階級社会の「想像力欠如」が貧困問題の壁だ

団塊世代が認めようとしない「日本の貧困」

鈴木大介氏による貧困報道への提言。今回のテーマは「かわいそうバイアスの限界」について

「もし食い物万引きしちゃいけないって言うなら、3日間公園の水だけ飲んで暮らしてみればいいんすよ。非行少年なんか、親が3日飯食わせなかったら誰だってなるんすよ」

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「子供のことが心底憎いって思ってる親がいるはずがないって、わたし、生まれてから100回ぐらい他人に言われた。けどわたしが施設で暮らしてる間、母親から“あんた生むんじゃなかった”って手紙も100通ぐらい送られてきた気がする。母親の手紙にカミソリ入ってたことだってある」

「俺はヤクザになりたくないから東京に来たんですよ。中学卒業して地元で食っていきたかったら、ゲソ付ける(ヤクザになる)かヤクザの下で働く以外に選択肢がない地元って、鈴木さんわかります?」

「少なくともウチが通ってた高校じゃ、高校中退した理由が親の失業だって同級生がクラスに8人いました」

「初めての援交の相手はママの元カレです。あたしのママは、ばあちゃんに“シングルマザーでも娘3人生めば家が建つ”って言われて育ったんだって。女は中学卒業すりゃ夜職に突っ込んで稼がせることできるからって。実際、ママは中3からずっと夜職」

「鈴木さんて大学進学したやつはみんな親が金持ちとか思ってません? 鈴木さんの頃はどうだったかわかんないっすけど、僕の周りはだいたい家賃とか仕送りとか学費とか、大学行ってる間に親に払ってもらったもんは卒業したら返すのが前提ですからね」

目からウロコが落ちた取材対象者の言葉

ここ数年の取材で目からウロコが落ちた取材対象者の言葉を、思いつくままに並べてみた。

目からウロコが落ちるとはつまり、自分の生きる世界とは違う世界の常識を目の当たりにしたり、想像の範疇の外側をのぞいてしまったということ。取材記者を続けてきて痛感するのは、記者自身も含めて、「人間の想像力が及ぶ範囲とは恐ろしく限定的なものだ」ということである。

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