●お久しぶりです!一年くらいぶりですね。最近気になってることを絡めつつ、自己紹介をお願いします。 篠原:自己紹介、ラッキーオールドサンのギターを弾いています、篠原良彰です。最近のマイブームは、落語ですね。 ●落語! 篠原:落語に凄くやられてて、音楽よりも落語を聞いてる(笑)。最近その魅力が分かって、今度月亭方正さんを見に行こうと思ってます。 ●落語にはまったのは何かきっかけが? 篠原:ビートたけしさんの人情噺を、やっているのをネットか何かで見て、興味をもって、完全にハマっちゃって、ずーっと見てる。 ●はい。ナナさんはどうですか? ナナ:最近はまってることは、絵日記。毎日じゃないんですけど、夜描いてて。それくらいですかね、最近は。絵を描くの好きで。あの、たいくつ騎士道物語…レコ発のフライヤーも描いてて。描くの好きです。 ●絵日記、いつか見れたら嬉しいです。フライヤーも素敵ですね。 ナナ:ドンキホーテです(笑)。 ●では、一年ぶりなので、お2人とも以前と環境が変わってるのかなと思いますが、今回の制作に当たって、変わったことと変わらない事を教えてください。 篠原:う~ん、基本的には地続き、だと思ってますけど…最初のアルバムを出した時は、どちらかと言うと「外に開こう・開けよう」として作った作品だったんですね。実際に地方の方ライブに呼んでくれたりとか、変化もあってありがたかったりしたんですけど…同時に、…ちょっとこう忙しかったのもあって見失いそうになったんですよね、音楽的な事とか。そういうものを、自分達の好きな物を、ちゃんと追求してみようっていう気持ちが最初はあって、それが『Caballero』(キャバレロ)っていう作品に繋がっていくんです。やや内省的な…自分達の中を考えてみようっていう。それが同時に、音楽的にはルーツの方に…音楽産業の仕組みが出来る前とかの音楽に傾倒したりしていて。そういうのに、深みに入って行きたい、ような。 ●ああ、じゃあ意識的にこのベクトルに向いた? ナナ:意識的に? 篠原:意識的にでは無いかも。 ナナ:うん。 篠原:意識的にルーツを追求しようとしたと言うよりかは、その、内省しようと思った事が、自然とルーツを探す…追求してみよう、に、合致した。今になってそう思いますね。 ●ナナさんはどうでした?同じですか? ナナ:それは、私もやっぱりあって…。意識的にそうなったかは分からないんですけど、元々そういう音楽も好きなので。でも、アルバム『Caballero』作るにあたって、今回はこういう感じだねってうのは元々2人の中にあったので。 ●じゃあ自分達を改めて見つめてみたら、今回はこの方向だなって。 ナナ:はい。 篠原:そうですね。一回そうする必要性があったというか…深みというか、追求してみようっていう。実際出来たかどうかは別として。 ●結構不思議でしたね。ルーツ物が出てきたので。 篠原:なんか、枯れようとしてたんですよ(笑)。なんかね。 ナナ:ふふふ(笑)。 篠原:一気に老け込もうとしてた(笑)。 ●な、何で(笑)。 篠原:最初のアルバムで、「その時」にしか出せない物を追求したっていうか、その時にしか作れない物を書いて残した自負が僕らの中にあるんですけど、それを経た時に今度は「むしろ今じゃなくても良いでしょ」くらいの、何10年先とかになって追求すれば良いような事をちょっとやってみたかった、っていう感じです。 ●『Caballero』というタイトルについて。どんな意味を込めているのかなとか。 ナナ:Caballeroを買ったのはいつだっけ? ●ん?? 篠原:あ、Caballeroって、僕が買ったアコースティックギターの名前なんですよ(笑)。あの、古い60年代のアコギで。それを去年の、それこそ秋とか…10月11月とかに、大枚をはたいて買って(笑)。その音に影響されてる所もありますね。今の感じの音楽にはあんまり合わない音なんですよ。どっちかと言うと泥臭いブルースとか、そういう感じの音なんで。それで、Caballero。 ●じゃあ、そのギターが今回のモードを呼んで来たんですね。 篠原:そうですね…同時に、かな。「Caballero」って言葉には騎士道とか品性という意味もあるんですけど、僕らのこのアルバム『Caballero』のコンセプトにひとつ「品性」をあげてて。品性っていうのは小奇麗にしてるとかじゃなくて、何かこう、昔の芸人さんが舞台裏を見せないみたいな、そういう、誰に言われたわけでもなく自分だけが思ってるルールとか、そういう職人さんが持ってる姿勢とかで。