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週刊がん もっといい日

乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』
(取材協力:新潟大学大学院医歯学総合研究科 ・安保 徹教授)


連載第1回
(07.1.26)
連載第2回
(07.2.23)
連載第3回
(07.3.23)
連載第4回
(07.4.27)
連載第5回
(07.5.25)
連載第6回
(07.6.22)
連載第7回
(07.7.27)
連載第8回
(07.8.24)
連載第9回
(07.9.28)
連載第10回
(07.10.26)
連載第11回
(07.11.30)
連載第12回
(07.12.27)

最終回




安保 徹(あぼ とおる)教授

1947年、青森県生まれ。89年に胸腺外分化T細胞の存在を発見し、96年に白血球の自律神経支配のメカニズムを解明。その後も国際的な場で研究成果を発表し、免疫学の最前線で活躍を続ける。著書に『免疫革命』(講談社インターナショナル)『医療が病いをつくる』(岩波書店)など多数。がん患者向けの講演でも全国を飛び回っている。

第1回

がん患者さんのための『免疫とがん』講座
第1回 『偏った生き方が、がんを引き起こす』

「免疫の主役である白血球は自律神経に支配されており、働きすぎ、悩みすぎなど、無理な生き方で自律神経のバランスがくずれ免疫が低下して、がんが発症するのです」

もう二度とがんにはなりたくない…がん治療中の方も、がんの治療をひとまず終えた方もそう考えるのではないでしょうか。再びがんにならないためには、がんになった原因をきちんと理解して、その原因を取り除くこと、治る理由を理解して、それを実践することが不可欠です。ではなぜ、がんになるのか、再発を防いでがんを治すには、どうすればよいのでしょうか。そこで『週刊がん もっといい日』では、がん患者さんのための『免疫とがん』講座を開講いたします。その第一弾は、3回にわたり『免疫革命』などの著書で知られる新潟大学大学院医歯学総合研究科の安保徹教授に、お聞きします。

■取材・文:
メディカルライター・内山 遥(うちやま はるか)
乳がん闘病中


取材協力

新潟大学大学院医歯学総合研究科
安保 徹教授

ストレスによる交感神経緊張状態が
がんの発端に・・・


 がんを経験した人なら誰しも、「なぜ自分はがんになってしまったのだろう」と考えたことがあるでしょう。私も、「まだ40代前半だし、それほど不摂生をしていたわけでもないのになぜ…」と首をかしげたものです。けれども安保徹教授は、がんの原因は自分自身のなかにあると言います。
 「がんをはじめ多くの病気は、免疫が低下することによって起こります。そして免疫力を低下させる元凶は、偏った生き方なのです。ところが、医療関係者も一般の人も、なぜがんができるのかをきちんと理解していません。だからがんを治すには、“悪いものを取る”“小さくする”という考え方にしか辿り着けないのです」(安保教授)
“偏った生き方”が、発がんにつながるメカニズムは、福田稔医師(日本自律神経免疫治療研究会理事長)との研究で発見した「白血球の自律神経支配の法則」(福田―安保理論)で、実に明快に説明されます。
 この理論は、免疫の主役である白血球は自律神経に支配されており、働きすぎ、悩みすぎなど、無理な生き方によって自律神経のバランスがくずれ、免疫が低下して、がんや慢性疾患を発症するという考え方です。
 「白血球の95%は、細菌処理を得意とする顆粒球と、ウイルスやがんなどの異物処理を行うリンパ球で占められています。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、あらゆる生命活動をコントロールしていますが、交感神経が優位になると顆粒球が増え、副交感神経が優位になるとリンパ球が増えるのです。
 通常、昼間仕事などでストレスを感じ、交感神経が優位になっても、夜睡眠をしっかりとることで、副交感神経が優位になります。つまり自律神経のスイッチが、スムーズに切り替えられているというわけです。
 ところが毎日夜遅くまで働いたり、ストレスが続いたりして交感神経優位の状態が長く続くと、白血球のなかの顆粒球が増え、リンパ球が減ってしまいます。すると、増えすぎた顆粒球は活性酸素を放出し、それが遺伝子にもダメージを与えてがんをつくり出してしまうのです。一方で、がん細胞をやっつけてくれるはずのリンパ球は不足状態にあるので、がん細胞の増殖が抑えられなくなり、がんを発症してしまうというわけです」と安保教授は語ります。


体温が低いと免疫力は低下する

 がん発症を考えるとき、もう一つ大事なキーワードがあります。それは、「低体温」です。リンパ球は、体温が高い状態で活発に働きます。かぜで熱が上がるのは、体温を高めてウイルスをやっつけるリンパ球を増やすため。基礎体温が高い人は、免疫力が高いのですが、低い人は、免疫力が低下して病気になりやすいのです。なぜでしょうか。安保先生は、こう指摘します。
 「自律神経と体温にも、密接な関係があります(グラフ)。交感神経が優位になりすぎると、血管が収縮して血流が悪くなり、体温も低下してしまうのです。体のなかで、がんができやすいのは、冷えたり血流が悪い場所です。たとえば女性に乳がんが多いのは、乳房が突き出ているので血液が届きにくいから。また、ストレスで胃が痛む人は、胃の血流障害を起こしやすく、胃がんを発症しやすいのです。
 反対に、楽をしすぎている状態、つまり副交感神経が優位過剰でリンパ球が多すぎる人でも体温が低下してがんを発症することがあります。血管が開きすぎて血流障害を招くうえ、運動不足で代謝熱が低下し体温が低くなるからです。このタイプは肥満の人に多く見られます」


グラフ:自律神経と体温の関係
  出典:『免疫進化論』(安保徹著)


あなたのがんの原因はなんですか?

 さて、がんを経験された方は、発症前の自分を振り返ってみてください。なにか思い当たることが、あるはずです。自分の生き方が偏っているなんて思いもしなかった私も、発症前に、冷えが原因と思われる月経困難症や不妊症というトラブルを抱えており、体温は35.7℃前後という状態でした。夜中まで仕事をしていたことも多かったし、ストレス解消方法はもっぱらお酒…。なんと体によくない生活だったことか。
 安保先生は、「日本人は、まじめで頑張り屋さんが多いから、自分では普通に生きているつもりでも、知らないうちに無理してしまっているんですよ。とくに男性と同じように働いている女性は、頑張り過ぎてしまいがちですね」と言います。
 皆さんも、がんになった原因が思い当たったでしょうか? がんになった原因を、きちんと知ること。それが、がんを治す第一歩なのかもしれません。次回は、がんを治すための心の持ち方、三大療法はどこまで受けるべきかについて、お聞きします。


<安保先生にもう一言・・・>

「早期発見・早期治療ががんをつくる」

 がんが早期で見つかる。これは一見、ラッキーであるようなイメージがありま
 せんか?私も、「早めにがんを見つけて治療できてよかった」と思っていました。
ところが安保先生は、「早期発見が、がんをつくるのだ」と指摘します。
 「私たちは、無理して疲れると休むでしょ。発がんしていたとしても、休養する
ことによって免疫が上がり、がんは消えるものなのです。でも、そのタイミング
で検診したりすると、早期がんが見つかって、がん患者にされてしまう。それに、
がん検診の場合、結果が出るまで、誰でも不安になります。それが大きなストレ
スになって、がんをつくり出してしまう」というわけです。
 さらに安保先生は、「実際に、がん検診を受けたグループのほうが、発がん率が
高いというデータも多いのです。でも、そういうデータは、あまり日の目を見な
い。がん検診をする人が増えて、早期発見で見つかっても、がん患者は減らず、
かえって増えるばかりだという事実が、がん検診には意味がないということを物
語っていると思います」と話しています。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受ける。さらに放射線治療を受けて、現在はホルモン剤を服用中。

提供:株式会社サン・メディカ


安保徹さん

安保徹(あぼ とおる)1947年青森県生まれ。89年に胸腺外分化T細胞の存在を発見し、96年に白血球の自律神経支配のメカニズムを解明。その後も国際的な場で研究成果を発表し、免疫学の最前線で活躍を続ける。著書に『免疫革命』(講談社インターナショナル)『医療が病いをつくる』(岩波書店)など多数。がん患者向けの講演でも全国を飛び回っている。


第2回
がん患者さんのための『免疫とがん』講座
第2回 『免疫力を上げればがんは退縮する』

がんを治すためにはリンパ球を減らし体に
ダメージを与え免疫を抑制する治療は受けない、
そして生活パターンを見直すこと・・・

■取材協力:新潟大学大学院医歯学総合研究科
安保徹教授

がん患者さんのための「免疫とがん」第1回では、偏った生き方が交感神経の緊張をもたらし、がんを引き起こすことをお伝えしました。がんは手術で病巣を取り去ったからといって安心できる病気ではありません。がんになった原因を知り、生き方を根本的に変えることが必要なのです。今回は、がんを治すために不可欠な免疫力アップの方法と、三大療法をどこまで受けるべきかについて、新潟大学大学院医歯学総合研究科の安保徹教授にお聞きします。

■取材・文:
メディカルライター・内山 遥(うちやま はるか)
乳がん闘病中

■がんにならないのはリンパ球が働いて、
がん細胞を攻撃するからです

 がんは、一度できたらどんどん大きくなる…そう思い込んでいませんか?
「健康な人の体にも、毎日、がん細胞は生まれています。それでも、がんにならないのは、リンパ球が働いて、がん細胞を攻撃するからです。がんになった人でも、免疫力が上がってリンパ球が増えれば、がんは自然退縮するものなんです」(安保先生)
リンパ球の数が1800〜2000個/mm3あれば、がんは自然退縮するそうです。(自分のリンパ球の数は血液検査でわかります。白血球の数に、リンパ球の%を掛けて算出してみてください)
 ところが、リンパ球を確実に減らしてしまうものがあります。それが三大療法です。
「三大療法は、どれもリンパ球を減らす治療法です。とくに大手術を受けたり、放射線治療や抗がん剤治療を徹底的に受けると、リンパ球は急激に減ってしまい、元に戻るのに時間がかかるため、再発のリスクが高まってしまうのです」(安保先生)
 ただし三大治療が、すべて間違っているというわけではありません。
「三大療法のなかでは、早期がんを手術するのが、最も負担が少ないでしょう。抗がん剤も、急性リンパ性白血病のように、抗がん剤によく反応するがんなら、体力の許す範囲で使うのはかまいません。一番よくないのは、放射線治療です」(安保教授)
抗がん剤治療であれば、治療をやめるとリンパ球が上昇しますが、放射線治療を受けると、その後、リンパ球の減少が長く続いてしまいます。つまり、がんと闘う力を最も削いでしまう治療法なのです。放射線治療を受けていいのは、通過障害がある消化管のがんや、脳腫瘍で圧迫による麻痺があるなどの場合だけで、それも最小限にすべきであると、安保教授は言います。
 今、治療中の方は、ドキッとされたかもしれませんが、大丈夫・・・。
「三大治療を短期間受けると、むしろそれを跳ね返そうとする力が湧いてくるものなんです。けれども、徹底的に治療を受けてしまうと、余力のない人は、過酷な治療に負けてしまう。体に悪いことをして病気が治るなんておかしいと気がついて、早めに引き返してほしいものです」(安保先生)
 とはいえ、治療をやめたいなどと言い出したら、主治医との関係が悪くなってしまうのではないか、と悩む人も多いでしょう。医師は、自分の治療方針に従わない患者には、時として冷たいものです。
「治療をやめたら、がんが大きくなるかもしれない」とか「もう知りませんよ」などと、平気で言い放つ医師も少なくありません。そういう心ない言葉は、私たちがん患者にとって、非常につらいものであり、大きなストレスになって免疫力も低下してしまうのです。  
「そんなときは、主治医との関係を悪くしないため、体力が弱ってしまったから、治療を中断したい。体力がついたら、またぜひお願いします。先生が頼りですと、けんか別れしないように伝えることも必要でしょう」 
 安保先生は、アドバイスします。


