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魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第13章 コード・オブ・デイドリーマー

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第237話 第2ラウンド・亜人の軍団



戦況に変化が現れたのは、将軍のおっさんが戦場に塵と消えてから……数分後のことだった。

(…………来たか)

話は聞いていた。ウェスカーと……ザリーから。
そのザリーは、どうやらオリビアちゃん経由でその話を聞いたらしいけど。

どんな話かというと……簡単に言えば、この戦い、人間だけが相手じゃ終わらないだろう、ということだった。
ハイエルフをはじめ……多数の亜人種族たちが動いている、と。

どうやら、僕が殴り込んでエルクを奪還したあの砦にいた、クラウドとかいう奴が率いていたあの集団は……先遣隊のようなものだったらしい。本隊は、別にいたのだ。

確かにあいつ、死に際に『自分に手を出せば本山が黙っては(略)』とかなんとかほざいてた気がするけど……アレ、苦し紛れに言ったわけじゃなかったのね。
まあ、だからってどうこうないけど。ホントだってわかってても消し飛ばしてたし。

で、だ。
その、たしか『ステイルヘイム』とかいう名前らしい、ハイエルフの総本山から、本命の部隊が動き出すらしいのだ。この国の乗っ取りと、僕らの討伐のために。

しかもその軍というのが、ハイエルフのみならず……他の多種多様な亜人種族を含んだものであるらしい。『ハイエルフ族』を頂点に据えて、同盟を組んだ形で。

確認できているだけで、俗にいう狼人間とか狼男とかである『人狼族』、体の下半分が蛇である『ラミア族』、背中から羽が生えてる『翼人族』、人型だけど鱗とひれと鰓を持ち、見た目がまんま半魚人である『ギルマン族』……とまあ、4種類。
他にもいる可能性が高いって話だし、それらにさらに仕えている他の亜人なんかも合わせると、十数種類の混成軍になるらしい。

そして、そいつらは……タイミングをうかがっているはずだった。
丁度、人間と僕らのチーム、両方に大打撃を与えられるタイミングを。

要はそいつら、漁夫の利を狙ってるってわけなので……いい感じに消耗したところで、両方をつぶすべく動くだろうと思ってたんだけど……なかなか来なかった。

まあ、一方的だったしね……対応に困ったのかも。
片方……リアロストピア軍の方は、もう全滅が見えている。軍の残り人数は……おそらくは5000人を切っているだろう。今も、どんどん減っていっている。

それに対して、僕はといえば……傍目からどう見えているかはわからないが、ほぼ無傷と言っていい状態だ。装備とかも特に破損していない。

出るべきかどうか、判断しかねていたんだろう……ついさっきまで。

(ちょいと猿芝居してみた甲斐があった、ってことでいいのかな、コレは)

もしかしたら、このまま襲うのは危険とか考えて、国乗っ取りと僕への襲撃を延期するかもしれない――僕1人に勝てないかもって恐れをなしたことになるから、プライド高い連中に限ってそれはないとは思ったけど―― 一応、僕も消耗してるように見える演技をしてみた。

将軍のおっさんを消し飛ばしてから、僕はしばらく戦った後……『CPUM』に残りの敵たちの始末を任せて、『キャンサー』の背中に乗って腰を下ろし、よ~く見るとわかる程度に肩を上下させる。肩で息をしているみたいに見えるように。

加えて、収納スペースに入れておいた回復薬ポーションを飲む。見えるように。

それからしばらくして、事態が動いた。
演技が功を奏したか……いよいよ、連中が動き出した気配を感じる。
具体的には……かなりの規模の攻撃魔法を発動させている気配を。

一応、隠ぺいのための術式でカバーしているみたいだけど……その程度じゃ僕をごまかすことはできない。発動はもちろん、規模や属性なんかも、きっちり感じとれる。
『パワードアームズ』で感知能力を強化してるから、なおさらだ。

キャンサーの周囲に、隠蔽の術式を施した防御のための魔法をいくつか構築し、攻撃に備えたその数十秒後……僕の周囲に、突如として光と高熱の暴風が発生した。

(……っ! 防御してても思ったよりくるな……こりゃ、ただの攻撃魔法じゃない、か?)