そういう物をテーマにしたかったんです。それが合致した。 ●じゃあラッキーオールドサンとしての品性を大事にする?という所? 篠原:そうですね。…おこがましいですけど(笑)。 ナナ:うん(笑)。 ●さっきも言っていたちょっとの迷いがあったからこそ、ここに向かったのかな。 篠原:そうですね…音楽産業に限らずですけど、今の世の中的に、セルフプロデュースって言うか、そういう能力がすごく問われる時代、だと思うんですよ。自分をどう見せるかっていう。で、僕等的にはそれにちょっと疲れるし。 ●疲れる!(笑) 篠原:(笑)。それが、はたして「表現」なのか、自己顕示欲なのか、よく分からないし。とりあえず話題性とか刺激っていう物が先行するっていういき方じゃなくて、深く、自分の中で持ってるルールとか、別に誰に見せる訳でもない「こだわり」みたいなものを、自分達も持ってますよっていう。そういうのを出したかった。 ●はい。写真も60年代のアメリカン・ポップスみたいな。 篠原:そうですね、でも。 ナナ:50年代かな。 ●あ、50年代なんだ! ナナ:あはは(笑) 篠原:そうです。それか、それよりも古いあたりの。ドゥーワップ的な、『恋の予感』っていう曲があるんですけど、それが50年代的なガールズポップとか聴いててやりたいっていうのがあったんです。僕らの中では、このアルバムの中で一番新しいところっていうか。他はもっと古い事をやりたくて。それこそ戦前のブルースとかジャズとかラグタイムとか、スウィングとか。そういう物をやりたかった。 ナナ:うん。 ●おー。昔の良さ?を持ってきたかったんですか?でも昔っぽさは無くて、エッセンスは勿論あるんですけど、LOSにしっくり来ているというか。懐かしさも無く「今」聴いてる感じがあるから。 篠原:ああ。さっき言った音楽産業がカッチリ出来る前の古い音楽って、スリーコードを繰り返して、身近な生活を歌うものだったりして。でもSHOWとして作られた物では無いと言うか。それが凄い面白かったから、自分達でもやってみたかった。だから枯れてみようと思ったんですけど(笑)、作ってみると、枯れなかった(笑)。枯れ切れない(笑)。 ●じゃあ作られた音楽活動のルーティンみたいな物がちょっと嫌だった? 篠原:どうだろ?そういう訳でもないのかな。 ナナ:でもその時はもう、疲れちゃってて。 ●もうちょっと自由にやりたい、みたいな? ナナ:十分自由なんですけど(笑)。 篠原:もう自由にやらせてもらってるんですけど(笑)。こういうアルバムを作らせてもらってる時点で(笑)。 ナナ:ふふふふ(笑)。本当に(笑)。 篠原:だから、何か音楽産業にアンチで、って訳じゃなくて…もっと自然な形でやってみたかった。ファーストで開けて、自分達の世界からちょっとだけ色んな処にコミットした時に…ちょっと厭世的な感じになったのかもしんないですけど。 ●それもあって内に? 篠原:そうですね。だから今回はレコーディングメンバーも、そんなにいっぱい招いてなくて。割と普段一緒に演ってる人達です。ピアノで谷口雄さんに来ていただいてますけど、あんまり、ゲストミュージシャンいっぱいにしたくなくて。そういう意図もありますね。 ●より、自分達らしさを追及したらこうなった? ナナ:うーん、また違う局面と言うか。これが全てだってわけではないとは思うんですけど、また違う事が出来たなって感じはあります。 篠原:そうだね。それがイコール自分達らしい、に収まるわけでもないし、全部自分達でやってる事ではあるけど。だから不自然にやらない限りは全部自分達らしい事になると思います。音楽的な懐の深さとか幅とか…何だろうね。 ナナ:多分、物凄い渋い曲をやったとしても、私の声とか、歌…が、もっと枯れないと。しゃがれた唄い方にならない限り…(笑)。うん。 篠原:ナナさんの歌が真ん中にバーンとあるのは相変わらずなんで、だから、どういう事をやろうとしても、自然とラッキーオールドサンぽい物にはなるから。 ナナ:うん。でも将来的にしゃがれるかも知れない(笑)。 ●そんなー!嫌です(笑)。 ナナ:あと何十年かしたら。お酒とタバコとかで。うふふ(笑)。 ●えっでもタバコとお酒は嗜まれるんですか? ナナ:いや、タバコは吸わないですし、お酒もあんまり得意じゃないです。 ●良かった!ずっとそのまま居てください! ナナ:(笑)。 篠原:あはは(笑)。