ストレスを避け、副交感神経を刺激すればがんは治る

 さて昨年11月に放射線治療を終えた私は、主治医に「これで元の生活に戻ってもいいですか?」と聞きました。すると「そうですね。戻っていいですよ」という言葉が返ってきました。同じようなことを言われた方は、多いと思います。でも、がんを治すには、元の生活に戻ってはいけないのです。
「がんになってしまった人は、がんを発症するような生き方をしていたということ。だから、がんを治すには、生き方を根本的に変えなくてはいけません」
 安保先生は、次のような『がんを治す4か条』を提唱しています。
「明るく前向きな気持ちで、この4か条を実践すれば必ず体調はよくなり、がんと闘う力が高まります」(安保先生)

がんを治す4カ条
1. 生活パターンを見直す
2. がんの恐怖から逃れる
3. 免疫を抑制するような治療を受けない、受けている場合は止める
4. 副交感神経を刺激して免疫力を高める

1.生活パターンを見直す
 がん発症の最大の原因であるストレスを、少なくするような生活パターンに変えることが大切です。最もよくないのは、働きすぎること。夜遅くまで働いていると、交感神経緊張状態が続き、免疫力は落ちるばかりです。「仕事も家事も7割でいい」とすれば、ストレスは、たまりません。

2.がんの恐怖から逃れる
「恐怖は、最大のストレスとなります。恐怖から逃れられないと、交感神経の緊張状態が続き、免疫力を上げることができません」(安保先生)
がんは決して怖い病気ではなく、自分で治せる病気です。免疫力が上がれば、がんは自然に退縮していくものだと理解することが、治癒につながります。

3.免疫を抑制するような治療を受けない、受けている場合はやめる
 前述したように、三大療法は、がん細胞を攻撃してくれるはずのリンパ球を減らして、免疫を抑制してしまう治療法です。体に負担がかかるような治療を受けている人は、今すぐ中断してみてはいかがでしょうか。

4.副交感神経を刺激して免疫力を高める
 副交感神経を優位にすると、がん細胞を攻撃するリンパ球が増えます。副交感神経を刺激する方法としては、玄米菜食、適度な運動、体を温める、笑うなどの方法があります。
次回は、副交感神経を優位にして免疫力を高めるための具体的な方法について、お聞きします。


<安保先生のお話を聞いて>
三大治療をすべて受けてしまった私にとって、今回のお話は少なからずショックでした。とくに放射線治療を計25回も受けているので、私の免疫力は、まだ低い状態かもしれません。今後は、「がんを治す4か条」を守り、免疫力を高める生活を心がけたいと思います。
それから、ホルモン剤の服用もやめることにしました。ホルモン依存性の乳がん患者の場合、手術や抗がん剤治療の後に、2〜5年、ホルモン剤投与を受けるのが標準治療となっています。ホルモン剤投与により、再発リスクが低減するというデータがありますが、その一方で、子宮内膜がんのリスクが高まることもわかっています。
他のがんのリスクを高めるような治療法は不自然だし、体が必要に応じて分泌している女性ホルモンを、無理やり止めたり、働きを抑えてしまうことは、かえって体によくない…そう感じたのです。とりあえず主治医には、服用していると言っておきますが…。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受ける。さらに放射線治療を受けて、現在はホルモン剤を服用中。

提供・株式会社サン・メディカ



安保 徹(あぼ とおる)教授

1947年、青森県生まれ。89年に胸腺外分化T細胞の存在を発見し、96年に白血球の自律神経支配のメカニズムを解明。その後も国際的な場で研究成果を発表し、免疫学の最前線で活躍を続ける。著書に『免疫革命』(講談社インターナショナル)『医療が病いをつくる』(岩波書店)など多数。がん患者向けの講演でも全国を飛び回っている。

第3回

がん患者さんのための『免疫とがん』講座
第3回「再発を防ぐための生活術」

がん患者さんのための「免疫とがん」第2回では、三大療法をどこまで受けるべきか、がんを治すために不可欠な免疫力アップの方法(がんを治す4か条)についてお伝えしました。今回は、再びがんにならないための生活術、つまり副交感神経を優位にして免疫力を高めるための具体的な方法について、新潟大学大学院医歯学総合研究科の安保徹教授にお聞きします。

■取材・文:
メディカルライター・内山 遥(うちやま はるか)
乳がん闘病中


取材協力

新潟大学大学院医歯学総合研究科
安保 徹教授

●体によい物を食べて腸管を刺激する●

 私は、がんになる前、一人で食事をすることが多かったせいか、食事の内容が偏っていることが多く、短時間で食事を済ませていました。ひどいときには、アルコールとおつまみだけで、夕食を済ませてしまうこともありました。
「働きすぎたり悩みすぎたりしている人は、甘いお菓子やお酒がほしくなります。砂糖やアルコールは、副交感神経を優位にする食物なのですが、ストレス過多で交感神経が緊張しているときには、体が自分を守ろうとして副交感神経を優位にするものを食べて、バランスを取ろうとするのです」(安保先生)
 毎日、お酒が飲みたい、甘いものがほしいという人は、偏った味覚をストレスから来る危険サインと考え、無理な生き方を見直す必要があると言えそうです。
免疫力を高めるには、副交感神経を積極的に刺激することが大切です。とくに腸管は、副交感神経によって支配されているので、体によいものを食べて適度に消化管を刺激してやると、リンパが増えて免疫力がアップするのです。安保先生が、がんの患者さんに勧めるのは玄米菜食です。玄米は、ほとんどの栄養素を含み、とくに食物繊維がたっぷり含まれているのが優れている点だと言います。
「体調が悪いと便が黒っぽくなるのですが、玄米に、おからや切干し大根、ごぼう、海藻、きのこなど、食物繊維の豊富なおかずを日常的に食べていると、便の状態が明らかに変わり、黄金色になります。黄金色の便がでているときは、腸のなかでビフィズス菌が増えて酸性になり、腐敗菌が少なくなるので、腐敗臭もなくなるのです」(安保先生)
玄米菜食だと、たんぱく質が不足しないかと考えがちですが、野菜にも玄米にも、たんぱく質は含まれています。たとえば玄米には6.8%、キノコ類は90%以上が水分にもかかわらず、2〜4%ほどのたんぱく質が含まれています。だから、意識してたんぱく質をたくさん摂らなくても大丈夫。肉類を多く食べると、かえって腸内環境が悪化しやすく、便の状態も黒っぽくなるので、たんぱく質を摂るなら豆類や大豆製品がおすすめです。
20年ほど前、旧厚生省から「健康のために1日30品目食べましょう」というスローガンが発表されました。今でこそ健康指針から外れていますが、毎日いろいろなものをバランスよく食べなければいけないと、思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。
「そもそも多くの動物は、1種類のものを食べて生きてきました。コアラはユーカリしか食べないし、パンダは笹しか食べません。なのに、筋肉隆々でしょ。腸内環境がよくなって、よい腸内細菌がすみつくと、人間だっていろいろなものを食べなくても生きられるようになるのです。実際に水や青汁だけで生きている人は、日本に20人もいるそうですよ。腸内細菌を利用して生きているという感覚を持てば、いろいろな物をバランスよく食べなくちゃいけないという呪縛から逃れられてラクだし、自然に少食になります。ただし急に少食にすると、空腹を感じて、それがストレスになるので、少しずつ慣らしたほうがよいですね」(安保先生)
 ちなみに安保先生の毎日の食事は、玄米と野菜がメイン。たまに肉料理を食べる程度だということですが、100歳を過ぎたら、水分だけで生きることに挑戦しようと考えておられるそうです。
 食事と並んで大切なのは、入浴と運動です。入浴と運動によって体温が上昇し、免疫力が上がるからです。入浴は、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがコツ。ただし体力が落ちている人は、負担が大きくなるので、入浴を控え、足湯や湯たんぽで体を温めるようにしましょう。
 運動は、特別なスポーツをしなくても、ウォーキングや軽い体操などで十分。ただし必ず毎日意識して、体を動かすようにしましょう。激しく運動してしまうと、肉体的なストレスで交感神経が優位になってしまうので、疲れない程度にとどめておくことが大切です。



●再発したくないなら、検査を受け過ぎないこと●

がんの治療を、ひとまず終えた方の多くは、3〜4か月に1回とか、6か月に1回のペースで、検査を受けていることでしょう。検査を受け、結果を待っている間、「再発していないだろうか」という不安にかられることはありませんか?
「検査の結果、異常なしといわれるとほっとしますよね。ほっとするということは、その間、ものすごい不安を感じているということなんです。検査をひんぱんにすればするほど、怯える回数が増えて交感神経過緊張になるから、かえって再発しやすくなってしまうのです。健康な人だって、年に何回も検査したらがんになりますよ。ましてや治療後、体が弱っている人は、たびたび検査を受けてはいけないのです」(安保先生)
安保先生も、若い頃は丹念に、いろいろな検査を受けていたそうです。けれども、偏った生き方ががんを発生させるとわかってからは、まったく検査を受けなくなったと言います。
「生き方を変え、体にいいことをして、検査を受けずに自分で治そうと決意した人は、再発しない傾向があります。どうしても不安な人は、免疫療法を行っている医師を探して、ときどきリンパ球比率などを調べてもらうのもいいでしょう。もし、比率が落ちているようなら、もっとしっかり玄米菜食や体操などをやろうなどと、日頃の生活を見直すきっかけにすればいいのです」(安保先生)
それと大事なことは、笑うこと。笑うと気分がリラックスして副交感神経が刺激されますし、リンパ球の一種のナチュラルキラー細胞が増えて、がん細胞を攻撃する力がアップすることが明らかになっています。
安保先生は、「がんの再発を防ぎたい人は、1日2回、鏡を見て笑うようにしましょう。鏡を見ることによって、笑っている自分を意識できますから」と勧めます。
また、「生き方を変えるいい機会になった」と病気に感謝している患者さんは、よくなる傾向が強いそうです。「感謝」は、怒りや恐怖の対極であり、副交感神経優位の状態。免疫力も、上がりやすくなるわけです。どうしても感謝の気持ちをもてないという人は、深呼吸をしたり音楽を聴くなど、意識してリラックス状態をつくるようにすると、副交感神経を刺激することができます。
「私は、がんの患者さんをたくさん見てきましたが、治った人はみな、何か一つだけに頼るのではなく、運動して体を温め、玄米菜食をして、仕事のやり方も見直すなど、生活を変えています」(安保先生)
これまでの人生を見直し、生き方を変える。生活全般を見直し、体によいと感じたことは、何でも取り入れてみる。遠回りのようですが、案外がんを治す近道なのかもしれません。


