なぜ防げなかった 女子大学生刺傷事件から1か月
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東京・小金井市で芸能活動をしていた女子大学生が刃物で刺された事件から21日で1か月です。警視庁は、今後、入院中の女子大学生の回復を待って話を聞き、事件の再発防止につながる最終的な対策を取りまとめることにしています。
この事件は1か月前の先月21日、芸能活動をしていた大学3年生の冨田真由さん(20)が、東京・小金井市のライブの会場近くでナイフで刺され、警視庁は京都市の会社員、岩埼友宏容疑者(27)を逮捕し、殺人未遂などの疑いで捜査しています。
この事件では、地元の警察署が事前に相談を受けながら、結果的に事件を未然に防ぐことができず、警視庁は再発防止のための検証作業を続けています。
これまでの検証で、3年前に岩埼容疑者について別の警察署で調べた情報が警視庁のシステムに登録されず、共有されていなかったこと、冨田さんから事前に相談を受けた内容が、ストーカー対策の専門部署に伝えられていなかったこと、さらに事件当日も冨田さんから110番通報を受けた際にミスがあり、現場の特定が遅れたことなど、複数の問題点が浮かびあがっています。
警視庁は入院中の冨田さんのけがの回復を待って話を聞き、事件の再発防止につながる最終的な検証結果と対策を取りまとめることにしています。
この事件では、地元の警察署が事前に相談を受けながら、結果的に事件を未然に防ぐことができず、警視庁は再発防止のための検証作業を続けています。
これまでの検証で、3年前に岩埼容疑者について別の警察署で調べた情報が警視庁のシステムに登録されず、共有されていなかったこと、冨田さんから事前に相談を受けた内容が、ストーカー対策の専門部署に伝えられていなかったこと、さらに事件当日も冨田さんから110番通報を受けた際にミスがあり、現場の特定が遅れたことなど、複数の問題点が浮かびあがっています。
警視庁は入院中の冨田さんのけがの回復を待って話を聞き、事件の再発防止につながる最終的な検証結果と対策を取りまとめることにしています。
書き込みやめさせて 警察に相談
警視庁によりますと、岩埼容疑者は去年2月ごろから冨田さんのライブに出かけるようになったとみられています。次第に好意を募らせていったとみられ、ことし1月17日に都内で行われたライブでは、腕時計や本を手渡し、冨田さんの連絡先を聞きだそうとしていたということです。
さらに、このころから岩埼容疑者は冨田さんのツイッターに頻繁に書き込みをし始め、4か月で300件以上に及びました。
最初は「楽しい時間をありがとー」といった好意的な内容でした。ところが冨田さんが書き込みに返信しなかったりすると、「ふざけんなマジであんたにスゲー怒ってる」などと批判的なものになっていきます。
ことし4月末に書き込みをブロックされたあとは、冨田さんの知り合いのツイッターに「冨田真由に贈ったものを全部返せと伝えてください」などと繰り返し書き込むようになりました。
岩埼容疑者の執ような書き込みに対して、冨田さんは先月9日、地元の武蔵野警察署を訪れ、岩埼容疑者の名前や住所を告げたうえで、書き込みをやめさせてほしいと伝えたということです。
さらに、このころから岩埼容疑者は冨田さんのツイッターに頻繁に書き込みをし始め、4か月で300件以上に及びました。
最初は「楽しい時間をありがとー」といった好意的な内容でした。ところが冨田さんが書き込みに返信しなかったりすると、「ふざけんなマジであんたにスゲー怒ってる」などと批判的なものになっていきます。
ことし4月末に書き込みをブロックされたあとは、冨田さんの知り合いのツイッターに「冨田真由に贈ったものを全部返せと伝えてください」などと繰り返し書き込むようになりました。
岩埼容疑者の執ような書き込みに対して、冨田さんは先月9日、地元の武蔵野警察署を訪れ、岩埼容疑者の名前や住所を告げたうえで、書き込みをやめさせてほしいと伝えたということです。
重なったミス 警視庁が検証
冨田さんは事件前に岩埼容疑者の行動について、地元の警察署に相談していました。相談を受けながら結果的に事件を防ぐことができなかった警視庁は、当時の対応について検証を進めていて複数の問題があったことを先週、明らかにしました。
最初の問題点は3年前にさかのぼります。岩埼容疑者が別のタレントの女性のブログに「殺す」などの文言を書き込みしたとの相談を受けて、警視庁の万世橋警察署が調べていました。
しかし、当時の警察署の担当者が、岩埼容疑者の名前をシステムに登録するのを忘れたため、岩埼容疑者についての情報が警視庁のなかで共有されなくなったのです。
最大の問題は事件の12日前に起きました。冨田さんは地元の武蔵野警察署に「ツイッターなどに執ように書き込みをされている」などと、岩埼容疑者の行動について相談に訪れました。
しかし、警察署の担当者は「書き込みのなかに危害を加える直接的な文言がなかった」ことや、「ことし1月以降、冨田さんと岩埼容疑者が直接会っていない」ことなどから、警視庁本部にあるストーカー対策の専門部署には相談内容を伝えていませんでした。
さらに、事件当日、冨田さんから110番通報があった際、当初、事件現場ではなく自宅に警察官を向かわせていました。警察署では、冨田さんが事件当日のライブに出演する予定を知り、冨田さんから110番通報があった際に速やかに現場に駆けつけることができるように、警視庁のシステムに登録していました。ところが、この際に「ライブ会場でトラブルになる可能性がある」と入力したものの、ライブ会場の住所は登録していませんでした。