威力、攻撃範囲ともに……準戦略級といっていいレベルの魔法。
多分だけど……種族固有の能力とか魔法、ってやつだと思う。

ミュウの『金縛り』や『変身』のように、亜人種族には、その種族に特有の魔法や能力を持っている種族もいるわけなんだけど……そういったものの中には、かなり特殊な部類に入る魔法や能力もあるらしい。

例えば……複数人で協力して1つの魔法を発動させたり、とか。
おそらく、今のはその類の攻撃魔法だと思う。

奇襲で大打撃を与えるには確かに有効だろう……気付かれてる時点で半分失敗だったけど。

数秒の間燃えていた炎は、僕の周囲の……僕と『キャンサー』以外をすべて焼き払うと、霧が晴れるように消えてしまった。

その後、さっきより少し大げさに肩を上げ下げして、今の一撃で多少のダメージを受けたかのようにふるまう。

大げさになりすぎないように注意はする。さっきまで、火炎爆炎の中心で戦ってたわけだから……あまりダメージ受けすぎているとわざとらしく見えかねないからね。

さっきと同じように、帯からポーションを取り出して、ふたを開けて飲もうとして……その前に、どこからか高速で飛来した矢が命中し、ぱりぃん、とそれを砕いてしまった。

回復させるつもりはない、と。徹底してるな……。

(まあ、させてもらうけど……)

驚きと悔しさを顔に浮かべながら(無論、演技)、魔法発動前に口の中に含んでおいた、カプセル型の薬をかみ砕いて回復する。体表面の細かい傷が消え、疲労もあらかたとれた。
体中にすすとか土埃がついてるから、ダメージ演出は十分だろう。

結構な広範囲にわたって地面が黒く焼け焦げていて……その上に転がっていたはずの、リアロストピア軍の兵士たちの死体は、燃え尽きてなくなっていた。
代わりに……戦場の外縁部に、僕を取り囲むように布陣している……大なり小なり人間からかけ離れた姿の軍団がいるのが見える。

(ようやくおでましだな……亜人軍団)

リアロストピア……勝手に権力闘争に巻き込んで僕を排除しようとする連中への対処は、ひとまずというか、一旦ストップだ。

出張ってきた軍は潰した。周辺の拠点にいくらかまだ残ってるけど、大した脅威じゃない。
そもそも頭がつぶれた今、烏合の衆に過ぎないし……動きたくても動けないだろう。

残りは後で、王都およびその付近にいる連中をぶっ潰してしまえばいい。

同時に排除すべき『ベイオリア』の連中についても……考えはあったし自分でやるつもりだったけど、ウェスカーたちが代わりにやってくれるそうだ。
どうも、連中にとっても『旧王家派』の存在は都合が悪いらしいので。

そういうわけで……僕はここは、おいでなすった亜人の軍団への対処に専念できる。

準戦略級攻撃魔法の直撃を受けた(と連中は思っている)僕を、ここで葬り去るべく……亜人の軍団は、その包囲網を徐々に狭めていく。
途中にいる人間の兵士たちを、邪魔なごみを払うように殺してどけながら。

近づいてくるにつれ……バリエーション豊かな混成軍の構成人種がわかってきた。

『ハイエルフ』……は当然入ってるとして、狼男みたいな連中と、下半身が蛇の連中、半魚人っぽい連中もいるな。翼生やして空飛んでるのもいる。
情報にあった『人狼族』と『ラミア族』、『ギルマン族』に『翼人族』だろう。

しかし、その前情報になかった連中もいるな。

頭に角の生えた、鬼みたいな亜人『オーグル』や、半人半馬の『ケンタウロス』……見た目は人間だけど、なんだか顔色悪そうに見える連中も……牙長いな、ひょっとして『吸血鬼』か?
おまけに、どう見てもメートル単位の身長がありそうなデカブツ共……もしかして『巨人族』? イオ兄さんと同じ感じの連中?

他にも、獣人やドワーフ、ダークエルフやピクシー……その他、いろんな種族が集まってる。
てか、何気に人間もいるし……調教されてるらしい魔物も混ざってるぞ?

あくまで、メインになってるのは、最初にあげ連ねた合計9種族みたいだから……あとの雑多な奴らは、そいつらの奴隷や飼い犬的な連中、ってところかもしれない。

そんな推測を立てていると……

「敵ながら見事、と言っておこうか。よもや、小細工を弄したとはいえ……かような数の人間共を、たった1人でたたき伏せることができるとはな」

ちょうど正面から……そんな声が聞こえた。

見ると、そこには……おそらくはハイエルフであろう、壮年の男が立っていた。
その姿を視界にとらえた瞬間……

「…………っ……!」

ぞくり、と背筋に寒いものが走ったのを感じる。

両脇を、側近か何かと思しき者たちによって固められているその男は……一目見て、今までの敵とは格が違う、とわかる存在だった。
見た目に何か特徴があって、ってことじゃなく……雰囲気でわかる。