▼毎日の生活で心がけたいこと

○ 睡眠時間を十分とる(疲れたときは8〜9時間)
○ 食事の基本は玄米菜食
○ 適度に体を動かして体を温める
○ 感謝して笑う


<安保先生のお話を聞いて>

放射線治療を終えて3か月。この間、玄米、手づくりのニンジンジュースなど、体によさそうなことをはじめました。ゆったりと入浴し、毎日少なくとも30分は体を動かすようにしています。仕事も再開しましたが、無理をしない、夜は仕事をしない、この二つを守っています。抗がん剤治療で抜け落ちてしまった髪もようやく伸びて、“自毛デビュー”も済ませました。
先日、久しぶりに病院に行って血液検査を受けました。その結果、白血球数は3300と少なめでしたが、リンパ球率は32.3%とまずまずでした。主治医からは、4月に超音波検査を受けるように言われたので、もう少したってから受けたいと答えたのですが、有無を言わさず予約を取るように言い渡されてしまいました。
「わかりました」と軽やかに返事をしたものの、予約は取らずに帰宅。多分、もう主治医にお会いすることはないでしょう。けれども、医師に頼らない道を選んだ以上、これからは自分の健康は自分で守らなければなりません。毎日、鏡で笑顔をチェックしながら、前向きに生きていこうと、思いを新たにしました。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受ける。さらに放射線治療を受けて、現在はホルモン剤を服用中。
提供:株式会社サン・メディカ



乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』


和合治久教授

1950年長野県生まれ。東京農工大学大学院修了、京都大学にて理学博士号を取得。現在は埼玉医科大学保健医療学部健康医療科学科・学科長。日本における免疫音楽医療研究の第一人者であり、CD『最新・健康モーツァルト音楽療法』シリーズ(ユニバーサルミュージック)の監修も手がける。著書に『モーツァルトを聴けば病気にならない!』(KKベストセラーズ)など。
第4回

音楽療法その1
『音楽療法が体に与える影響と、
がんの再発防止に効く仕組み』


「モーツァルトの音楽には、ゆらぎ効果と倍音の
要素がバランスよく豊富に含まれているのです」


取材協力

埼玉医科大学保健医療学部
健康医療科学科・学科長 和合治久教授


がんの再発を防ぎたい! その思いから、いろいろな方法を試している方も多いでしょう。けれども、患者さんによって向き不向きもあれば、経済的に無理な場合もあります。私の場合も、これからがんと長く付き合っていかなければなりませんから、できるだけ効果的で、元手もかからない方法があれば試してみたいと思っていたところです。そこで、がん患者さんのための『免疫とがん』講座では、誰でもすぐに始められる「音楽療法」を3回にわたって取り上げます。すでに音楽療法士と呼ばれる専門家が、全国の医療機関で音楽療法による治療を行っていますが、がんの再発予防という目的であれば、個人でもすぐに始めることができ、手軽に続けられる方法でもあります。音楽療法の第一人者である埼玉医科大学の和合治久教授に、音楽療法が体に与える影響と、がんの再発防止に効くしくみについてお聞きしました。

■取材・文:
メディカルライター・内山 遥(うちやま はるか)
乳がん闘病中

■苦しいときにこそ音楽を聴けばよかった

皆さんはふだん、どんな音楽を聴いていますか?
私は自宅で原稿を書いているときは、必ず音楽を流しています。わが家から1日中音楽が聴こえるとしたら、それは締め切りが迫っている時期だとわかるでしょう。日本語の歌詞の入った音楽を聴くと、集中できなくなることがあるので、仕事をするときは、もっぱらクラシック音楽かクラシックギターのCD、または外国のアーチストのCDを流しています。今お気に入りなのは、村冶佳織というギタリストのCDです。
 クラシック音楽に関して、それほど詳しいわけでもなく、なんとなく聴いていただけだったのですが、最近は少し変わってきました。昨年、放映された「のだめカンタービレ」というテレビ番組にはまってしまったのです。この番組は、音楽家を目指す若者たちの物語で、随所にクラシック音楽が流れます。さっそくサントラ盤を買い、聴くようになりました。
今は、こうしていろいろな音楽を楽しんでいる私ですが、がんの治療を受けているときは、何日も音楽に触れないことがありました。とくに抗がん剤の副作用に苦しんでいるときは、音楽を聴く余裕すらなかったのです。けれども、今回、和合治久先生のお話を聴き、苦しいときにこそ音楽を聴けばよかったのだと思いました。
音楽の力によってさまざまな病気を治療し、改善させる方法を音楽療法(ミュージックセラピー)といいます。音楽による治療効果は、古代ギリシャの数学者ピタゴラスがすでに記録に残しているとか。欧米では、すでに20世紀半ばから音楽療法が本格的に研究され、実践されてきたそうです。


■音楽は私たちにどんな影響を与えるのか

和合先生が音楽療法の研究を始めたのは、13年ほどのこと。当時は音楽が体にどのような影響を与えるかについてのデータは、ほとんどありませんでした。そこで歴史をひも解いてみたところ、1957年からフランスの耳鼻科の医師であるトマティスが、モーツァルトの音楽を研究し、実際に治療に使っていたことを知ったそうです。
さて、音楽は私たちにどんな影響を与えるのでしょうか? 
「皆さんも、高い音が頭にキーンと響いたり、低い音がおなかにずしんと響いた経験があるでしょう。音の高低を示す周波数は、人間の脳から脊椎にある各骨格部位と対応しており、高い周波数の音ほど高い位置にある脳の延髄という部位に響きます(図参照)。延髄からは自律神経の副交感神経が出ており、胸椎と腰椎からは交感神経が出ているので、どんな音を聴くかによって、自律神経も影響を受けるのです。
がん細胞を攻撃する免疫細胞のリンパ球は、副交感神経に支配されていて、副交感神経が優位になると増加します。このため、副交感神経が出ている延髄を刺激する高い周波数(4000〜6000ヘルツ)に相当する音を聴くと、がんの再発防止にも役立つと考えられます。また、高周波を多く含む一定の音楽を聴くことで、痛みを緩和するベータ・エンドルフィンや睡眠物質のメラトニンが分泌されることも確認されています」(和合教授)


■なぜモーツァルトの曲が音楽療法に用いられているのか

 では、数ある音楽のなかで、モーツァルトの曲が音楽療法に用いられているのはなぜなのでしょうか。
「モーツァルトの曲には、副交感神経を刺激する3500〜4500ヘルツの高周波音が、実に豊富に含まれているのです。それだけではありません。音楽にはメロディやリズム、音程、音色、周波数以外にも、ゆらぎ、音がぶつかり合って、より高い音を生み出す倍音など、さまざまな特性がありますが、モーツァルトの音楽には、ゆらぎ効果と倍音の要素がバランスよく豊富に含まれているのです」(和合教授)
 ゆらぎとは、一定の音の規則的なパターンと、不規則なパターンが決まったサイクルで来るもの。風の音や川のせせらぎなど、自然界にもたくさんあるそうです。 
確かに川のせせらぎとか滝の音を聴くと、リラックスでき感じがします。私の実家は海辺の町にあるのですが、今も実家に帰って波の音を聴くと落ち着くし、よく眠れます。これは、ゆらぎの効果だったのでしょう。
 次回は、実際にモーツァルトの音楽がどんな影響を与えるのか。いくつかの実験結果を見ながら教えていただきます。



図:音の周波数と脊髄の対応関係 『モーツァルトを聴けば免疫力が高まる!』より


☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

私は、どちらかというと体育会系タイプで、30歳を過ぎてから地元のバレーボールチームに入り、真剣に練習に取り組んできました。そのかたわら、ゴルフにも熱中し、月に2〜3回のペースでコースを回っていました。その私が乳がんになり、手術でリンパ節を切除するかもしれないと告げられたときは、ものすごく動転しました。リンパ節を切除すると、腕がむくんだり、上がらなくなると聞いていたからです。もうスポーツは、できなくなるかもしれないと覚悟しました。
でも、今再び、バレーボールもゴルフもできるようになりました。以前の7、8割のペースではありますが、無理をしない程度に楽しんでいます。手術してから1年で、こんなに体がスムーズに動くようになったのは、術後すぐにリハビリを始めたおかげかもしれません。手術してから1、2週間は傷が痛くて思うように動きませんでしたが、看護師さんに叱咤激励され、痛みをこらえながら動かしたのを覚えています。さらに、エアロビクスのビデオを使って、毎日体を動かしていたのもよかったのでしょう。
スポーツをしているときは、病気のことも忘れて熱中できるのがいちばんいいのかもしれません。「汗を流すってこんなに気持ちがいいことだったんだ!」と感じながらスポーツを楽しんでいます。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受ける。さらに放射線治療を受けて、現在はホルモン剤を服用中。

提供:株式会社サン・メディカ


乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』


和合治久教授

1950年長野県生まれ。東京農工大学大学院修了、京都大学にて理学博士号を取得。現在は埼玉医科大学保健医療学部健康医療科学科・学科長。日本における免疫音楽医療研究の第一人者であり、CD『最新・健康モーツァルト音楽療法』シリーズ(ユニバーサルミュージック)の監修も手がける。著書に『モーツァルトを聴けば病気にならない!』(KKベストセラーズ)など。
第5回

音楽療法その2
『音楽療法は私たちにどんな影響を
与えるのか〜研究データから』


「がんを直接攻撃するNK細胞を活性化する
働きのある、インターフェロン γ という物質も
分泌されるようになります」


取材協力
埼玉医科大学保健医療学部
健康医療科学科・学科長
和合治久教授


前回は、音楽療法が体に与える影響、なかでもモーツァルトの音楽が免疫力を上げる仕組みについてお伝えしました。今回は、モーツァルトの音楽が、私たちの心身に、実際どのような影響を与えるのかについて、これまでに行われたいくつかの実験データを見ながら、引き続き埼玉医科大学の和合治久教授にお話を伺います。

唾液の分泌量は約1.5倍、
血液の循環がよくなり、体がポカポカに


 がんの再発を防ぐためには、がん細胞を攻撃するリンパ球を増やすことが不可欠です。リンパ球は副交感神経に支配されていますから、ストレスを避けて、副交感神経を刺激するような生活習慣を続けることが、リンパ球を増やすことにつながります。
モーツァルトの音楽は、副交感神経を刺激する高周波音とゆらぎ音が豊富に含まれていますが、実際に、モーツァルトの音楽によって副交感神経が刺激されていることが、数々の研究によって明らかになっています。
「モーツァルトの音楽を聴くと、唾液の分泌量が約1.5、多い人では3倍にも増えます。また血液の循環がよくなって、冷え症の人でも体がポカポカし、心拍数や血圧もすぐに安定します。体温が上昇するということは、リンパ球の働きも高まるということ。これらの兆候は、すべて副交感神経が優位になったことを示しているのです」(和合教授)
 下のグラフ1は、3人の成人女性に、モーツァルトの音楽を30分聴いてもらい、そのあとで、唾液の分泌量がどれくらい変化するかを調べた実験の結果です。聴いた後の唾液量のほうが、明らかに増えていました。また唾液中のIgA抗体の濃度を調べたところ、3人とも高くなっていました(グラフ2)。
IgA抗体とは、唾液や鼻汁、涙、胃や腸の粘膜などに多く含まれ、体表面を病原菌などから守る働きがある免疫物質で、赤ちゃんが飲む初乳にもたくさん含まれているそうです。
「がんの患者さんのなかでも、とくに消化器系のがんの方は、体内のIgA抗体産生量が少なくなっていますから、IgA抗体が増えて粘膜や体表面を病原菌から守る力が高まることは、非常に意味があることだと思います」(和合教授)
さらに実験の結果、コルチゾール(ストレスホルモン)が減ることも分かりました(グラフ3)。これは、音楽療法によって副交感神経が優位になったためです。コルチゾールは、リンパ球の働きを抑えてしまうホルモンですから、コルチゾールが減ることによって、リンパ球の機能の低下は抑えられます。
「実際に、音楽を聴いた30分後に末梢血に動員されるリンパ球をカウントすると、1.2〜1.5倍に増えます。これは、脾臓やリンパ節に定着して休んでいたリンパ球が、音楽を聴くことによって末梢血にまで集まってくるためです。しかも、がんを直接攻撃するNK細胞を活性化する働きのある、インターフェロンγという物質も分泌されるようになります。このように音楽療法を実践すると、がんを攻撃する環境が整いやすくなるわけです」(和合教授)


