になったところで、実際にEU理事会などの手続きやその後の貿易協定のやり直しなどのプロセスを考えると、離脱後の新しい体制が判明するためには、2年から5年程度の時間がかかるといわれている。
現在の近視眼的なマーケットがそこまでの長期の見通しで動くとは考えられないので、イギリスのEU離脱問題は、マーケット変動の単なる「ネタ」に過ぎず、あくまでも短期的なショックにとどまり、その後はリバウンドする事態も考えられる。
大陸欧州という「単一市場」の価値
ところで、メディアの報道やその元となったOECDやLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)の調査や論文では、今回のイギリスのEU離脱問題(「Brexit」)は、もっぱらイギリスの問題として捉えられている感がある。
EU残留派の主張は以下のようなものである。
(1)イギリスはEUへの加盟(1972年1月より)によって、大陸欧州という「単一市場」へのアクセス権を有したが、それがこれまでのイギリス経済の成長を支えてきた。よってイギリスがEUから離脱するということは、このメリットを放棄することに等しい。
すなわち、EUという単一市場を失うことによって、イギリスを拠点としてきた金融業や製造業が、イギリスを離れ、代わって大陸ヨーロッパのどこか(最有力候補はドイツのフランクフルトのようだ)に新たな拠点を設けることになりかねない。
(2)このことは、イギリスへの直接投資の急減をもたらすことになる。さらには、ロンドンを中心とする金融仲介基地としてのイギリスの金融機能も失うことになれば、イギリスの国際収支は大幅に悪化し、国際収支危機(もしくはイギリスに集まっていたマネーの大量流出)からポンド暴落のリスクがある。
(3)さらに、EU離脱によって、イギリスは各国と貿易協定等を締結し直す必要が出てくる。このとき、EU離脱のペナルティとして高い関税をかけられると、必要な生活物資の多くを輸入に頼っているイギリス経済は、消費の減少を中心に大打撃を被りかねない。
以上の影響について、LSE、及び、PwC(プライスハウスウォーターズ・クーパース、世界的な会計事務所)が具体的な試算を行っているのでそれを紹介しよう。
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