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魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第13章 コード・オブ・デイドリーマー

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第235話 決戦、開幕

何か最近よく筆が進みます……いつまで続くかはわかりませんが。
第235話、どうぞ。


『リアロストピア』の正規軍の大部隊は、途中にいくつかある村々を飛ばして、最寄りの砦まで歩みを進めてから休むことにする見込み。
それを繰り返し、村々での査察と徴収……という名の略奪を行うのは、早くて明後日、遅くて4日後あたりから……というのが、今回入手した情報を基に推測した結果だ。

そうなると、僕らの取るべき手は……村々に被害を出したくないレジーナの意思を尊重するとすれば、明後日、軍が移動を始める前にたたいて決着をつける、ということになる。

それならば、普通に考えれば、明日一日……のうちの、日があるうちを準備に使い、夜のうちに襲撃をかけて決着をつける、という方策がいいと思われる。

……普通に考えれば、ね。

で、普通とは程遠い僕らが今、どういう結論を出し、どう動いているのかというと……だ。



結論を言えば……『今日中に潰しちゃおう』ということになった。



いや、今回……移動用に僕がマジックアイテム貸し出したり、非売品の高品質な魔法薬を惜しみなく出したおかげで、今現在……僕ら陣営のメンバーの疲労度、ゼロに近いんだよね。
だからもう、何ならこの後すぐ動けそうなくらいだったのだ。

それでだ。この後、もうさっさと国軍潰しちゃえれば都合がいい点もいくつもあるのである。

まず第一に、今国軍は……途中に合流した数を含めて、ざっと5~6万人くらいの大軍勢になっているらしい。今後、時間を置けば置いただけ、増える。最終的には、10万を超える数になると目されている。

まあ、いくら増えようが叩き潰すつもりだけど、どうせなら楽なほうがいい。

次に、この『リアロストピア』という国の今後を考えて。

アクィラ姉さんからのアドバイスなんだけど、『国』が滅んでも、そこにいる人々や村々といった『社会』そのものが消えるわけではない以上、戦後処理や新しい統治機構の構築なんかは必要になる。その際、当然ながら必要とされるのは……軍隊。治安維持のための戦力だ。

現体制を滅ぼすってことで、それをわかりやすく示すために、ある軍は物理的に減らしておいてしまうのがいいとはいえ、減らしすぎると後がきついらしい。

アクィラ姉さんいわく、『ほどほどに残しておいてもらえます?』とのことで……具体的には、ネスティア、ジャスニア、フロギュリアの3国による支援込みで何とか体制を立て直すことができるくらいには残しておくのが一番いいそうだ。

その残しておいた軍も、大半は、ウェスカーが協力してるらしい『誰か』が企てているクーデターで無力化されるだろう。

で、今頃どこかの砦に到着しているであろう国軍本隊と、合流を狙ってる周辺の部隊を合わせると……消すのにちょうどいい感じの数になるのである。

後は、明日以降になると……本隊が略奪をしなくても、合流前のほかの連中がバカやる可能性はあるってことで……今日中にやることになったわけだ。

で、本隊が動き出した時点の場所はわかってるけど、その後どこに行くかはわからなかった。
場所から推測するに、これから本隊が向かう可能性のある砦は4つある。

なので、僕らはチームを5つに分けた。

チームっつっても、『四大問題児』4人と、その他全員、っていう分け方なんだけど……問題児以外のメンバー(アクィラ姉さんとか含む)は、『オルトヘイム号』に乗って、候補である4つの砦からほぼ等しい距離にある場所にスタンバってもらっている。
で、僕ら4人は、それぞれマジックアイテムで高速移動し、砦の様子を見に行く。

それで、どこに連中が集まっているかがはっきりしたら……見つけた者が通信用のマジックアイテムで連絡。残り3人とオルトヘイム号がそこに駆けつけて、総攻撃開始……という流れになる。

で、さっきから立て続けに入ってきた報告によると、ノエル姉さん、イオ兄さん、ミシェル兄さん……いずれも空振り。

と、いうことは……だ。
まあ、推測するまでもなく、今まさに僕の目の前にその答えが展開されているんだけども。

『ミナト、どう?』

「ビンゴ。いたよ……この砦に」

僕が様子を見に来た、リアロストピア中北部の砦の1つ『北ネオリア砦』。
この砦に、どうやら……本隊約7万人がそろっているようだった。

ただ……ちょっと気になる点が……

『わかった。じゃあ、私たちとノエルさんたちもすぐそっちに向かうから、待ってて』

「いや、ちょっと待ってエルク。なんかその……様子おかしいんだけど」

『? どうかしたの?』

スマホの向こうからのエルクの問いかけに、僕はしばし間をおいて……どう説明したもんか、と考えている。

とりあえず、そのままこの状況を言葉にするなら……砦に入って休んでいると思っていた兵士たちの大多数が、完全武装で外に出てきれいに整列している。全員なのかどうかはわからないけど……数万人はいるだろうな、って人数が、砦の前に集まっていた。

