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民進党の公約

2016年6月18日
◆分配政策の説明 より丁寧に◆

 民進党が発表した参院選の公約は重要課題として二つを掲げた。一つ目は経済政策で、安倍政権のアベノミクスは「失敗」だと断じ、格差是正など分配政策を重視する「分配と成長の両立」を打ち出した。二つ目は憲法改正で「戦後日本が育んできた憲法の平和主義を守る」としている。

 ただ安倍政権も「経済成長」一本やりから事実上転換し、「1億総活躍プラン」などで分配政策にも配慮を示した。民進党の主張が政権与党とどう違うのか、明確で丁寧な説明が求められている。

財源は確保できるか

 野党の責務は、「他の道がある」と具体的な選択肢を示すことだろう。

 民進党の公約は「普通の人から豊かになる経済政策」を掲げ、給付型の奨学金創設などの教育支援や、保育士の処遇改善、非正規・正規雇用の賃金格差解消などを列挙し、「人への投資」を重視する方針を示した。

 政権、与党との違いは根本にある考え方だと民進党は説明する。「成長と分配の好循環」を掲げる安倍政権が経済成長を重視し、それによる税収増などの「果実」を分配の財源に充てるとしているのに対し、民進党は分配政策そのものが成長につながると主張する。

 確かに格差の拡大による消費の落ち込みなどが、成長の阻害要因になっていると指摘される。中低所得層への分配政策は、政権との一つの対立軸となろう。民進党は、この違いを有権者に分かりやすく説明する努力が必要だ。

 また民進党は、消費税再増税を2年延期する一方で、大企業や富裕層に負担を求める税制改革と徹底した行政改革で財源を捻出するとしている。

 だが経済のグローバル化で、大企業の拠点や富裕層の資産の海外移転が指摘される。国内の税制改革で十分な財源の確保ができるのか。容易ではない行政改革をどう進めるのか方策も聞きたい。

再増税で野党間乱れ

 憲法改正に関しては与党との対立軸が明確だ。

 安倍晋三首相は改憲に強い意欲を示していたが、参院選に向けた遊説では言及を避けている。自民党の公約は「国民合意の上に憲法改正」とわずかに触れただけだ。

 民進党は、安倍政権の狙いは参院選で改憲発議に必要な3分の2以上の議席を確保し、憲法9条を改正することだと指摘。「立憲主義」と「平和主義」を守り抜くと主張している。与党も堂々と論戦に応じるべきだ。

 野党間の政策の不一致も課題になろう。民進、共産、生活、社民の4党は32の改選1人区で候補者を一本化した。しかし基本政策では違いもある。例えば消費税では、民進党が再増税の延期を主張するのに対し、共産党は引き上げの断念を訴えている。野党の連携を「野合」と批判する政権、与党にどう反論するのか。有権者の理解を得るよう説明を尽くすべきだ。

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