中学校の公民の授業で選挙について学習、それ以降は本腰を入れて選挙について学ぼうという気持ちは無かった。
この記事では、池上彰著『あした選挙へ行く前に』を読了した感想と選挙についての所感を述べたい。
政治には期待していなかった
選挙、ねえ。大事だってことはわかってるのだけど、どこか盛り上がりに欠けるというか、興味が沸かなかった。自分の投じた1票って、どれほどの重さがあるのか、そんなものに価値があるのか。日本の政治に対する不信感も相まってか、選挙に対する熱は決して高くはなかった。
無投票だったことも、過去に何度かある。胸を張って公言できるようなことではないけれど、このいち辺境の選挙権を持った成人男性が「選挙に興味が沸かない」という理由で投票しなかったことがある、という事実は、これまた事実なわけで。投票率を鑑みても、これがマイノリティにはならぬのだから、日本の有権者の政治に対する熱の冷めようは問題になってくるのだろうね。
池上彰さんの本
この人は凄いね。何が凄いかって、解りやすいんだよ。政治に疎い僕でさえも「こんなに丁寧に砕かなくても、良いんじゃないの?」っていうくらいに、解りやすく記す。なるほど、人気が出るのは解る気がした。TVで引っ張りだこになる理由も。
きっと、博識なんだろう。もっと掘り下げて、専門用語を羅列して、政治学に精通した人にしかわからないような言葉で話したり記したりすることもできるはず。なんだけど、きっと有権者の知的レベルやTV視聴者の平均的な理解力を考慮した結果、このように「しっかりとかみ砕いて」説明するほうが多くの人に伝わって結果的には社会に貢献できる、ということを意識しているのだろうと思う。
見方によっては「拙い、物足りない」なのだろうし、たしかに、多少かいつまんだ説明ではある。だけれど、この人の解説本は見終わるとストンと頭の中に落ちるんだよね。日本国憲法について解りやすく記した別の書籍も読了したけど、テイストはおんなじ。誰が見ても解りやすい。誤解を承知で言うと、中学生でも理解できる。けれど、最終的にはそれなりに知識のある人でも「良くまとまっていて要点を捉えているな」ってところに着地してしまうのだと思う。
『あした選挙に行くまえに』では、日本の選挙システム概要を解説しているほか、アメリカの大統領制についても解りやすく解説して、総理大臣と首相の違い、首相と大統領ではどちらが権威が高いのか、また、なぜそうなるのかについて等を論じている。
最大の要点は、僕らが選挙で投票すべき理由。これを簡単に説明してくれているのが、この書籍の最大の功績だと感じる。
支払ったお金をどう使われるか
「収入の高いやつがたくさん税金払ってるんだから、良いんだ」なんて考えている人もいるだろう。だけど、僕らについてまわる「消費税」や「酒税」「たばこ税」などは、金持ちだろうが庶民だろうが、否応なしに取られる。社会で生活していれば、生を繋ぐだけでも税金というお金を支払っている。これをどのように使われるかについて、無頓着になるのはいかがなものか。
夫や妻に使われるお金については細かくうるさく目くじらを立てる人が、いざ選挙になると「興味ない」といって投票に行かない。これは少々、矛盾している。というのも、先ほど挙げた税金や所得税など、普段の生活において自分で稼いだお金の一部を、しっかりと渡しているという事実がある。どうしてこれについてもっと拘らないのか。旦那に渡しているお小遣いよりも、ずっと高い金額を税金としておさめているはずだ。立てるべき目くじらはここにあるんじゃないのかな。
選挙結果に影響がない?
いやいや、そんなことはない。どの政党に投票するかを予め決めている人の票を「固定票」とするならば、われわれのような浮いている票については「浮遊票」という。固定票である程度の地盤が固まっているとはいえ、この浮遊票で選挙の結果が大きく動くことはあって、それを「風が吹く」という。
2009年に時の民主党が与党になった時も、風が吹いた。2012年に安倍政権が誕生した時も然り。つまり、われわれ有権者の一票一票が現在の政治を監視し、それが思わしくないのであれば投票によって国を動かす政党を左右することができるのだ。
決してあきらめることは無い。生活が立ち行かなく、行政に不満を感じているのであれば、僕ら浮遊票の層が動き、政治を変えることもできる。出来レースだなんて思っていると、それこそ現在の不遇について何ら改善しようと考えない政治家の思うつぼになる。
投票所に行こう。そして、自分の持っている確かな1票を投じよう。普段、買い物をしていて取られている8%の消費税を思い浮かべて、それをしっかりと使ってくれる人は誰なのか。そのような想像をすれば、「政治に興味が無い」などとのたまうことはなくなるはずだよ。
今は投票日に仕事でも、早い段階で期日前投票ができる。2週間以上あれば、どこかのタイミングで投票することは可能なはず。もし、そんなわずかな時間すら作れないようならば、あなたの税金がどのように使われても、不平不満は虚無に帰すし、政治を変えることなんてできないんだよ。
僕は投票日は都合が悪いので、期日前投票に行くよ。この1票が、国を、政治を動かす原動力になるのだからね。
以上!
※当書籍は選挙権が18歳に引き上げられたことを受け、2016年6月20日に改定して発行されたもの。中身は2016年5月8日時点での内容に差し替えてあるとのことです。(定員10削減を含む衆議院選挙制度改革関連法につきましては、2017年夏以降の見通しとのことで、反映されておりません)