国語が苦手です。
読解力がありません。
そういって入塾を希望する、授業を追加する生徒が多いです。
「最近の中高生は読解力がない。」というのは以前に勤めていた学習塾でもよく話題になったことですが、「これ、本当なのかな?」と最近良く思うことがあります。
足りないのは読解力ではない
最近の中高生が読解力不足であるという話に私が疑問を持ったのは、国語の指導ではなく、理科や数学の指導をしているときです。
よく言われることですが、読解力がない生徒は数学などの文章題を理解できずに失点することが多いです。これ自体は事実です。しかし、そういった読解力不足の生徒に混じって、明らかに違うタイプの生徒が存在します。
「センセ~、これどうやって解くの?」と自習中の生徒がテキストを持ってくるのですが、どう考えても大して難しい問題ではないのです。その生徒の実力であれば絶対に解けるであろうレベル。
まぁ、何か勘違いでもしているのだろう。そう思って、「よし、一緒に解いてみるか。どれどれ。」と問題文をゆっくりと読み上げ、その後、解説をしていきます。
すると、解説途中に、それも初めの方で、「あ~、そうか、わかった。」と自己解決するのです。場合によっては読み終わる前に、自己解決する子もいました。
最初のうちは自己解決したのであれば良かった良かったと思っていたのですが、このパターンの子がやたらと多い。これはおかしい。
そこで、「分からない。」と言った生徒に、「じゃぁ、問題文をゆっくりと読み直してごらん。」と再度、問題文を読ませると「あ~そういうことか。ちゃんと読んでいなかった。」と。
あ~やっぱりか…
そう。最近の子は読解力がどうこうではなく、それ以前に問題を読まない子が多いのです。
文章を読む機会が少ない?
先の「最近の中高生は読解力がない」という話になると、その原因として言われるのが、「最近の生徒は本を読まない。」という話です。
しかし、この話はどこまであてになるのでしょうか。たしかに、TVもないような時代の中高生に比べれば本を読む時間は短くなっているのでしょうが、私らが子供のころと比べて極端に読書時間が少ないとも思えません。
皆さん、最近の中高生と比べて明らかに読書時間が長かったと胸を張って言える自信ありますか?私はそもそも中学時代に教科書とマンガ以外に本を読んだ記憶がありません。
加えて言うと、本以外の活字ということになれば、もしかしたら最近の中高生の方がふれる機会は多いのではないかとすら思えます。ネットとかでテキストも読みますよね。youtubeばかりではないですよね。たぶん。
そうすると、読書時間とか文章にふれる機会のあるなしが問題ではないような気がします。
テンプレート化された文章が多いのではないか?
そもそも、「最近の中高生は本を読まない。」という話は中高生の読解力が低下しているという前提で言われている後付の理由です。読解力がないのではなく、ちゃんと読まないのが最近の中高生です。
では、「なぜ読まないの?」という話になりますが、読む必要を感じていないからではないでしょうか。
読まなくても大体書かれていることが想像できる。「あ、あのパターンか。」そうやって読み飛ばしているのではないかと思うのです。
これ、中高生に限らずありますよね。はてブのコメントなんか見ていると、「こいつ、タイトルだけ見てコメントしてやがるな。」みたいなこと良くあります。同じことを中高生がやっているのではないかと思うのです。
読み物にしても、彼らは自分の好きなもの、好きなジャンルばかりを読みます。読みなれていないものはそれだけでストレスになるようで、読みやすいものを好む生徒が多いように思います。
読み物だけではないですね。ゲームも動画も選択肢が多いため、好きなものだけチョイスしています。だから見聞きするものがどれも同じ傾向になりやすい。
そうすると、同じジャンルのものはある程度テンプレートがありますから、そういうものに慣れてしまうと、何事にも「こういうもの」という先入観を持つようになるのではないかと思うのです。
実際に読解力はどうなのか?
何となく、これが原因なんじゃないかと思うようになって以来、生徒には文章をじっくりと音読するように言っています。結果、どの子も得点が上がっています。
じっくり読んだ状態での国語の読解問題の結果を見れば、読解力が低下しているとはとても思えません。
結局のところ、生徒らが読んだつもりになっていたのと同様に、指導者も分かったつもりになって、「本を読まないから読解力がない。」とか言っていたに過ぎないのではないかと思うのです。
読解力がないのではなく、読んでいないだけ。
もちろん、読解力が足りない子がいるのは間違いありませんし、実際に昔の生徒と比べてどうなのかと言われれば確かなデータもありませんので断言はできません。
ただ、昔に比べて極端に読解力が足りないなどということは絶対にありません。
彼らは読解力がないのではなく、読んでいないだけです。
まぁ、実際は読んでいないだけなのに、学校の先生らが「お前らは読解力が足りない。」とか不安にさせてくれるものだから、私のような塾経営者は大した苦労もせずに生徒を獲得できてありがたい限りなのですが、そうは言っても、そんな話を鵜呑みにして深刻に思っている生徒や保護者がいたのなら気の毒なので記事にしてみました。
大事なことなので、もう一度、
読解力がないのではなく、読んでいないだけ。
読解力の話もそうですが、「最近の〇〇は××だ。」とか言う話のほとんどはいい加減な後付の理由で語られているものばかりのような気がします。
もっともそうな理由のついている話こそ疑ってかかった方が良いのかもしれません。
では、また。