ウェーブがかかった感じの、顎あたりまである金髪に、いかにも支配者っぽい自己主張が見て取れる頭飾り。年の頃は、見た目……40超えた所、って感じに見える。

マッチョっていうほどじゃないけど、がっしりした体躯をしていて……身にまとっている鎧の豪華さからも、そいつの立場の高さが見て取れる。実用性もしっかり伴ってるようだし。

こちらを見る目は……クラウドと同じような、くだらないものを蔑んで見る目だけど。

そして、さっきから感じる、この魔力の感じ……

「初めまして、と言っておこうか、矮小なる人間の小僧。我が名はギャナーガス・グレイガイガー。ハイエルフの総本山『ステイルヘイム』の盟主だ。そして……貴様とこの国に終焉をもたらす者でもある」

「ご丁寧にどうも。てか、あんたもしかして……あの夜にあのまぶしい球ぶつけてきた人?」

「その通りだ……よくわかったな、ほめてやろう」

あっさりと認めたこの男が……やはりというか、ハイエルフの王であるらしい。

「矮小なる人間の身でありながら、クラウドを倒したこと……此度の7万殺しとあわせてほめて遣わす。惜しかったな……その身と血に罪がなければ、われらに仕えて身命をささげる栄誉をくれてやってもよかったものを」

妄言を延々と垂れ流すのは、その『ステイルヘイム』とやらのハイエルフに共通の生態らしいな、どうも。
バラックスさん……よくまともに育ったもんだ。尊敬するわ。

ただ、こいつの場合……本気で油断ならない相手のようだけども……。

「この国はもう間もなく、我々のものとなる……その際に、人間の軍隊は最低限の数を残して殺してしまう予定だったのだが……手間が省けた」

9割5分くらいの数を僕が片づけた、『リアロストピア軍』が死屍累々の戦場を見渡しながら、呟くように言うギャナーガス。
感心したような声音で言いつつも……その顔に浮かんでいる笑みには、もれなく僕への侮やら見下しが多分に含まれていた。

「だが、あいにくと我々の中には戦いを望む者も多いのでな……うすうす気づいていると思うが、我らは、貴様とこの国の人間の軍隊がぶつかって弱ったところを叩くつもりでいた。肩透かしを食らってしまった形になる……手間は確かに省けたが、同時に気が収まらん者も多い」

見回すように、僕を包囲している自分の軍勢を見て……

「ついては、貴様にはその分の責任を取ってもらうこととした。そのあたりに転がっている者たちの代わりに……こ奴らの相手をしてもらおうか」

そう言って、にやりと笑い……

「恨むなら、過去に許されざる行いに手を染めたお前の母親と、ルーテルスの血族を恨むがいい……やれ」

その言葉と同時に、血に飢えた野獣たちが、我先にと襲い掛かってきた。

よぉし、上等……第2ラウンド、開始だ。

☆☆☆

「なるほど……では、いよいよ亜人勢力が動き出したのですね?」

『はい。マークしていた複数個所で、同時多発的に軍の重要拠点を占拠する作戦のようです。幸いにして、『蒼炎』殿の手の者と鉢合わせになっている個所は今のところないようですが……これ以降の計画の遂行に支障があると思われる個所もいくつかあります』

「それは好ましくありませんね……その国にいる財団の者たちは、あなたの裁量で動かしてかまいませんので、支障がなくなる程度に排除しなさい。それで……彼はどうです?」

『現状……全く問題ないようです。どうやら亜人の軍がここでも動き出すようですので、ここからが本番、といったところでしょうか』

「それはよかった……では、その周囲で邪魔になりそうな連中については、彼のお仲間と協力して排除なさい。こちらから頼むまでもなくそのつもりでしょうし」

『承知しました、総裁。では、これで……(プツッ)』

「……ふむ……大方予想通りの展開ですね。さすがはキャドリーユの血族……」

某所にて、通信用のマジックアイテムを切った後……そう独り言をつぶやく男がいた。

病的……という言葉すら生ぬるいほどに『純白』の肌を持ち、黒い礼服に身を包んだその男は……その血のように赤い目で、机の上に置いてあるチェス盤を見下ろした。

白い駒と黒い駒が、どちらも初期配置から動かないままに置かれている。

男はその盤上の駒のうち、黒いキングの駒を手に取ると……駒本来の動きのルールを無視して動かし、白い駒の陣地の真ん中に置いた。
その直後、周囲の白い駒を……キング以外すべて、かしゃんと手で倒してしまった。