そして、彼らが一応に顔を向けている方向……そこには……

「何だろ、あれ……処刑台?」

数十人の、老若男女入り混じった……どう見ても平民って感じの人たちが、たいまつで煌々と照らされている、かなり大きな……バンドのライブとかができそうな台の上に乗せられている。

その人たちは、大きく2つに分けられている。

何十人もまとまって、身を寄せ合う形で、大の端の方に立たされているのが1つ。
全員、ロープで手を後ろ手に縛られている。それを数珠つなぎみたいな感じにされていて、その端は大きな柱に結ばれていて……その場をろくに動けないみたいだ。

で、もう1つは……数人が、台のど真ん中に、十字架に縛り付けられる形にされていて……なんか見た目一発、これから磔刑にでもされるのか、って感じに見える。
というか、たぶんされるんだと思う。聞こえてくる話の内容から察するに。

さっきから聴覚を強化して聞き取ってるんだけど……『これから不穏分子の処刑を執り行う』とか言ってるし。

『察するに、合流してきた部隊が、いずれかの村に『査察』を行っていたのでしょう。そして運悪く、それが『旧王家派』が隠れ家にしている村だった。その者たちはもちろん処刑……おそらくは、台の中央で磔にされている者たちがそうですね』

と、アクィラ姉さんの推理。

「じゃあ、端っこにひとまとめにされてる人たちは?」

『関係のない村人でしょう。連帯責任か、あるいは不穏分子をかばい立てしていた罪とかの理由で、一緒に処刑されるものと思われます。その結果がら空きになった村からは、兵士たちが家財から食料まで、キレイに略奪をすでに済ませた後でしょうね』

……山賊じゃん、やってること。
同じ組織に属してるとか、監督責任があるとかならともかく……村人全員って……

『そんなこと……許されることではありません! 罪もない民を、そのように……』

スマホの向こうから、正義感の強さゆえに憤慨しているギーナちゃんの声が聞こえた。
次いで、スウラさんの……いらだちを押し殺した感じの声も聞こえてくる。

『……リアロストピアは、一部富裕層とその勢力を極端に優遇した政策が以前から問題視されていたのは知っていたが……ここまで露骨に平民の扱いが酷いとなると、『旧王家派』の者たちが掲げる、今の体制を打倒するしかないという弁も、それなりにまともに聞こえてくるな』

すると今度はザリーが、

『その『旧王家派』も問題なんだけどね……見つかればこうなる可能性があるってわかってて潜伏してる上、貧困や流通不足にあえぐ村の状態を都合よく見て隠れ蓑にしてるわけだし』

『? それ、どういうこと?』

『金がない、っちゅーことは、税もとれへんやろ? だから、貴族はそういう村を一瞥もせんし、軍もそこでまじめに仕事しようとせえへんねん。犯罪が横行してもほったらかし。せやから、そういう村は『旧王家派』に限らず後ろ暗い連中の温床になっとるわけ』

拠点にしとっても見つからへんからな、と、レジーナの疑問にノエル姉さんが答える。そこにさらに、とどめさす形でとんでもない情報をアクィラ姉さんが。

『中には……そういう状況の村を意図的に作り出すために、その『旧王家派』とやらが暗躍した例もあるようです。ちょうどいい潜伏先が見つからない場合、表側の協力者などに依頼して流通を偏らせ、すでにある村を廃れさせ、そこに流浪者を装って定住する、といった……』

……やっぱりこっちも救いようがないね、うん。

支配する連中は、被支配階級の人たちを奴隷程度にしか思ってないし、略奪も当然許されるようなことだと思ってる。こないだちらっと聞いた感じだと、クーデター後に実権を握った連中は特に『自分たちは勝利者だ、成功者だ!』とまあ選民意識がかなり強いようだ。

