真・恋姫†無双 劉虞伝 ~駄目人間の三国志~   作:敦賀
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原点回帰で勘違い系をあらすじっぽい感じでもいいから一個完結させようと思い執筆。一話三千字くらいで軽い作品なのでスナック感覚で読んでいただければ幸いです。



プロローグ 我欲渦巻く反董卓連合

 北郷一刀が降り立たなかった世界。

天の御遣いという存在無き外史においても、曹操、劉備、孫策等は反董卓連合に参加し、これからの群雄割拠の時代の為に名を上げようとしていた。

 群雄を代表し曹操は反董卓連合の誓約を唱える。

「今、漢王朝は危機に瀕しており、賊臣董卓の首は獄門に掛けられず、天子に害を与え、人民を虐殺している!今こそ天下の烈士、正義の士は先祖代々の御恩に報い、命を差捧げる時である!」

「正義の士たる我らは兵を糾合し、心を一つにし、ここに戦い抜く事を誓う!」

 曹操の声が劇場的に高まってゆく。その声に名も無き兵士達は高揚していく。曹操から発せられる覇気に周りの者達は酔いしれる。

「天よ!我らがこの盟約を違える時があれば、その命のみならず子孫をも滅ぼす事をここに願う!天よ!ご覧あれ!我らはここに義を示す!我らは困難に立ち向かい巨悪を斬り伏せるだろう!」

「さあ、この戦いにおいて、首を落とし、頭を失おうとも二心を抱く者は存在しない。今日!この時!我らは一つとなった!我らが正義を示そうではないか!」

 一兵卒や雑役夫に至るまで、この宣言を聞いて感情を高ぶらせない者はいない。自分たちは英雄譚の一幕にいる。そう信じない者は居なかった。

 その英雄譚が虚構であるとも知らずに。

***

この外史において、なぜ反董卓連合が起こったのかを一言で言い表すのであれば、旧何進派の若手、清流派士大夫の暴走という言葉が相応しい。

霊帝死後、兄の劉弁と妹の劉協で後継者争いが起きた。

董太后(霊帝の母親)と西園軍(皇帝直轄常備軍)の蹇碩は手を組み、皇帝の遺言であると、劉協を皇帝にしようとする。そこに立ち塞がったのが何進率いる劉弁閥である。

何進閥は十常侍と呼ばれる宦官張讓等と袁紹達清流閥を自称する若者達で構成されている派閥であった。蹇碩は、同じ宦官である張讓等を調略しようとした。

「何進の手の者は宦官皆殺しの計画を立てている。同じ宦官同士、手を組み、何進を排除しよう」

そんな手紙を出すも、逆にそれを何進に横流しされ、何進の暗殺計画が露呈。蹇碩は何進に屋敷を襲われ、殺された。

その動きを見て、後将軍(中央軍司令官)であった袁家の当主袁隗が何進の支持を表明した事もあり、何進閥は勝利。董太后を殺害した何進派を阻む者は無く、皇帝は劉弁となったわけだが、ここで何進派閥が割れる。

 若手官僚達が宦官の皆殺しを提案したのだ。蹇碩の懸念通り、何進派の若手は、何進派の得られる利権を宦官達と分け合うつもりは一切なかった。皆殺しにして総取りしようと動き始めた。何進に外戚にとっての宦官の脅威を語り、何進も自らの権力を保持する為に宦官を排除しようと決断した。

 その政戦の結果は悲惨だった。何進は、宦官を殺そうとするのだが、宦官皆殺しに反対する何皇后達から情報が流れた。逆に宦官達に殺されてしまい、宦官も報復として襲ってきた清流閥の若者達に殺される。
思惑通り、宦官を排除させることに成功した清流派士大夫だったが、何進を失い、皇帝劉弁と王の劉協が宦官に連れ去れて行方不明になるなど、失態を重ね続けた。

そこに現れたのが董卓である。

 行方不明になっていた皇帝を保護し、洛陽に入った董卓は、中央政界の余りの有様に涙したという。

董卓は南匈奴と白波賊の連合に対する盾であった。亡き師と同じく国家の危機に辺境たる并州で常に最前線で命をかけていた。辺境で命をかけて戦ってきた仲間たちは報われず、戦場に屍を晒し続けている。それに対して、中央は今もなおこのような有様なのだ。