そして、くくくっ、と笑いながら……倒れた駒を全て、盤の外に手で落としてどける。

「くくく……これはもう死に体として……次は、こちらですね」

そして、残った白のキングを盤の隅……マス目の外、盤から落ちないギリギリのところにまで押しやってしまうと、代わりに、新たに取り出した金色の駒を並べていく。

その置き方は、初期配置とは数も置き場所も違った。
金の駒は9個だけ。黒のキングの駒を囲むように並べていく。

(さあ……今度の敵は一筋縄ではいきませんよ、ミナト・キャドリーユ。彼らを……『アーク』を相手にあなたがどのようにして戦うか……お手並み拝見と行きましょう)

☆☆☆

「グオオオォォオオッ‼」

「ぅ――るあぁあ‼」

焔魔橙皇エンマダイダイオー』を振るい、爆炎と斬撃で、とびかかってきた狼男を叩き落として消し炭にする。
しかし、何体かは致命傷には至らなかったようで、すぐさままた飛びかかってくる。

と、今度は反対側から猛スピードで迫ってきていた顔色の悪い男が、エストック――巨大なアイスピックみたいな、刺突専用の刀剣――を構えて突っ込んできた。

間合いからして『焔魔橙皇』での迎撃が難しそうなので、下段から蹴り上げて軌道を変え、それで体勢を崩したそいつを、もう片方の足で繰り出した回し蹴りで蹴り飛ばす。
みぞおちにキレイに決まったその一撃だが……手ごたえは……

(っち……見た目によらず頑丈だな……)

そう僕が思った直後、血反吐を吐きながらも男は自分の足で背後に飛び退り……そいつに別の仲間が回復魔法をかけている。

人間なら、今ので間違いなく内臓全部破裂するはずだけど……

(厄介だな、吸血鬼ってのは……頑丈だし、怪力だし……反応も早い)

今こいつ、僕の蹴りが当たる直前に、後ろに跳んで威力流しやがったし。

しかし、そんなことに感心してる暇はない……周囲数か所で、同時にかなりの魔力が練り上げられる気配。右と、左斜め後ろと……上?
目視で確認すると、それぞれラミア族、ギルマン族、翼人族の魔法使いたちが魔法の構築を完了したところで……タイミングを合わせた火炎弾と水流、そして風の刃が襲い掛かってきた。

それを全部叩き落すかよけるかすると、今度はケンタウロスとオーグル族……鬼の男が武器を手に襲い掛かってきた。

ケンタウロスはスピードを、オーグルはパワーをそれぞれ武器にして、うまく片方がもう片方の短所を補う感じで猛攻を仕掛けてくる。
そしてその合間を縫って、ハイエルフが剣や魔法で襲ってくるんだからもー……。

唯一ほとんど襲ってこないのは巨人族くらいだけど……あれはただ単に、味方を巻き込まずに戦うのが難しいからだろうな。

それでも、ほとんど傷を負うこともなく戦えてるんだけど……さすがというか、人間の軍隊よりかなり戦いづらいし、強い。早いし、頑丈だし……
倒すペースで言えば、何分の一とかかもしれない。

こいつらの総数は……見た感じ、1万にも満たない。しかし、個々の実力が高い上、うまく統率されてるし、僕を怖がって逃げ腰になるなんてこともない。

加えて、さっきまでの毒ガスに対する対処法として……僕がそれを放出しようとした瞬間に火炎弾をぶつけて暴発させてくる。燃焼後の毒は残るけど……効力が弱まるせいか、効きが悪い。人間よりも数段生命力が高かったり、もともと毒物に耐性を持つような種族も多いみたいで……あまり有効な戦術にできてないな。

選民思想はうざいけど……それを自負するだけの能力は一応、あるのかもしれない。

(ふー……ちょっとコレ以上は、『焔魔橙皇』も限界かもなー……それに、だんだんこいつら僕との闘いに慣れてきてるみたいな雰囲気も感じる……学習能力もバカにはできないってことか。なら……一気に殲滅した方が、後々楽かもしれない)

そもそも、今まで『焔魔橙皇』やアナログ武器を使ってたのは、手の内を知られて対策立てられるのを避けるためだしね……特に、対軍用の戦略級兵器の。

「よし……行くか、『ジェノサイドアームズ』‼」

直後、僕は『焔魔橙皇』を収納し、同時に発動させた鎧を身にまとう。
エルク救出の時にロールアウトした、全身鎧型の超火力兵装……『ジェノサイドアームズ』。

それに備え付けのランチャー砲とガトリング砲を左手と両肩で構え、魔力を込めて……

「発……射ァ!」

――ドドドドドドドドドドド…………

魔力弾の弾幕が、向かってくる亜人の軍勢を飲み込んでいき……さっきまでよりもだいぶ早く、周囲を囲む兵隊たちが減っていく。
しかし、頑丈な亜人の体を貫通したりはできないようで……ここでも明らかに、人間を相手にぶっ放した時よりも効果は低いようだ。