抗う連中は……こっちはこっちで、一応立派な目的は持ってるものの……そのためなら手段を択ばなくてやむなし、みたいな感じの理念をデフォルトで持っているのでたち悪い。関係ない他人に迷惑をかけることを、(一応)申し訳なく思いつつも平然とやってのける。

ま、それはそれとして……だ。

「どうする? 今まさに、『旧王家派』の巻き添え食って村民の皆さんが殺されそうになってるっぽいんだけど……」

雰囲気からして、もう数分で執行されると思うんだよね。
おそらくは戦争前のプロパガンダなんであろう、この処刑ショー。

兵士の皆さん……全員じゃないけど、結構な人数が面白い見世物を見るような目で見てる。『反逆者め!』とか罵声浴びせたりもしてるけど、顔が笑ってるもん。
類は友を呼ぶんだろうか。結構、クズの割合多い。

ステージの上の、主役待遇の『旧王家派』の連中は『現体制の犬どもめ!』『旧王家万歳! 旧王家派に勝利あれ!』とか、もはやこれまで的に自己満足叫んで……そこにステージ端から『あんたたちのせいで!』『死にたくない!』とかの悲痛な声が聞こえてきてたり……。

見てて、気分のいいもんじゃないな。

『……ミナト、その人たち……助けらんないかな?』

すると、スマホの向こうからそんな声が。レジーナだ。

『その……うまく言えないんだけどさ、私と同じで……その人たちも、巻き込まれただけなわけだし……。その、かわいそうっていうか……私も、私が守りたいと思ってた、私の村の人たちのために、あの茶番に付き合ってたわけだから……感情移入しちゃう、のかな……?』

ちょっと気まずそうに、心なしか小さな声で言ってくるレジーナ。

『ああもちろん、戦略的?にまずいとかなら、無理にとは言わないし、言えないけど……。私が何かできるわけじゃないしさ……』

「んー……僕としては、このまま見捨てるのもアレだなとは思ってたところだけど……」

『……そうですね。助けてしまって問題ないでしょう』

と、今度はアクィラ姉さんからのコメント。

「え、いいの?」

『ええ。戦後復興の最中に、現体制と旧王家派の両方を叩くいい材料になりますから。それに、非人道的行為を見逃さずに行動した、という実績も武器になるでしょう。もっとも……ミナト、それをすると、あなたが確実に見つかって、そこに整列しているという兵士たち全員と、私たちの到着を待たずに戦うことになってしまいますが……』

途中まで、電話の向こうからでも喜びのムードが漂ってきてたんだけど……最後の部分を聞いたとたん、それがきれいに霧散した。

まあ、この数……ざっと数万いる敵兵を相手に僕が1人で、って聞けば、そらそうなるわな。
普通に考えて無理だ、っていう話になると思うし。

……まあ、僕はそうは思わないんだけどね。

「よし、了解。じゃ、ちょっと助けてくるわ」

『え⁉ ちょ、ちょっとミナト⁉』

『ま、待った待った待った! ミナト待った! そ、それじゃミナトあんた、7万人相手に戦うことになっちゃうんじゃないの⁉ い、いくら何でも……』

「大丈夫大丈夫。それなりの用意はしてあるから……それに……」

連中の好きなようにさせっぱなしにしとくのも、面白くないからね。

『現体制』も『旧王家派』も……どっちも僕の敵だ。どっちの思惑も達成できないように、ここで暴れて力技で戦況を動かしてやるっていうのも……面白い。

『……わかりました。ではミナト。その方たちの救出後、私たちが到着するまで耐えてください。可能であれば、一度離脱するか、隠れても構いません』

「了解。でもさ……」

『?』

一拍。

「別に……僕一人で全部終わらせちゃっても、構わないんだよね?」

言いながら、僕は……帯からカードを取り出し、魔力をこめ……投げる。

『Pisces』

着地を待たず、空中で魔法陣が展開……そこから、巨大な魚が現れて……突然のことに驚く兵士たちの視線を浮けながら、台の上の人たちを端から全員丸飲みにした。
そのまま、空へ去っていくのと入れ替わりに……僕は跳躍し、台の上に降り立つ。

