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打ち込んで、この仕事に
選ばれたと思えるほどに
写真 エアハース・インターナショナル(株) 代表取締役社長
木村 利惠
さん
きむら・りえ ●1961年東京都生まれ。人の顔にメークすることに興味があり、結婚後、大手化粧品会社に勤務。出産後、葬儀会社で返礼品の受け渡しのパートを始め、遺族たちから頼られる存在となり社員に登用される。空港霊柩業務を経験し、2003年エアハース・インターナショナル(株)を設立。日本ではほとんどない空港霊柩業務の専門企業として、スマトラ沖地震・津波の被害者など年間平均250体ほどの遺体・遺骨送還に関わっている。

 外国で亡くなった日本人の遺体を迎え、傷んだ体を修復して家族の元へ届ける。あるいは日本で亡くなった外国人の遺体に防腐処理などを施し、搬送先の国に合わせた書類を整えて母国へ。これが木村さんの会社が行う空港霊柩(れいきゅう)業務だ。

 海外から帰る遺体はテロや災害に巻き込まれて損傷の激しいことも多い。縫合の未熟さや航空搬送での気圧の影響で損傷拡大もある。そんな遺体に「お帰りなさい」と語りかけながら体を清め、修復、メークで生前の面影に近づける。

 「魂をも連れ戻すつもりで務めさせて頂いています。それはご本人のためであり、ご遺族の悲しみをこれ以上広げないため。ご遺体と対面し、きちんと悲しみ不慮の死を受け入れられるよう、少しでもお手伝いできればと思っています」

 木村さんが葬儀業界に入ったきっかけは主婦時代のパート。やがて社員に登用され、懸命に学んだ。そして、知識や気遣いが遺族の安心にじかにつながるこの仕事にのめり込み、現在の会社を起こす。

 「遺体搬送は各国の宗教や慣習の違い、政府や企業など多くの関わりで複雑化し、一度歯車が狂うと泥沼化します。そんな時はどうすればきれいな流れにできるかを考えることに燃えますね。ただ、ご遺体が理不尽な扱いを受けて戻った時は憤りを感じます」

 それを避けるため、時間を作って海外の業者や遺体安置所、解剖医などを訪ね、状況を把握し改善に向けて話し合う。また、悲しみに沈む遺族とも向き合おうと、電話を24時間受ける態勢でもいる。

 「ご本人、ご遺族、現場で作業する社員。何があっても私が受け止める覚悟があります。以前は人にさせられているという感覚があったけれど、今は自分が選ばれ、させて頂いているという実感がある。この仕事があるから私は生きていけるんです」

 人のために尽くすこと。それがいつしか自分のエネルギーになっている。  

(3月31日掲載、文:田中亜紀子・写真:南條良明)

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