「詠ちゃん、ごめんなさい。本当なら関わるべきじゃないのかもしれない。でも……もうこれ以上、黙ってみていることなんてできないよ」

 董卓は無力だった。涼州の小豪族の生まれで、地元の涼州を基盤にできず、様々な郡や県を転々としている有様だ。今もなお、南匈奴と白波賊の連合を相手に、僅かな兵で戦うという貧乏くじを引かされている。

 それでも、それがみんなの為になるのであれば……と、思い今まで戦ってきた。いつかみんなが報われると信じて。

 それはこのままでは一生何も変わらない。董卓は思い知った。

「謝らないで、月。ボクも我慢の限界。国家をこんな奴らに任せておいたら、皆が報われない」

民や兵士を顧みず、政戦に熱中する者達に政治は任せておけないと董卓は立ち上がる。
おそらく自分たちは暗殺されて、葬られるであろうと、悲惨な覚悟を抱いて。

董卓は皇帝の空白となった皇帝の後見人として、かつて、党錮の禁で処分を受けた有能な士大夫達を三公や九卿に起用し、中枢に据え、若手の実力者を刺史や太守に起用していく。その中に董卓の部下は居ない。自分の権力基盤を確固たるものにする為には、部下を高官にすることが最も早い道であるにも関わらず。私心無き政治、それが董卓の統治だった。

「なんなのですの!あの董卓とかいう田舎娘は!」

それに対して面白くないのが、袁紹達である。

「もっともです。本来、我々が居るべき地位に居座ったあげく、あのように調子に乗っていては我らの立場がない」

「そうだ。あそこに居るべきは俺たちだった。分不相応な娘は排除すべきなのだ」

自分たちが居るべき位置に居座り、勝手な事をしている。董卓を打ち倒し、本来あるべき姿に戻すのだ!

 彼らは各々、暗殺者を雇うなどして、董卓を排除しようとした。だが……

「ったく、ようやくマシになるっちゅう時に邪魔すんなや」

「………月と詠、守る」

 呂布や張遼といった者達に撃退された。

 この頃になると董卓の真摯な思いに共感する者達も現れてきた。政治腐敗を正そうと奔走する董卓達に呂布や張遼等をはじめとする者も協力を惜しまない。

 董卓達も袁紹達に歩み寄るも、袁紹達が望むのは、董卓達が今居る位置であり、協力することなどしない。

まともな手段では董卓を排除できないとみた袁紹等、清流派士大夫は反董卓連合の結成を目論む。

清流派士大夫は有能だった。彼らは、「これ以上、争っていても仕方がないが感情的に直接仕えることが出来ないので地方に職をくれ。」と董卓に申し入れた。

 董卓は喜んだ。ようやくわかってくれたのだと。董卓は清流派たちの言葉を良しとし、各地の太守として派遣した。それが清流派閥の策とも気づかず。

 中央から送られた清流派士大夫達は地方へ行き、訴えかける。

「董卓が都で暴政を行い、民を虐殺している。正義の士は今こそ立ち上がるべきだ!」

 清流派士大夫に加えて、それに同調した者、噂を信じた者、利用しようとした者が加わり、反董卓連合が結成された。

大陸は黄巾の傷を癒す間もなく、次の戦乱へと移っていく。

戦争を以って戦争を養う事はできる。しかし、民は何を以って養う事ができるのか?それを考える者は反董卓連合に参加したものは皆無であった。

 清流派士大夫達は反董卓連合を結成に成功した。しかし、取り込むべき勢力を一つ調略する事が出来なかった。

 幽州牧 劉虞

 反董卓連合の兵糧、物資の多くは冀州牧の韓馥が賄っている。連合に兵を割かれている冀州を狙われたら物資を送る事はできなくなる。連合の主力は兗州と豫州である。直ぐに物資が無くなる事はないが、冀州から兵を出している者は戻らざるを得なくなるだろう。

 そうなれば、今後の動きもまた変わってくる。

 連合が解散されても、連合に集まった者が皇帝に従う事はない。独立し、自分が天下を取る為に動き出す。野心にまみれた者だからこそ、この連合に参加したのだ。太守なんて地位に満足しているものなど周りの者に居ない事を知っている。

 これは確認だ。全員が皇帝を無視するという暗黙の了解を取った。

 その事が、今の董卓軍と連合の膠着を生んでいる。劉虞が動けば、即、群雄割拠だ。こんな戦いで兵力をすり減らす事などできない。

 反董卓連合は結成してから、三日経たずして既に内部分裂を始めていた。