こんな風に……弾幕を潜り抜けたり、多少の被弾は覚悟のうえで迫ってこれるような奴らまでいるし。

「もらった!」

「死ねぃ!」

「あんたらがね!」

で、懐に飛び込んできた狼男とケンタウロスを……空いている右手に出現させた、剣型のマジックアイテムで真っ二つにする。
やっぱ近くに来てくれると楽だな。馬力ならこっちは足りてるわけだし。

「ふむ……立ち回りの技術はなかなかのようだな。妙なマジックアイテムを持って使いこなしていることといい、下等な種族にしては、なかなかやるようだ」

と、部下たちに戦わせて自分は高みの見物、って感じにこっちを見ている、ハイエルフの王……ギャナーガスは、あくまでも上から目線+どうでもいいものを見るめでこっちを見ていた。

その後、周りを軽く見渡して……

「まあ、すんなり討てるとも思ってはいなかったがな……しかし、先程までに比べて随分と時間がかかっているようじゃないか。そんな調子では……この先苦しいかもしれんぞ?」

「この先……ってーと?」

「戦場がここだけだと思わんことだ……言っただろう? この国は我々がもらう、と。すでに我らの軍の別動隊が、国内各所の砦や重要拠点を制圧にかかっている……加えて、遅れて到着する援軍もここに向かっている。今目に見える者だけが、お前が倒すべき敵ではない」

もっとも、この全員をお前が倒せるかどうかは微妙なところだがな、と付け足し、あざけるように笑うギャナーガス。

ああ、なるほどね……僕が仮にここで善戦しようとも、まだまだ戦力はいると。
しかも、こことは別な拠点を占領してこの国をわがものにすべく動いてると。

後者は別にどうでもいいんだけど……前者は確かに、普通に考えればまずい状況かもね。
僕のスタミナだって無限じゃない。高い錬度の、統率された兵隊たちを延々と相手にし続ければ、そりゃ消耗もするだろう。

『第2ラウンド』が始まって十分少々。倒した敵は……まだ100かそこらだ。このままのペースなら、ここに今いる兵力よりも僕の体力が先に尽きてもおかしくない、と考えたか。

敵の兵隊たちは、僕の戦い方を学んで対抗策を編み出し、徐々に粘るようになってきてるから……あながちその予想は間違いでもないだろう。

ただし……

(わかってんだよ、こっちだって……おたくらのそういう考え方くらいはね)

残念ながら……あんたらがそういう手に出るかもしれないことも、計画には織り込み済みだ。

波状攻撃か、あるいは遊軍として動くか、またまた他の拠点を占領するか……そんな形で、亜人軍団がこの戦いをひっかきまわしてくるであろうことは、ウェスカーとオリビアちゃんの資料で予測はついていた。
そしてその場合……どうするかも、当然考えてある。

「あんたらこそ、忘れてもらっちゃ困る……僕は別に、一人で戦ってるわけじゃないんだよ?」

「……ほう?」

……てなわけで……頼んだよ、皆。

☆☆☆

「そういうこと……やれやれ、ようやく私たちにも仕事が回ってきたわね。ってことで……用意はいいわね、あんたたち!」

「OK、エルクちゃん! いつでも行けるわよ!」

『オルトヘイム号』の甲板。
そこに集合している……『邪香猫』のメンバー+α。

全員が完全武装で終結している中、副リーダーであるエルクの一括に、シェリーが代表して返事を返し……他の者たちも、力強くうなずくことでその意を示す。
それを確認し、エルクは満足そうにうなずくと。

「よし、じゃあこれから……ミナトへの合流の前に、砦周辺に潜伏あるいは合流のために行軍してる亜人の軍団の討伐任務に入るわ。いろんな種類が混ざってる上、数も多いから、手ごわいけど……あのバカが、それを補って余りあるレベルの武器防具を置いてったから、問題ない」

「ええ、むしろ別の意味で問題があるといいますか……」

「いーのいーの、そのへんは! さぁ、ひっさびさに暴れるわよー!」

「……ま、今回はそのくらいでちょうどいいでしょ。じゃ、行くわよ皆! 軍やテロリストの相手なんかは知ったこっちゃないけど……内容がただの怪物退治に変わったんなら、私たち冒険者にゃむしろ得意分野だわ。全員、気合い入れて行け!」

「「「応!」」」

全面戦争……第2ラウンド。
正真正銘、双方の全戦力を動員して……リアロストピア中北部を舞台に、今、始まる。



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