がんを攻撃するリンパ球の増加も明らかに・・・

現在、和合教授らのグループは、モーツァルトの音楽療法が、がん患者に対してどのような効果をもたらすか、42人の患者さんの協力のもと、研究を進めています。現在のところ、多くの患者さんに唾液の量が増える、唾液中のIgA抗体の量が増える、コルチゾールが減る、体温が上がるなどの傾向が見られているということです。
また末梢血の状態を調べたところ、多くの患者さんで、白血球のなかのリンパ球の割合が高まり、なかでもヘルパーTリンパ球が増えたということです。
「ヘルパーTリンパ球は、がん細胞の情報を受けとり、他のリンパ球にがん細胞への攻撃命令をだす免疫細胞です。いわば、司令塔として働くリンパ球であり、ヘルパーTリンパ球が増えるということは、がんを素早く見つけだし、攻撃する力が高まるということなのです」(和合教授)
和合教授らは、さらに音楽療法ががん患者さんのQOL(体調や集中力など)に与える影響についても調査しており、近いうちにデータをまとめて報告する予定ということです。


グラフ:音の周波数と脊髄の対応関係 『モーツァルトを聴けば免疫力が高まる!』より


グラフ1 聴く前と聴いた後での唾液分泌量の変化

グラフ2 聴く前と聴いた後での唾液免疫物質IgAの変化

グラフ3 聴く前と聴いた後での唾液コルチゾールの変化

☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

4月のある日、姉からメールが来ました。「1年前は大変でしたね」という内容です。メールを読んで初めて、手術を受けてから1年たったことに気づきました。
私は乳房温存術を受けましたが、このとき「センチネルリンパ節生検」という方法を併用してもらうことにしていました。センチネルリンパ節生検とは、リンパ節にがんが転移していないかどうかを術中に迅速診断する方法で、もし転移していなければ、それ以上の郭清をしなくてすみます。リンパ節郭清がなければ、入院は5日程度で済み、手がむくんだり、上がりにくくなるなど、後遺症を心配しなくていいのです。
ところが、術後、もうろうとしていた私に医師が話しかけた言葉は、「リンパ節はきれいにとりましたからね」というものでした。リンパ節を4か所調べたうち、1つだけ転移していたのだそうです。
「転移・・・リンパ節切除・・・」
医師の言葉を聞いた後はショックで、言葉もでませんでした。お見舞いに来てくれた夫や友だちに、何度も不安や愚痴をこぼしたことを覚えています。
このように1年前は、私の人生でいちばん深刻な日々を送っていたというのに、私の忘れっぽいことといったら・・・。「人間は忘れる動物だ」という言葉がありますが、今は自分の病気を忘れることがあるくらい、元気になったということなのかもしれません。


■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受け、さらに放射線治療を受ける。ホルモン剤服用を2か月でやめ、現在は、がん再発を防ぐ生活を模索しながら実践中。

提供:株式会社サン・メディカ


乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』


和合治久教授

1950年長野県生まれ。東京農工大学大学院修了、京都大学にて理学博士号を取得。現在は埼玉医科大学保健医療学部健康医療科学科・学科長。日本における免疫音楽医療研究の第一人者であり、CD『最新・健康モーツァルト音楽療法』シリーズ(ユニバーサルミュージック)の監修も手がける。著書に『モーツァルトを聴けば病気にならない!』(KKベストセラーズ)など。
第6回

がん患者さんのための『免疫とがん』講座
音楽療法<その3>
音楽療法を効果的に行うためのポイント



取材協力
埼玉医科大学保健医療学部
健康医療科学科・学科長
和合治久教授


これまで、音楽療法、とくにモーツァルトの音楽が私たちの心身にどのような影響を与えるのかについてお話を伺ってきました。今回は、効果的な音楽療法を行うにはどうすればよいのか、押さえておきたいポイントなどを、前回に引き続き、埼玉医科大学の和合治久教授に伺います。

集中して聴くことが効果をあげるポイント

音楽療法<その1>、<その2>を読んでいただき、さっそく試してみたいと思った方もおられるでしょう。そこで今回は、効果的な音楽療法を行うポイントについて、ご紹介します。
音楽療法に適した音楽には、バッハの無伴奏チェロ組曲やグレゴリオ聖歌などもありますが、やはり周波数やゆらぎ効果、倍音効果などからモーツァルトが一番だそうです。どれを選んでいいかわからないという方は、和合治久先生監修のCD『最新・健康モーツァルト音楽療法』シリーズのPART3(免疫疾患の予防<1>)、PART6(免疫疾患の予防<2>)を選ぶとよいでしょう。
「モーツァルトの音楽の周波数を分析すると、五つのパターンに分かれます。そのなかで、ストレスホルモンを減少させるとともに血行をよくし、唾液中のIgA抗体が、とくによくでる曲を集めたのが、PART3とPART6です。唾液中のIgA抗体が増加すればするほど、血液中に動員されるリンパ球も増えることがわかっていますから、この音楽を聴くことによって、免疫力アップにつながるわけです」(和合教授)
 音楽療法の効果を高めるには、何よりも集中して聴くことが大切です。BGMとして音楽を流すだけの、いわゆる音楽鑑賞と比べると、効果はまったく異なるそうです。集中度を上げるため、耳をすっぽり覆うヘッドホンを用意し、目をつぶって快いと感じる音量で聴きましょう。どうしてもヘッドホンに違和感がある、疲れてしまうという人は、静かな部屋で耳元にスピーカーを置いて聴いてもOK。このとき、体が冷えないよう、暖かい服装になり、リラックスした姿勢を保ちます。
 治療中の患者さんが、音楽療法を試すに当たっては何の問題もないとのこと。むしろ、化学療法と組み合わせることによって、相乗効果が見られた例もあったそうです。
「午前中と就寝前に、最低でも20分、できれば30分ずつ聴くようにしましょう。がん細胞を攻撃してくれる主な免疫細胞は、NK細胞とキラーTリンパ球ですが、これらの細胞が活躍するのは主に夜間です。このため、就寝前にモーツァルトの音楽を聴くことによって、脾臓やリンパ節に定着しているリンパ球がより多く動員され、がん細胞を攻撃してくれるはずです」(和合教授)


数分で唾液がじわっ・・・体温も1℃上昇

 さっそくCDとヘッドホンを購入し、実際に音楽療法を試してみました。私が試したのは、『最新・健康モーツァルト音楽療法』シリーズのPART3です。上着をはおり、靴下をもう1枚はいて、いつもくつろぐ場所でヘッドホンを装着し、音楽に集中。軽快なクラリネットの音が、耳に心地よく響きます。
すると、5分もたたないうちに唾液がじわっとでてきました。また、30分後に体温を測ると、聴く前より1℃上昇し、36.0度になっていました。通常、私の体温は35.7〜35.9℃くらいで、36℃を超えることはめったにありません。なのに、30分音楽を聴いただけで、簡単に36℃まで上がったことは驚くべきことです。体温が高くなれば、それだけリンパ球が増え、がんに対する攻撃力が高まったということ。やった!
「大切なのは、毎日続けること。絶対治してみせるという意識を持ちながら真剣に聴くと、それだけ効果も高まります。また、音楽療法と同時に免疫力を高める生活習慣を実践することも不可欠です。7時間程度は睡眠をとり、間食を避け、空腹の時間をつくること。キノコ、バナナ、海藻、ニンニクなど、免疫を高めてくれる食材を意識的にとることなどを心がけましょう」(和合教授)
音楽療法は、誰にでも手軽にでき、副作用もありません。元手もほとんどかからないのも、うれしいところです。1日1時間ほど音楽を聴くだけでリンパ球が増えてくれるなら、私たちがん患者にとってはありがたいことですね。あなたも、音楽療法を生活の一部に取り入れてみてはいかがでしょうか。

<免疫力を高める音楽の聴き方>


☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

自分が、がんだとわかり、手術を受けることになったとき、 それを誰に打ち明けようかと悩んだことがあります。同居している家族は夫だけなので、夫には一番先に話しましたし、2人の姉妹にもすぐに打ち明けました。仕事関係では、ごく親しい方にだけ話し、ほかは「体調をくずしたのでしばらく休みます」という報告だけにしました。
悩んだのは、母に打ち明けるかどうかということです。母は現在70歳で元気に暮らしていますが、血圧が高く、かなりの心配性です。7年前に夫(つまり私の父)を肝臓がんで亡くしていることもあり、私ががんだと知ったら、具合を悪くしてしまうのではないか・・・そう思いました。 姉妹に相談すると、やはり2人とも「言わないほうがいい」という意見。そこで、母には隠し通すことになりました。
私が実家に帰るときは姉妹が集まり、それとなく、ばれないようにカバーしてくれるのです。お正月に帰ったときは、抗がん剤の副作用で脱毛してしまったため、ウイッグをかぶっていましたが、入浴時なども姉妹の連携プレーで切り抜けました。母はいまだに、私ががんになったことに気づいていません。
先日、母が畑で育てたソラマメが送られてきました。母にお礼の電話を入れると、「元気なんでしょ?」と聞かれました。これは母の口癖で、電話をするたびに必ず聞かれるのです。私はもちろん、「元気だよ」と答えました。これからも母を心配させることのないよう、本当に元気にならなければ・・・。そして、10年後、「お母さん、私、がんだったんだよ」と笑って言える日が来ればいいなー。そう思いながら、ソラマメをゆでました。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受け、さらに放射線治療を受ける。ホルモン剤服用を2か月でやめ、現在は、がん再発を防ぐ生活を模索しながら実践中。

提供:株式会社サン・メディカ


乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』
高柳和江先生

<プロフィール>
日本医科大学医療管理学教室准教授
高柳和江先生
神戸大学医学部を卒業し、徳島大学大学院にて博士課程修了後、クウェートの国立アル・サバー病院などで小児科外科医として勤務。94年に「癒しの環境研究会」を発足し、代表世話人を務める。2002年には高齢者の尊厳ある生をサポートする「21世紀癒しの国のアリス」を立ち上げる。一般向けの著書にベストセラーとなった『死に方のコツ』(飛鳥新社)、『ドクター和江の「元気な病人」になる秘訣』(海竜社)など多数。
第7回

『笑って免疫力を高めるーその1 笑いの効能』

取材協力:日本医科大学准教授
高柳和江先生


「笑ったら気分がよくなった」とか、「大笑いしたら悩んでいることがばかばかしくなった」という経験を持つ人も多いはず。「笑い」には、さまざまな効能があることが知られていますが、がんの予防や再発防止にはどんな役割を果たしてくれるのでしょうか。笑いを引き出し、自然治癒力を高める「笑い療法士」を育成し、医療の場に笑いによる癒しを広げようと活動されている日本医科大学准教授の高柳和江先生に、笑いの効能についてお話を伺いました。