さらに、事件当日の110番通報に対して、通信指令センターの担当者が携帯電話の情報から発信場所を確認する操作を行っていないミスも重なりました。
指示を受けた警察官は自宅に向かって出動し、事件現場の特定が遅れる事態となりました。
こうした問題点について、警視庁は事件後、内部で検証を進め、対策を検討しています。
3年前に万世橋警察署で起きたミスの対策として、相談を受けた事案は確実にシステムに登録することを全警察署に指示しました。
また、警察署で相談を受けた際の対応についても検証しています。
今回の事件については、被害者が切迫した状況であると、当時、判断するには難しかったとしたものの、繰り返された書き込みの内容が好意から悪意に変わったことなどを捉え、ストーカー対策の専門部署に「速報すべき事案だった」としました。
今後は、ツイッターへの書き込みなどを踏まえ、相談内容をこれまでより幅広く、ストーカー対策の専門部署に連絡し、組織的に対応するよう指示しました。さらに、110番通報にいち早く正確に対応するよう、事前に相談を受けた人から通報があった場合、110番を発信した位置情報を自動的に確認できるシステムを今月中に導入することにしています。
警視庁は今後、冨田さんのけがの回復を待って話を聞いたうえで、検証結果をまとめることにしています。
最初の問題点は3年前にさかのぼります。岩埼容疑者が別のタレントの女性のブログに「殺す」などの文言を書き込みしたとの相談を受けて、警視庁の万世橋警察署が調べていました。
しかし、当時の警察署の担当者が、岩埼容疑者の名前をシステムに登録するのを忘れたため、岩埼容疑者についての情報が警視庁のなかで共有されなくなったのです。
最大の問題は事件の12日前に起きました。冨田さんは地元の武蔵野警察署に「ツイッターなどに執ように書き込みをされている」などと、岩埼容疑者の行動について相談に訪れました。
しかし、警察署の担当者は「書き込みのなかに危害を加える直接的な文言がなかった」ことや、「ことし1月以降、冨田さんと岩埼容疑者が直接会っていない」ことなどから、警視庁本部にあるストーカー対策の専門部署には相談内容を伝えていませんでした。
さらに、事件当日、冨田さんから110番通報があった際、当初、事件現場ではなく自宅に警察官を向かわせていました。警察署では、冨田さんが事件当日のライブに出演する予定を知り、冨田さんから110番通報があった際に速やかに現場に駆けつけることができるように、警視庁のシステムに登録していました。ところが、この際に「ライブ会場でトラブルになる可能性がある」と入力したものの、ライブ会場の住所は登録していませんでした。
さらに、事件当日の110番通報に対して、通信指令センターの担当者が携帯電話の情報から発信場所を確認する操作を行っていないミスも重なりました。
指示を受けた警察官は自宅に向かって出動し、事件現場の特定が遅れる事態となりました。
こうした問題点について、警視庁は事件後、内部で検証を進め、対策を検討しています。
3年前に万世橋警察署で起きたミスの対策として、相談を受けた事案は確実にシステムに登録することを全警察署に指示しました。
また、警察署で相談を受けた際の対応についても検証しています。
今回の事件については、被害者が切迫した状況であると、当時、判断するには難しかったとしたものの、繰り返された書き込みの内容が好意から悪意に変わったことなどを捉え、ストーカー対策の専門部署に「速報すべき事案だった」としました。
今後は、ツイッターへの書き込みなどを踏まえ、相談内容をこれまでより幅広く、ストーカー対策の専門部署に連絡し、組織的に対応するよう指示しました。さらに、110番通報にいち早く正確に対応するよう、事前に相談を受けた人から通報があった場合、110番を発信した位置情報を自動的に確認できるシステムを今月中に導入することにしています。
警視庁は今後、冨田さんのけがの回復を待って話を聞いたうえで、検証結果をまとめることにしています。
専門家「危険察知のスキルを高めるべき」
ストーカー犯罪や警察の組織に詳しい、常磐大学の諸澤英道元学長は「インターネットを介したサイバーストーカーは、短期間で興奮状態に入って危険になるが、日本社会ではこういう形でのストーカーは意識されておらず、警察が判断を間違ったことははっきりしている。一気に様子が変わっていったプロセスを分析し、危険度が高いと判断できるようなスキルを高めていくことを警察のなかでもっと真剣にやるべきだ」と指摘しています。
さらに、「今回、警視庁が打ち出した対策には期待しているが、警察の基本である国民の生活、生命の安全をいかに守るかということを考え、ケースバイケースで対応することが大事だ。一方で、警察は日常的にかなりの数の相談を受けていて、各署の担当者は忙しくなっている。こうしたなかでの判断は危うくなりがちで、今後は警察以外に、自治体や被害者を支援する民間の機関などが連携して対応することも必要だ」と話しています。
さらに、「今回、警視庁が打ち出した対策には期待しているが、警察の基本である国民の生活、生命の安全をいかに守るかということを考え、ケースバイケースで対応することが大事だ。一方で、警察は日常的にかなりの数の相談を受けていて、各署の担当者は忙しくなっている。こうしたなかでの判断は危うくなりがちで、今後は警察以外に、自治体や被害者を支援する民間の機関などが連携して対応することも必要だ」と話しています。