2013年にあった日本語変換ソフト「Baidu IME」および「Shimeji」に関する過去の記事に対しバイドゥ株式会社より、名誉毀損、業務妨害に相当するとして 削除申立がありました。
[外部サービスに転載し、リンクを設定して参照させる行為が問題になりうるということでURL等は削除しました]
バイドゥ株式会社の申し立て理由については下記になります。
本記事は、記事表題、および冒頭の「日本語変換ソフトの「Baidu IME」とアンドロイドアプリの「Shimeji」はスパイウエアです。至急削除してください。」という表現が事実無根であり、当社の信用を毀損するものです。(もちろん、当社はスパイウェアなどは配布していません。)
名誉毀損、業務妨害との申し立てに対し、理由の中で信用毀損と表現するのは法務担当者にしてはちょっと?な感じも受けますが、まあいいでしょう。
こちらのP33によると「信用は社会が経済的な観点から人に対してあたえる評価であるから、民事法上は名誉の一形態であるといえる」のだそうだ。
当時NHKがどのように報道したかというとこちら
中国製の日本語入力ソフト 入力情報を無断送信 NHKニュース
うーん・・・・
「入力情報を無断で送信するソフト」はスパイウエアと呼ばれて当然じゃないの?
ここで当時をことを詳細に思い出すために、その筋では有名なまとめサイトを見てみましょう。ちなみにこのサイトにも削除申し立てがあったそうです。
Baidu IMEとSimejiの情報送信問題についてまとめてみた。 - piyolog
専門家寄りにまとめた内容なので一般人が読むのはややこしくて面倒だと思います。
実際の利用上問題になるであろう点を簡単に書けば次のようになります。
Baidu IMEについては
・全角の入力情報をインターネット上に送信している
・送信の際は暗号化せずに送信している(これは間違い。2013年12月の時点では暗号化されているようです。)
・バイドゥ社ではたとえわかりにくくても利用許諾をとっているからOKという解釈
Shimejiについては
・変換後の文字列を設定をOFFにしていてもインターネット上に送信している
・Android OSやSimejiのバージョンも送信している
・バイドゥ社では故意ではなくバグ(ミス)だからOKという解釈
つまり、
・たとえわかりにくくても利用許諾をとっているからスパイウエアではない
・故意ではなくバグであるからスパイウエアでない
という解釈であるため記事中でスパイウエアと断定している部分が許容できないようです。
身近な例で言えば、事故であっても自動車で人を撥ねて死亡させてしまったら殺人罪に問われるわけで、バグだからOKという釈明は通らないと思うのですが。
「たとえわかりにくくても利用許諾をとっているからスパイウエアではない」と釈明していましたが、ユーザーの本音は「たとえ利用許諾をとっていても、こんなわかりにくい手口は許せない」というものでしょう。法律に違反してなければ何やっても許されるかという問題ですよね。つまりモラルが問われていることに気づかないと企業としては終わりです。
*公平性のために追記しておくと、その後バイドゥ社は問題に対応したものをリリースしました。
また世間的にBaidu IMEのみならず、色々な事故・事件を起こしているせいでBaidu自身の評判がよろしくない中で蒸し返すようなことをしても、あまり良い効果はないのではと個人的には思ってしまいます。
2016/6/22追記
まず該当記事は「名誉毀損による不法行為の免責事由の要件」に合致するものと考えていましたので申立があったこと自体に少々おどろきました。
しかしながら、こういったものはお互いに譲らなければ衝突が激しくなるもので
ベターな対応としてはお互いに協議し、あるいは妥協し合い対応していく事だと考えています。
今回削除申立が記事全体でなく、一部の表現のみにとどめてある事から、これが先方なりの妥協点としての提示かもしれないと斟酌し、またインターネットの記事における主張の撤回を打ち消し線で行う事は一般的であるため、こちらはそのような対処を行いました。
しかしながら、対処前にはガイドライン等の提示はされていなかったのですが、はてなとしては「打ち消し線での修正は、実質的にその個所が公共に送信されている状況に変わりがなく、送信防止措置としては有効なものとならないため、そのままでは『発信者が正当な理由から削除や修正を行わないもの』として対応せざるを得ない」との連絡がありました。
修正ガイドラインとしてはその他に以下のようなものがあります。ここ重要です。
・元記事から削除した内容を、別の記事に転載する
・外部サービスに転載し、リンクを設定して参照させる
・テキスト色を背景色と同色にしたりコメントアウトしている
・人名が記載されている場合など一部伏字にしているが複合することにより人名が特定できる
・隠語などで書き換えているが本来の意図がそのままであることが明確である
・権利侵害情報の末尾に「というようなことはありません」など、単に否定語を付け加える
・表現を書き換えているが、やはり論評の範囲を逸脱しうる表現である
といった修正も同様の性格のものです。
これらは、請求者の意見に応じる意図がないにも関わらず形式上の修正のみを行っているという点で、故意に権利侵害情報を流布する不誠実な対応とみなされる可能性もあります。
上記については非公式なものであるでしょうが、はてなの姿勢を考えるには重要なものと考えられます。当初からこれが提示されていれば違う対応になったでしょう。
現在、対応をはてなと協議中です。