■取材・文:内山 遥(乳がん闘病中)

笑うことで副交感神経にスイッチが入り
NK細胞が活性化される

皆さんは、毎日笑っていますか?私は自分をおしゃべり好きで、明るい人間だと思っているのですが、自宅で仕事をしているということもあって、気がつくと夕方まで誰とも会話していない!なんて日もたまにあるほど。夜家族と話せばいいじゃない…と言われそうですが、夫は出張が多く、週の半分は帰ってきません。
でも、週末、夫と過ごしていると、何度も笑っていることに気が付きます。だって、夫は食事に行けば、店の人を笑わせずにはいられないような人だから・・・。「つまらなそうに仕事をしている人ほど笑わせたくなる」と彼は言います。
落ち込んだときでも、何かの拍子で大笑いすると、気分が軽くなったり、悩んでいることを忘れている自分がいます。その点では、夫に感謝、感謝の日々です。
笑うということは、私たちの体にどんな影響を及ぼすのでしょうか。日本医科大学准教授の高柳先生は、「心と体は密接につながっていますが、両者をつなげているのが自律神経です。自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、笑うと副交感神経にスイッチが入り、それによってリンパ球の中のNK(ナチュラル・キラー)細胞が活性化されるのです」と話します。
笑うことが免疫に与える影響について、高柳先生は、高圧酸素室を使った実験をされています。MRIやCTの検査では、多くの人が息苦しさや重圧を感じるものです(私もそうでした)が、高圧酸素室は、それより密閉した空間だそうです。
この実験では、10人の学生さんに1時間高圧酸素室に入ってもらい、NK細胞活性値を測定したところ、入る前より下がってしまいました。一方、同じ部屋で、やはり1時間、お笑いのビデオを見て過ごしてもらった10人は、NK細胞値が3割もアップしたというのです(グラフ1)。
「NK細胞は、体内に発生したがん細胞を直接攻撃してくれる免疫細胞です。NK細胞の活性を、いかに高めるかが免疫力アップのカギになるのですが、高圧酸素室のような過酷な条件の下でも、笑うことでNK細胞活性値は上がります。NK細胞の活性値にはもともと個人差があって、女性より男性のほうが、お年寄りより若い人のほうが高い傾向にあります。がんの患者さんでも、高い方もいれば低い方もいて、同じお笑いのビデオを見ても、上がり方はまちまちなのですが、笑うことによって必ず活性値は上がり、免疫力は向上します」(高柳先生)


笑い療法で進行がんの90歳の女性が
元気になったケースも

高柳先生が代表世話人となっている「癒しの環境研究会」では、2005年から「笑い療法士」の認定をスタートしました。応募者は、2日間にわたる講習とトレーニングを受け、認定されます。年に1回行われる講習には、医師や看護師など医療に携わる人はもちろん、笑いがもつ癒しに興味を持った人が全国各地から集まるといいます。
2007年6月に行われた発表会では、新たに76名が加わり、計214人の笑い療法士が活躍の場を広げています。さらに、11月25日に行われる認定発表会では、新たに80余名が認定され、笑い療法士は300人を越える予定だということです。
「笑い療法士は、笑いで患者さんの自己治癒力を高め、健康な人の発病を予防するという目的で作られました。面白いパフォーマンスで人を笑わせるのが、目的ではありません。患者さんの多くは、笑いを封印してしまっています。それを引き出して、心を開いていただき、ついにげらげらっと笑っていただく。それが笑い療法士の仕事なのです」(高柳先生)
最近、笑い療法士の2期生から、うれしい報告があったそうです。この方は、神奈川県の開業医のA先生。高血圧で以前からA先生に診察を受けていた88歳の女性が、2年ほど前からだんだん食欲がなくなり、貧血がひどくなったため、A先生が内視鏡で検査をしました。
すると、胃に腫瘍が見つかり、生検を行った結果、進行性の腺がんだったそうです。A先生が紹介した大学病院では、手術を勧められましたが、「88歳にもなって胃を切るのはいや!」と、彼女は家に帰ってきてしまったのです。そこでA先生は、少しでも元気になってもらいたいと考え、この女性に笑い療法を試したのです。
笑い療法をスタートして1年7か月。普通であれば、がんがさらに進行しているはずなのに、90歳になった彼女は、目に見えて元気になってきたといいます。そこでA先生が内視鏡で胃を検査してみると、がんは、あとかたもなく消えていたのだそうです。大学病院で検査しても、結果は同じでした。
「この例は、とても劇的で、100万人に1人のケースだとがんの専門医もおっしゃっていましたが、90歳の方でも笑うことで見事に元気になれる。笑いには、それだけの効果があるのです」(高柳先生)


グラフ:高圧酸素室に入る前と後のNK細胞活性値の変化
(お笑いのビデオを見て過ごしたグループ)


☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

 夫の母親も今、子宮体がんの治療のため入院しています。彼女は日頃から世話好きで、困っている人を見ると放っておけない人。入院してからも同室の患者さんの悩みを聞いてあげたり、励ましたりしていました。趣味の絵手紙を病室に持ち込むと、同室の患者さんはもちろん、周りの病室の患者さんにも絵手紙が大流行。やがて病院のラウンジには、絵手紙のギャラリーが設けられるようになったのです。病院なので、水彩絵の具ではなく色鉛筆で描くのですが、なかなかの力作が展示されています。
 同室の患者さんで、子宮がんと告知されてから数日、カーテンを締め切り、ベッドの上で1日中じっとしていた方がいました。夜になると、時折すすり泣きも聞こえたそうです。その患者さんにも、絵手紙の流行がようやく届いたのでしょう。ある日、おいしそうなぶどうを描いている姿を目にしました。真剣なまなざしで、一心に鉛筆を動かしています。
その姿を見て、入院中であっても、なにか夢中になれるものを見つけることは大切だと感じました。
絵手紙にはお手本がなく、自分が感じたことを感じたままに書けばよいのだそうです。添える言葉も相手のことを思い、浮かんだ言葉を書けばよいのだとか。病院のギャラリーに展示されている絵手紙には、こんな言葉がありました。
「元気をもらい、元気をあげる」「小さなしあわせ、感じます」

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受け、さらに放射線治療を受ける。ホルモン剤服用を2か月でやめ、現在は、がん再発を防ぐ生活を模索しながら実践中。

提供:株式会社サン・メディカ



乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』
高柳和江先生

<プロフィール>
神戸大学医学部を卒業し、徳島大学大学院にて博士課程修了後、クウェートの国立アル・サバー病院などで小児科外科医として勤務。94年に「癒しの環境研究会」を発足し、代表世話人を務める。2002年には高齢者の尊厳ある生をサポートする「21世紀癒しの国のアリス」を立ち上げる。一般向けの著書にベストセラーとなった『死に方のコツ』(飛鳥新社)、『ドクター和江の「元気な病人」になる秘訣』(海竜社)など多数。
第8回

『笑って免疫力を高めるーその2
生活の中に笑いと感動を』


取材協力:日本医科大学准教授
高柳和江先生


「笑ったら気分がよくなった」とか、「大笑いしたら悩んでいることがばかばかしくなった」という経験を持つ人も多いはず。「笑い」には、さまざまな効能があることが知られていますが、がんの予防や再発防止にはどんな役割を果たしてくれるのでしょうか。笑いを引き出し、自然治癒力を高める「笑い療法士」を育成し、医療の場に笑いによる癒しを広げようと活動されている日本医科大学准教授の高柳和江先生に、笑いの効能についてお話を伺いました。

■取材・文:内山 遥(乳がん闘病中)

自分に合った笑いを見つけよう

最近、テレビでお笑い番組を見ていると、1人を集中していじめたり、突き飛ばしたり、何度も頭を叩いたりする場面が見受けられます。私は、そういう番組を見てもなかなか笑えません。けれども、そういう番組が好きで笑える人も多いでしょう。
「ブラックユーモアや毒舌を笑い飛ばせるのは、元気な人。弱った人や感受性の強い方の中には、耐えられない方もいます。笑える対象は人によって違いますから、快く笑えるものを自分で見つけるのがいちばん。お笑い番組や落語だけでなく、愉快な友人とおしゃべりするのもいいでしょう。自分に合った笑いを探す過程もまた大切なのです」と日本医科大学准教授の高柳先生は話します。
 大笑い、苦笑い、含み笑い、微笑み、作り笑い…。笑いには、なんといろいろな種類があるのでしょう。どんな笑い方でも、作り笑いでさえも免疫力は上がるそうですが、効果的なのは、積極的に体を使って笑うこと。
高柳先生が行った実験では、「ただ笑ったグループ」、「お笑いを聞いて笑ったグループ」、「もぐらたたきゲームをしながら笑ったグループ」のうち、いちばん免疫力がアップしたのは、もぐらたたきをしたグループでした。
つまり、体を使って腹筋を動かし、涙が出るくらい大笑いをするのが、とても効果的というわけです。大笑いは、免疫力を高め、痛みを和らげる効果も高めます。ちなみに、笑うことで、強直性脊椎炎という難病を克服した作家のノーマン・カズンズ氏は、20分大笑いすることによって痛みが2時間消えると著書に記しています。


達成感を伴う笑いは効果絶大
幸せな気持ちになれる

大笑いもよいのですが、高柳先生がとくに大事にしているのは、「スピリチュアルな笑い」だそうです。
「オリンピックで水泳の北島選手が1位でゴールしたとき、柔道のヤワラちゃんが金メダルを取った瞬間、ガッツポーズをしながら笑いますが、あれがスピリチュアルな笑いです。オリンピックとまではいかなくても、たとえば、病気で歩けなかった患者さんが、回復して歩けるようになれば笑顔になりますよね。このように、達成感を伴って心から笑ったとき、人の脳のなかでエンドルフィンやエンケファリンという脳内モルヒネが分泌され、とても幸せな気持ちになれるのです」(高柳先生)
 私はスポーツが大好きで、バレーボールのチームに入っています。昨年、乳がんの手術を受けたときは、もう二度とできないだろうとあきらめていましたが、リハビリがうまくいって(手術をしてくれた先生の腕も素晴らしかった)、1年後、ボールに触れたときの感動、試合に出たときの興奮を、私は忘れることができません。
多分あのとき、私の脳から脳内モルヒネがたくさん分泌されていたのでしょう。バレーボールができたことが自信につながり、まもなく仕事も本格的に再開。今では、病気になる前と同じくらい、活動的な毎日を送ることができています。
 高柳先生のお話を聞いて、病気になったからといって、何かをあきらめる必要はないのだと思いました。やりたいことがあったら、それに向かって進む。目標のたとえ50%であっても、そこに到達できたら、あなたの脳から脳内モルヒネがどっと出るはずだから・・・。
 高柳先生は「1日に5回笑って、5回感動して!」という「笑いの処方箋」を、患者さんに渡しています(表1)。1日に5回も笑うなんて難しいのでは?とお聞きしたところ、高柳先生は、「そんなに難しくないわよ。あなたも、さっきから何度も笑ってらっしゃるでしょ。“笑わなくては…”なんて構えることはありません(笑)」と答えてくれました。
そうか。日常生活のなかにも、笑えることは多いはず。それを探す過程だって、想像してみると、なんだか楽しくなりそう。いつも朗らかで笑わせてくれる人が近くにいたら会いにいくのもいいし、電話をするだけでもいい。主治医や看護師さんを笑わせる作戦を練るのも、面白そうです。
そうやって笑っているうちに、笑うことが癖になるようなら、もうがんは治ったも同然!かもしれません。


