【サンパウロ=宮本英威】ブラジル通信大手オイは20日、リオデジャネイロ州の裁判所に会社更生手続きの適用を申請したと発表した。負債総額は654億レアル(約2兆円)。外資系企業との競争が激化し、資金繰りに行き詰まった。地元メディアによると同国で過去最大の破綻といい、低迷する経済に冷や水を浴びせかねない。
オイと関連会社6社が会社更生手続きの適用を申請した。銀行など債権者との債務再編に向け協議を進めてきたが、合意に至らなかった。裁判所の承認後、60日以内に更生計画を策定する。オイは同日公表した声明文で「顧客向けサービスの提供は続ける」としており、利用者には大きな混乱はないもようだ。
オイは1998年にリオデジャネイロ州などで固定電話事業を開始した。2009年に通信大手ブラジル・テレコムを買収して事業領域を拡大したが、携帯事業が苦戦。固定電話市場ではシェア34%で同率首位なのに対し、携帯では19%と4位にとどまっていた。
ブラジルの通信市場は外資に開放されており、携帯ではスペイン・テレフォニカ傘下のビボが29%、イタリア系のTIMが26%、メキシコ系のクラロが25%のシェアを握る。オイは外資の牙城を崩せず、2016年1~3月期の最終損益は16億4400万レアルの赤字(前年同期は4億4700万レアルの赤字)となった。
通貨安も重荷となった。負債の約7割は外国通貨建てで、ブラジルの通貨レアルが過去1年で対ドルで約1割下落、負債が膨らんだ。
ブラジルでは景気低迷で債務返済に苦戦する有力企業が目立つ。新日鉄住金の持ち分法適用会社で鉄鋼大手のウジミナス、航空大手ゴルは金融機関との債務再編交渉に取り組む。有力政治家への不正献金疑惑の舞台となった国営石油会社ペトロブラスや、資源大手のヴァーレも資産売却で負債削減を進めている。