笑いの処方箋


癒しの研究会

患者の自然治癒力を高めるサポート役として、安心する、気分がよくなる、病気に打ち勝つ勇気がわいてくるような「癒しの環境」をつくりたいと、94年に設立された研究会。医療従事者、病院をつくる建築家、アーティスト、患者など、いろいろな立場の人が集まり、日本の医療環境を向上させるべく活動を行っている。主な活動は国内外への病院見学会や、年3回の研究会、「笑いの療法士」認定など。2008年3月1日から2日間、秋田にて「第8回 癒しの環境研究会全国大会」が行われる予定。
http://www.jshe.gr.jp/

☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

 残暑とは名ばかりの、本格的な暑さが続いています。がん患者にとって「冷え」は免疫力を下げる大敵です(くわしくは連載第1回をご覧ください)。そのため、暑くてもなるべく冷房を使わないよう心がけてきましたが、さすがに、室温が30度を超える日は、熱中症になりそうで、冷房を使わずにはいられません。ただし、こまめに温度設定を変えたり、扇風機を併用して体が冷えないようにしています。また、温かい飲み物を飲んだり、入浴時は湯船にゆっくり浸かり、体の芯を温めるようにしています。
 もう一つの敵は、紫外線です。紫外線を浴びると、体内で活性酸素が大量に発生し、がん発生の原因となるからです。私はがんになってから、日焼け止めクリームを塗り、なるべく長袖を着て、日傘を差して外出するようにしています。小さなことかもしれませんが、再びがんを寄せ付けないためには、日常の積み重ねが大事だと思うのです。
 秋風が吹き始めるまであと少し。いろいろ工夫して、なんとかこの酷暑を乗り切りましょう。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受け、さらに放射線治療を受ける。ホルモン剤服用を2か月でやめ、現在は、がん再発を防ぐ生活を模索しながら実践中。

提供:株式会社サン・メディカ



乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』
第9回 「再発を防ぐための考え方と生活」その1―がんサバイバーに学べ

取材協力:「21世紀の医療・医学を考える会」e-クリニック代表理事 岡本裕医師

岡本裕医師
2001年に、インターネットを介した会員制の医療相談ウェブサイト「e-クリニック」をスタートさせた「21世紀の医療・医学を考える会」e-クリニック代表理事の岡本裕医師は、これまでに多くのがん患者さんを対象に、医療相談、情報提供などを行っています。そのなかで力を入れているのが、「がん完治の必須条件」へのアプローチ。がんサバイバー(治癒者)の貴重な経験をもとに、がんが治る人と治らない人の差は何か、完治する条件とは何なのかを探し出し、がん患者さんに還元することを目標に活動されています。では、がんサバイバーたちは、どのように考え、生き方を変えたのでしょうか。岡本裕医師に、お聞きしました。

■取材・文:内山 遥(乳がん闘病中)

<プロフィール>
「21世紀の医療・医学を考える会」e-クリニック 代表理事 
岡本裕医師
1982年大阪大学を卒業後、脳外科専門医となり、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて主に悪性腫瘍の臨床、研究を行う。93年、医療の考え方や手法に限界を感じ、臨床医をやめる。95年にNPO「21世紀の医療・医学を考える会」を設立。2001年、会員制の医療相談ウェブサイト「e-クリニック」(www.e-clinic21.or.jp)をスタート。会員患者の相談に答えるほか、がん治療セミナー、執筆活動などを行い、啓蒙活動に励んでいる。著書に『がん完治の必須条件−e-クリニックからの提言』(かんぽう)、『「死の宣告」からの生還』(講談社)など。

サバイバーたちは
考え方を変え、生き方を変えている

私は、昨年春に手術を受け、その後、抗がん剤治療、放射線治療を受けて、治療が一段落したとき、医師に「これから何か気をつけることはありますか? 元の生活に戻っていいのでしょうか?」と聞いてみました。返ってきたのは、「どうぞ元の生活に戻ってください」という答えでした。
この言葉に、多くの患者さんが「もう治った」と思い込み、また“がんになる生活”に戻っていきます。がんになる生活に戻れば、その先に待っているのは、再発…なのではないでしょうか。
「e-クリニック」で、多くの患者さんの相談を受けてきた岡本裕医師は、「生き方のゆがみが、慢性的なストレスとなり、がんを引き起こします。ですから医師は、ただ三大療法を行うだけでなく、がんを再発させないため、考え方や生活を、どう変えればよいのかを指導すべきなのです。残念なのは、医師が、がんは治ると思っていないこと。おそらく、治った患者さんをほとんどその目で見ていないのかもしれません。医師からさじを投げられても、考え方や食生活を変え、生き方を変えて元気になった方がたくさんおられるのですが、そういう方の多くは、医師と決別しているから・・・」と語ります。
岡本医師は、がんサバイバー(治癒者)と呼ばれる人たちの体験のなかに、がん完治のカギがあると考え、アンケートを実施しています。アンケートの対象になったのは、「中程度以上に進行したがんが治癒し、5年以上元気に過ごしている」という条件を満たした人たちです。
アンケートで、治った人と治らない人の決定的な違いは何か、一つだけ選んでもらったところ、「考え方」という答えがダントツのトップだったと言います(グラフ参照)。
「がんの患者さんと話していると、責任感が強く、頑張り屋さんがとても多いことがわかります。ストレスをまともに受け止め、家族のため、人のため、社会のためにがんばりすぎて、自分を追い込んでしまった結果、病気になってしまったわけです。でも、サバイバーの方たちは、みな、がんになる前と後で、考え方が変わっています」
たとえば、会社人間で仕事が生きがいだった人なら、「自分が、会社をやめたからといって会社がつぶれるわけではない」と考えを変えて、仕事をセーブする。家族のために自分を犠牲にしてがんばってきた人は、「これからは自分の時間を大切に・・・」と考えを変えて仲間と旅行に行く時間をつくる。このように、考え方を変え、生き方を変えた人が、がんサバイバーになっているわけです。
さてサバイバーたちは、何をきっかけに考え方を変えたのでしょうか
「がんになったことで、すぐに考え方が変わった人もいますが、多くは、がんに関する本、先輩のサバイバーや家族の言葉、患者会に出席したことなどがきっかけになっています。なかには、海外旅行先で考え方が変わったという人もいて、みなさん、何かしら行動したことがきっかけになっているようですね」
ちなみに、「医者」と答えた人は、「運」と答えた人よりも少ないという結果。がんサバイバーといわれる人たちは、医師に頼らず、がんを自分で治した人たちなのです。


サバイバーはどこにいる?

がんを経験した私を含めて多くの人たちにとって、がんサバイバーは憧れの存在であり、目標となる人たちでもあります。では、いったいどこに行けばサバイバーに会えるのでしょうか?
「患者会には、必ずといっていいほどサバイバーの方がいらっしゃいますから、まずは参加してみることです。ただし、患者会にもいろいろあって、とても明るい雰囲気で前向きな方が集まっている患者会もあれば、雰囲気が暗くてうまく機能していないところもあります。一つだけでなく、いくつか参加してみるとよいでしょう」
 岡本医師によれば、サバイバーは二つに分けることができるそうです。一つは、普通の人にはまねのできないことをやり遂げて、がんを克服したカリスマ性のあるサバイバー。そしてもう一つは、誰にでもできることを地道にこなし、元気になった普通のサバイバーです。
「カリスマ性のあるサバイバーは、表に出ることが多く、すばらしい人も多いのですが、偏った考え方の人もいて、多くのがん患者さんには、とてもまねができるものではありません。普通のサバイバーのほうが、圧倒的に多いことをぜひ知っていただきたいですし、その方たちがしてきたことを、お手本にしていただきたいですね」
 自分と同じがんの人が病気を乗り越え、元気になっている姿を見ることができれば、大きな励みになります。
「がん完治には、まだ医師たちが気づいていないこと、見過ごしていることがたくさんあり、その答えは、がんサバイバーのみなさんの体験のなかにあると思うのです。21世紀の医療・医学を考える会では、がんサバイバーに、先生となっていただき、がんを治すための教育をするというシステムづくりを進めています」
がんになったら、まずサバイバーに学ぶ。近い将来、それが、がん患者さんの常識になるかもしれない…そう感じました。


<グラフ>
がんが治る人と治らない人の決定的な違い
サバイバー81人の回答(e-クリニックまとめ)より 


☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

私には、毎月待ち焦がれているものがあります。それは閉経前の女性なら誰でも毎月付き合っているものです。
抗がん剤(CEF)治療を受け始めて3か月たったころ、毎月きちんと来ていた生理が遅れているのに気づきました。昨年7月末のことです。インターネットで調べてみると、「アントラサイクリン系もシクロフォスファミドも卵巣機能を低下させる副作用がある」という記述をみつけ、愕然としました。事前に自分なりにいろいろ調べ、主治医にも抗がん剤の副作用については、よく確認したつもりだったのに…。
主治医に尋ねました。
「あれ、言わなかったっけ? 生理が止まっちゃうこともあるんだよね。でもあなたはまだ若いから、きっと戻りますよ」
「言わなかったっけ!じゃないだろー」という言葉を飲み込んだのを、覚えています。
 今年3月、久しぶりに生理が訪れ、「私って回復早い!」と喜んだのもつかの間、一度きりで今に至っています。
 頭髪が脱毛したこともショックでしたが、治療を終えて半年過ぎれば、カツラなしで人前に出られるようになりました。けれど、落ちてしまった卵巣の機能は、そう簡単には戻りません。
男性には、この思いはわからないでしょう。けれど、きちんと説明して欲しかった。そうすれば、もしかして抗がん剤治療を拒否していたかもしれません。更年期障害と思われる異常なほてりなどの症状は、すでに始まってしまっていますが、それでもやはり、そろそろこないかな…と毎月待ってしまうのです。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受け、さらに放射線治療を受ける。ホルモン剤服用を2か月でやめ、現在は、がん再発を防ぐ生活を模索しながら実践中。

提供:株式会社サン・メディカ


乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』
第10回 「再発を防ぐための考え方と生活」その2―総力戦でがんに臨む

取材協力:「21世紀の医療・医学を考える会」e-クリニック代表理事 岡本裕医師

岡本裕医師
2001年にインターネットを介した会員制の医療相談ウェブサイト「e-クリニック」をスタートさせた岡本裕医師は、これまでに多くのがん患者を対象に、医療相談、情報提供などを行っています。そのなかで、力を入れているのが、「がん完治の必須条件」へのアプローチです。がんを完治するために何をすべきか、三大治療をどう考えるべきなのか、岡本裕医師にお聞きしました。

<プロフィール>
「21世紀の医療・医学を考える会」e-クリニック 代表理事 
岡本裕医師
1982年大阪大学を卒業後、脳外科専門医となり、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて主に悪性腫瘍の臨床、研究を行う。93年、医療の考え方や手法に限界を感じ、臨床医をやめる。95年にNPO「21世紀の医療・医学を考える会」を設立。2001年、会員制の医療相談ウェブサイト「e-クリニック」(www.e-clinic21.or.jp)をスタート。会員患者の相談に答えるほか、がん治療セミナー、執筆活動などを行い、啓蒙活動に励んでいる。著書に『がん完治の必須条件−e-クリニックからの提言』(かんぽう)、『「死の宣告」からの生還』(講談社)など。

三大療法は時間稼ぎにすぎない

がんの三大療法と言えば、手術、化学療法、放射線治療のことを言います。一般的な病院では、三つの治療法をどう組み合わせて行うかに主眼を置いて治療が行われます。私も、まず乳房の部分切除術を受け、再発を防ぐための抗がん剤治療と放射線治療を受けました。いうなれば、三大治療のフルコースを経験したわけです。
 岡本裕医師は、「三大治療は即効性があります。使いようによっては、効果をあげてくれることもありますが、ごく初期のがんをのぞいて、三大療法だけでがんを完治することはできません。三大療法は、言わば毒を持って毒を制する治療法ですから、あくまでも時間稼ぎと考えるべきです。がん治療の主流になっている手術は、言い換えれば大ケガです。体力を消耗し、術後は免疫力も大幅にダウンしますから、できるだけ負担の少ない手術にするべきです」と語ります。
 私の場合、事前の検査で、リンパ節への転移が認められなかったのですが、術中にリンパ節への転移が見つかったため、リンパ節を切除されました。リンパ節を切除すると、腕がむくんだり、ケガが治りにくくなるなどの後遺症が起こりやすくなります。手術前は、パンパンにはれあがった自分の腕を想像し、「どうか転移していませんように…」と祈ったものです。
術後、もうろうとした私の耳に飛び込んできたのは、「リンパ節はきれいにとりましたからね」という主治医の声でした。外科医である彼にとって、きれいに取れたことは満足だったことでしょう。
その後、リハビリに励んだこともあってか、感覚が鈍くなりはしたものの、腕がむくむようなことはありませんが、きれいにリンパ節を切除した人のなかには、ひどいむくみで苦しんでいる人がたくさんいるのです。
「医師が『手術が第一選択です』と言う場合、多くは“その病院では手術がいちばん”ということです。他の病院であれば、手術をせずに放射線治療やラジオ波焼灼術など、より負担の少ない治療法を選択できる場合もありますから、本当に手術が必要なのか、よく確認する必要があります。主治医に『この方法が標準治療です』とか『手術をおすすめします』などと言われると、それしか方法がないと思いがちですが、がんの治療法は一つではありません。ありとあらゆる方法があるのですから、自分にとって何が最善かをよく考え、情報を集めて、なるべく負担が少ない方法を選択することが大切なのです」


ベース治療の柱は
メンタル、栄養、血行・自律神経のバランス

“三大療法はあくまでも時間稼ぎ”とするならば、ほかに何をすればよいのでしょうか。
「がんになると、いわゆる名医を探したり、特効薬はないかと健康食品を探し回る人が多いのですが、がんは医師に治してもらえる病気でもなければ、健康食品を摂取するだけで治る病気でもありません。がんを治癒に導くには、総力戦で立ち向かう必要があるのです(図参照)。なかでもベース治療は、もっとも根本的な治療手段ですから、少なくとも5年間、できればずっと続けていただきたいですね。しっかりとした基礎をつくってはじめて、他の治療法の効果も上がるのです」
「ベース治療」とは、岡本医師らが多くのがんサバイバーを調査した結果、導き出されたもので、(1)メンタル、(2)栄養、(3)血行・自律神経のバランスが、三つの柱となっています。

(1)メンタル(考え方とストレスマネージメント):考え方を変える。医者や健康食品に頼らず自分で治す。生きがいや夢を持ち、がんサバイバーから学ぶ。ストレスをコントロールする
(2)栄養:生命を維持するために必要な栄養をしっかり摂り、免疫力を高める。がんを増進させる因子を排除し、がんを抑える栄養素を摂取する(動物性たんぱく質、動物性脂肪、白砂糖、塩分を控える。未精製のもの、野菜、果物、キノコ、海藻、豆類を食べる。野菜ジュース、野菜スープ、天然サプリメントを摂る)。過食しない
(3) 血行・自律神経のバランス:栄養素を体の隅々にまで行き渡らせ、有害な老廃物を速やかに排出するとともに、副交感神経を優位にして免疫力を高める(腹式呼吸、温冷浴、ふくらはぎマッサージ、爪もみ、笑うなど)

※このほか、十分な睡眠(7時間以上)と適度な運動(ウォーキングなら6,000歩以上)も大切。

「ただし、食事に関してはあまり厳格にやりすぎると続かなくなってしまうもの。私たちの調査でも、少しゆるやかな制限のほうが、かえってよい結果がでています。あまり厳格に考え過ぎず、週に1回は好きなものを食べるくらいでちょうどよいでしょう」 


☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

先日、「ウィッグ」(かつら)を購入した店からのアンケートが届きました。「ウィッグ」の付け心地などに関する感想を聞きたいというものです。
今は、おしゃれ用「ウィッグ」もいろいろあって、ファッションの一部として楽しむ人も増えていますが、私にとって「ウィッグ」は初体験でした。抗がん剤治療を始めるとき、脱毛する可能性が高いと聞いていましたので、いろいろ情報を集めていました。
自然の髪に近く、手入れの簡単な「ウィッグ」にしようと決めていましたが、それだと17〜20万円もします。それでなくても治療費が毎月かさむのに、この出費は痛い…。脱毛しないかもしれないからギリギリまで待っていましたが、治療を始めて50日目。ついに脱毛が始まってしまいました。
しかたなく「ウィッグ」店に向かい、いくつか試してみましたが、思ったより軽く、付け方も簡単。店内にイメージもサイズもぴったりした「ウィッグ」があったので購入し、付けたまま帰宅しました。
家に近づくにつれて、知人に会って何か言われたらどうしよう…とドキドキしましたが、誰にも会わずに帰宅。親しい友人や姉妹には、「すごくよく似合う」といわれたこともあり、それほど違和感もないまま、8か月ほどの「ウィッグ」ライフ(?)」を楽しみました。ただ1度だけ、バレーボールの練習を見に行って、ちょっと体を動かしたときに、「ウィッグ」がすっぽり抜けてしまい、トイレに駆け込んだことがありました。顔から火が出るくらい恥ずかしかったけれど、今になってみればよい思い出です。
高かったし、捨てるのももったいないので、今は押入れの片隅にしまってあります。先日、久しぶりに「ウィッグ」を取り出して見てみましたが、もう一度使うこと、すなわち抗がん剤治療を受けることはもうないでしょう。誰か必要な人がいたら使ってもらいたいとも思いますが、それもないほうがいいなあ。もったいないけど、この押入れに置きっぱなしになるのが、私にとっては一番うれしい気がします。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受け、さらに放射線治療を受ける。ホルモン剤服用を2か月でやめ、現在は、がん再発を防ぐ生活を模索しながら実践中。

提供:株式会社サン・メディカ


乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』
第11回 「再発を防ぐための考え方と生活」その3―治療後の健康チェック

取材協力:「21世紀の医療・医学を考える会」e-クリニック代表理事 岡本裕医師

岡本裕医師
がんの再発を防ぐために、すべきことはたくさんあります。治療を終えた後に、治癒に向けての闘いが始まるといっても過言ではないでしょう。なかでも、自分の健康状態をきちんと把握することは大切です。今回は、健康チェックの方法などについて岡本裕医師にお聞きしました。取材・文/内山 遥(乳がん闘病中)

<プロフィール>
「21世紀の医療・医学を考える会」e-クリニック 代表理事 
岡本裕医師
1982年大阪大学を卒業後、脳外科専門医となり、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて主に悪性腫瘍の臨床、研究を行う。93年、医療の考え方や手法に限界を感じ、臨床医をやめる。95年にNPO「21世紀の医療・医学を考える会」を設立。2001年、会員制の医療相談ウェブサイト「e-クリニック」(www.e-clinic21.or.jp)をスタート。会員患者の相談に答えるほか、がん治療セミナー、執筆活動などを行い、啓蒙活動に励んでいる。著書に『がん完治の必須条件−e-クリニックからの提言』(かんぽう)、『「死の宣告」からの生還』(講談社)など。

体調がよいなら簡単なチェックだけでOK

前回は、がんを完治に導くための「ベース治療」についてお聞きしました。このベース治療は少なくとも5年、できればずっと続けることが理想です。そのほか、がんサバイバーになるために、定期的に自分の状態を把握しておくことも大切だと岡本医師は語ります。
「ステージによって受けておきたい検査は異なります。たとえば、腫瘍が体に残っている患者さんであれば、CTやMRI検査などが定期的に必要になりますが、原則として体調がよい(食事がおいしく摂れてよく眠ることができ、便通が快調)のであれば、体重や体温などを自分でチェックし、リンパ球数、肝機能、腫瘍マーカーなどを定期的に確認するだけでよいでしょう。リンパ球数で免疫力の状態が把握できますし、肝機能の数値で、健康食品の摂取が肝臓に及ぼす影響や、再発の可能性をチェックすることもできるからです」
これらは保険がきく、ごく一般的な血液検査で確認することができます。主治医にお願いするか、近くの病院で定期的に検査するとよいでしょう。
「腫瘍マーカーの検査をこまめに行い、一喜一憂されている患者さんをよく見かけますが、あまり意味のないことです。検査は大切ですが、あまり神経質にならない程度にしておきましょう」


定期的に確認しておきたい項目(ステージによって異なる)
@ リンパ球数(変化を把握しておく。横ばいまたは右肩上がりならOK)
A 腫瘍マーカー
B 肝機能
C 便通(便秘がないかどうか)
D 体重(減少傾向が続いていないか)
E 体温(36℃以下になっていないか)
※CT、MRI検査などが定期的に必要な場合もある


いっしょに完治を目指してくれるクリニック

 私は、去年の12月からホルモン剤を飲み始めましたが、3か月ほどで服用を止めました。体が必要に応じて分泌している女性ホルモンを無理やり止めたり、働きを抑えてしまうことは、かえって体によくない…。また、ホルモン剤投与により子宮がんのリスクが高まるといわれており、他のがんのリスクを高めるような治療法は不自然ではないか…そう思ったからです。自分では納得したつもりでも、やはり不安で、本当に大丈夫なのか誰かに相談したかった。抗がん剤を始めるときも本当に必要なの?という疑問が頭から離れませんでした。
「ドクターは治療をするだけでなく、患者さんの話に耳を傾け、的確なアドバイスをすることが大事な仕事だと思うのです。ところが現在の医療システムでは、1人の患者さんにたっぷりと時間をかけることは不可能です。患者さんが気軽に相談でき、いっしょに完治を目指してくれる医師がいれば、安心だし心の支えになると考え、e-クリニックを開設したのです」
e-クリニックは、治療を行う場ではありません。がんを完治するための総合的なサポートを、インターネットを介して行います。相談に答えるスタッフの医師は、中医師を含めて現在8名。外部にも数十人のコンサルタント医師がおり、相談事項に対して、必ず複数の医師が相互にチェックし、3日以内に回答するシステムをとっているそうです。がん患者の多くは、日々不安の中で暮らしています。そんなとき、不安なこと、相談したいことができたら、早朝でも夜中でも質問や悩みを投げかけることができるわけです。
現在行っている治療に疑問がある、専門的なアドバイスを求める人はもちろん、とにかく話を聞いてほしい、がんを完治するための伴走者が欲しいという人も、一度アクセスしてみてはいかがですか?

e-クリニック概要

●活動内容:
・医療サポート(ベース治療の指導、医療相談全般、健康食品の相談、サプリメントの相談、代替医療の紹介と相談、中医(漢方)の紹介と相談など)
・定期的にセミナー、交流会を開
●入会方法:ホームページにアクセスし、メンバー登録をする
●会費(6ヶ月間のサポート料):10,000円 
   入会時は別途VTR、書籍代などが必要。
   相談1件につき2000円が必要。 
●ホームページ:http://www.e-clinic21.or.jp
●事務局の所在地:大阪府大阪市淀川区西中島6−2−3 1006号
●電話:06−6305−9629  

☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

大学時代の同期会が京都で行われることになり、観光を兼ねて3日ほど京都・大阪で過ごしました。紅葉が始まったばかりではありましたが、木々の葉が山々を彩って、本当にきれいでした。
 集まった同級生のなかで、子宮頸がんの手術をしたばかりの人がいました。初期の段階だったため、手術だけで済んだということでしたが、10人集まった40代女性のなかで、少なくとも2人ががん治療を経験していたことになります。
私が気になったのは、彼女も私も、不妊治療を受けたことがあるという事実でした。不妊治療には大きなストレスが伴いますし、ホルモン剤の投与量も半端なものではありません。私は自分ががんになった原因の一つに、不妊治療があるのではないかと前々から感じていましたが、今回改めてその思いを強くしました。
不妊治療を受けたことを悔やんではいませんが、今考えれば、体に大きな負担をかける治療ではなく、体質を改善する方法、たとえば漢方薬などによる治療を受けたほうがよかったのかもしれません。不妊治療とがんのリスクの関係を示すデータは、これまでに見たことがありません。研究者の方々に、因果関係をぜひ調査していただきたいと思います。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受け、さらに放射線治療を受ける。ホルモン剤服用を2か月でやめ、現在は、がん再発を防ぐ生活を模索しながら実践中。

提供:株式会社サン・メディカ


乳がん闘病中の内山 遥(うちやま はるか)が
レポートする連載『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』
第12回(最終回)
『サプリメントの選び方と上手な使い方』

取材協力:銀座東京クリニック 福田一典院長

福田一典院長
厚生労働省がん研究班によれば、がん患者さんの二人に一人が補完代替医療を利用し、その96%の人が何らかの健康食品を愛用しています。なかでも、きのこ系の健康食品を使用している人は6割強存在しますが、では、どのようなものを選べばよいでしょうか、その種類はあまりにも多く、迷うところです。そこで、『抗がんサプリメントの正しい選び方、使い方』(南々社)の著者で、がんの漢方治療や代替療法を行っている銀座東京クリニックの福田一典院長に、健康食品の選び方や、使用するときの注意点などをうかがいました。
取材・文/内山 遥(乳がん闘病中)

<プロフィール>
銀座東京クリニック院長
福田一典
1978年熊本大学を卒業後、熊本大学医学部第一外科などを経て、久留米大学医学部第一病理学教室助手。その間、米国バーモント大学医学部生化学教室などでがんの分子生物学的研究を行う。潟cムラ・中央研究所、国立がんセンター研究所がん予防研究部、岐阜大学医学部東洋医学講座助教授を経て、2002年に銀座東京クリニックを開設し、がんの漢方治療と代替医療を行っている。一般向け著書に『自分でできるがん再発予防法』(本の泉社)、『抗がんサプリメントの正しい選び方、使い方』(南々社)など多数。

免疫力を高める効果が期待される
マイタケなど、きのこ類の抽出物

がんを経験した人の多くは、「再発するのではないか」という不安を抱えており、その不安を打ち消すために、いろいろな行動をとります。私は、自分がなぜがんになったのか考え、食生活を根本的に変え、十分な睡眠をとり、仕事でも無理をしないよう心がけています。
近年では、健康保持・向上のために、健康食品を愛用する人たちが増える一方、がんになった人たちも、何らかの健康食品を摂取していることが判明しています。なかに、「ワラにもすがる思い」で摂取するケースもあるようです。
厚生労働省がん研究班の調べでは、補完代替療法を利用する目的に、「がんの進行抑制」「治療」「病状緩和」を挙げていることが判明しました。
「ただ広告宣伝などにまどわされて、“飲めば治る”と信じて健康食品に頼る患者さんもいますが、これだけで、がんを治すことはまず不可能です。がんの再発を防ぐうえで大切なことは、食生活を改善すること。野菜や大豆、果物を中心とした食生活に改善したうえで、その補充として健康食品を使ってこそ、効果も期待できるのです」と、がんの漢方治療や代替療法を行う銀座東京クリニック院長の福田一典医師は、語ります。
サプリメントのなかでも種類が多く、がん患者さんに最もよく知られているのが、マイタケなど、きのこ系健康食品です。
「きのこ類に含まれるβ‐グルカンは、免疫細胞のマクロファージやリンパ球を刺激して、免疫力を高める効果があるといわれています。がん患者さんが摂取することによって、再発や転移を抑える効果がある程度期待できると思います」
 ここで注意しておきたいのは、数多くのきのこ系健康食品が出回っているものの、実態は玉石混淆の状態。きちんとしたデータ、臨床試験で安全性や有効性が確かめられていないものが市販されています。
「マイタケ抽出物のように、臨床試験が行われ、論文として報告されている製品もありますが、臨床試験はおろか、動物実験さえ行っていないものも少なくありません。それどころか、他の製品のデータを勝手に使っているものさえあるのです。なのに、“がんの予防や治療に有効かもしれない”という程度のデータが、“がんに効く”“効果が証明された”、という話にいつのまにか置き換わって、宣伝に利用されることもあるので、注意が必要です」
それでは、何を目安に選べばよいのでしょうか。
「きのこの効果は、製品によって異なり、単に含まれる抽出物の量が多いというだけでは判断できません。まずは、安全性や有効性が確認されている製品を選ぶことが基本です。さらに、できれば、人を対象に行った臨床試験で、有効性を示すデータを持っているものを選びたいものです。今後、多くの健康食品において、臨床試験のデータが発表されることを期待したいですね」


がんの種類や状態によって
摂取してはいけないものもあることを知っておこう

ところで、あなたは健康食品をどのように選んでいますか? 「知人によいと勧められたから・・・」とか「広告宣伝を見て良さそうだと思ったから・・・」という理由で選んだ人も多いのではないでしょうか。
先の厚生労働省のがん研究班が、がん患者さんに、「補完代替医療を利用したきっかけ」を聞いたところ、「家族や知人からの勧め」(77.7%)「自らの意思で・・・」(23.3%)利用したそうです。
私は、知人の薬剤師から『十全大補湯』という漢方薬を勧められ、処方してもらおうとして主治医に相談しました。ところが返ってきた言葉は、「へぇ〜なにそれ? あんまり変なもの出したくないんだけどねぇ」でした。
そんなこともあろうかと、抗腫瘍効果などのデータを見せると、「ふ〜ん、ま、悪いものじゃなさそうだから出してもいいですよ・・・」という返事。漢方薬でさえ知らないのですから、健康食品については、聞くだけムダと感じました。
このように、健康食品に対する認識度が低い医師が存在していますから、がん患者さんの多くは、主治医や薬剤師には内緒で、こっそりと健康食品を摂取しているケースは、少なくないはずです。ただ食品とはいえ、「意外な落とし穴がある」と福田医師は指摘します。
「健康な人が、健康増進を目的として健康食品を摂取する分には、どんな健康食品を選ぼうと、それほど問題はないのですが、がん患者さんがサプリメントを取るときには、いくつか注意しなければいけないことがあります。たとえば、血小板凝集機能を低下させるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などは、出血が止まりにくくなる作用があるので、手術の前や、血小板が減少しやすい抗がん剤治療中は、過剰な摂取は推奨できません。また、エストロゲン依存性の乳がんや子宮体がんの人は、大豆イソフラボンのサプリメントを摂取すると、がんを増殖させるリスクがあります」
がんの種類によって、また状況によって、使ってはいけない健康食品もあるということを、ほとんどの方が、ご存じなかったのではないでしょうか? そういう私も、いくつか知らなかったことがあり、愕然としました。体のために、良かれと思って取った健康食品が、かえって害を及ぼすことだてありえるのです。
健康食品は、上手に使えば頼もしい味方になってくれるものですが、一歩間違うと、意外な落とし穴が待ち受けています。健康食品を愛用する前に、使用されている素材についての知識を取り入れ、原則を知ることは、効果的に使うためにも命を守るためにも不可欠です。 
知識を身につけたうえで、できることなら信頼できる医師や薬剤師にアドバイスを受けながら、上手に健康食品を使用することが大切だと思いました。


表 がん患者が健康食品を使用する際注意したいこと
・エストロゲン依存性の乳がんや子宮体がんの患者は、大豆イソフラボンのサプリメントを摂取すると、再発を促進する可能性がある(大豆を使った食品を避ける必要はない)
・血小板凝集機能を低下させる(血液サラサラ効果がある)DHAやEPAは、手術前や抗がん剤治療中の使用は注意が必要
・免疫細胞のがん(悪性リンパ腫など)の患者が、免疫力を高める健康食品を使用すると、がんを増殖させるリスクがある

☆☆内山 遥の近況報告☆☆ 

時のたつのは早いもので、2007年1月から始まった12回の連載が、あっという間に終わってしまいました。この間、免疫研究や、がん治療の第一線で活躍されている方々に、直接お話をお聞きすることができ、とても貴重な体験ができたと思います。
連載第1回の取材に出かけたのは、抗がん剤治療の副作用で抜けた髪が、まだ生えそろわない時期でした。ウィッグをつけながら、こんなに早く仕事を始めていいのか、不安を感じていたことも事実です。でも、取材を続けていくうちに、自分が、なぜがんになったのか客観的に振り返り、考え方と生活を改めれば、がんと闘う力、すなわち免疫力を高められるのだと確信することができました。この連載がなければ、そんなふうに考えることはできなかったかもしれません。
今では少しずつ、でも確実に体が回復していると感じることができます。今後は、今の気持ちを忘れずに、気長にがんと付き合っていければと考えています。
最後になりましたが、取材に協力いただいた先生方と、この連載を読んでいただいた読者の皆さんに感謝いたします。

■取材・文:内山 遥(うちやま はるか)
女性誌や医療関係の雑誌に執筆するメディカルライター。2006年2月、入浴中に左胸のしこりを見つける。検査の結果、クラス5、ステージUの乳がんとの診断。4月に乳房温存手術を受け、リンパ節に転移があったため、抗がん剤治療を6クール受け、さらに放射線治療を受ける。ホルモン剤服用を2か月でやめ、現在は、がん再発を防ぐ生活を模索しながら実践中。

提供:株式会社サン・メディカ

<編集部から>

12回シリーズの『がん患者さんのための「免疫とがん」講座』は、連載中、読者の皆さまから、「近年、注目されているマイタケなどのキノコ類について取り上げてほしい」といった問い合わせが寄せられました。そこで編集部では、『抗がんサプリメントの正しい選び方、使い方』(南々社)の著者で、がんの漢方治療や代替療法を行っている銀座東京クリニックの福田一典院長にご登場いただきました。本シリーズは、今回でおしまいです。ご愛読ありがとうございました。


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