で、透明化魔法『カメレオン』解除。僕の姿が、全員に見えるようになる。

「な、何だ⁉ 何が起こった⁉」

「は、反逆者たちが、巨大な魚に……」

「食われた? 死んだ? いや……逃げられたのか⁉」

「それよりも、あの男は何だ⁉」

「奴がやったのか? く、曲者、曲者だ!」

「おのれ怪しい奴……貴様、今何をした! 一体何者だお前は⁉」

「僕? ただの……通りすがりの冒険者だよ」

覚えておけ……とは言わないことにした。別に覚えといてもらわなくてもいいし……それ以前に、こいつらの大半は今から屍になるわけであるからして。

そんなことを考えていると、最前列の豪華な席に座っていた、おそらくは幹部軍人……それも相当に高い地位にいると思しき男が、僕を真正面から見据えていた。
素早く動いた兵士たちによって、周囲を守られていながらも、油断は微塵もしていない様子。ただの偉そうにしてる貴族、ってわけじゃなさそうだな。

その人は、少しの間僕をじっと見ていたかと思うと、何かに気づいたかのような様子をして、

「黒髪に黒目……なるほど、貴様だな? 『旧王家』の生き残りであり……『旧王家派』を先導する中核人物。冒険者という仮の姿を持って今まで隠れ生き延びてきた男……ミナト・キャドリーユというのは」

「全然違うんだけど」

最後だけだぞ、合ってんの。なんだそのおぞましい誤解は。

「嘘を言っても無駄だ。調べはついている……旧王家派に現れた、新たな旗印……その特徴と、お前のその姿は完全に一致する。今も、部下を逃がすために飛び込んできたようだしな」

「訂正しといてくんない? 確かに僕はミナト・キャドリーユで、あんたらの敵だけど……『旧王家派』の味方になんかなったつもりはないから。むしろ、これから滅ぼそうとしてるし」

「何……? どういう意味だ?」

「迷惑なんだよ、はっきり言って。旧王家派だか現体制派だか知らないけど、人を巻き込まないでほしいよ、ホント。戦争なら勝手にやってくれればいいのに、やれ王族だ、やれ宿命だ、やれ反逆者だ、やれ罪深き者だ……どいつもこいつもうるさいから、終わらせに来たんだよ、今日は」

言ってる間に、僕を処刑台ごと取り囲む感じで展開していく兵士たち。
が、別に気にすることでもないので、放っておいている。

「僕はミナト・キャドリーユだ。それ以外の何物でもない。これまでも、これからも。旧王家派の旗印になんてなるつもりもなければ、お前らにつかまって殺されるつもりもない。これから先のことはわからないけど……とりあえず今は、自由な冒険者として好きなように生きる。それを邪魔するなら……僕の平穏な生活や、大切なものに手を出すなら……」

一拍。

「誰だろうと……この手でぶっ潰す!」

黙ってそれを聞いていた幹部軍人は、じっと目をそらさずこっちを見ていた。
その回りで、数の差から自分たちの有利を疑っていないらしい連中が騒ぎだした。

「何を生意気な……反逆者の分際で!」

「将軍! ご命令を! あの愚か者を、われらの手で血祭にあげてやりましょう!」

将軍だったのかあのおっさん……と、僕が思っていると、その将軍さんは、少し目をとじて黙考するようにした後、こちらを再度にらみつけて、

「……貴君の言い分や、戦う理由はわかった。だが、これは国家としての決定ゆえに、その希望をかなえてやるわけにはいかん。ミナト・キャドリーユ、投降を勧告する! 今おとなしく捕まれば、私……リアロストピア共和国大将軍の名のもとに、仲間を含め悪いようにはしない! 現政府には貴君の利用価値を見出している者もいる……協力的にあることを約束すれば、助命も期待できよう! むろん、貴君の仲間たちや、先のような哀れな村の者たちも同様にだ!」

「絶対、やだ!」

「……ならばどうする! 無辜の民を……救える命を見捨てて逃げるか! それとも、本当にこの7万の軍勢を相手にして勝てるだけの自信があるつもりか!?」

「最初からそう言ってんだろー……が!」

言いながら僕は、勢いよく台の上から跳び……整列している王国軍のど真ん中に着地する。
僕が落ちてきた瞬間、反射的にそこにいた兵士たちがざざーっ、と潮が引くようにどいてくれたから、ちょうどいいスペースができてたし。

そして、着地と同時に……帯の中から、この時のためにもってきておいた、あるマジックアイテムを取り出し……手で、掲げるように持つ。
さらに、修理済みの『パワードアームズ』も発動。金の装飾のロングコートを装着。

それを遠目に見て……どうやら、将軍さんとやらも、僕の説得は断念したようだった。

「……かかれ、とらえるのだ! 無理な場合は……殺せ!」

それを皮切りに、僕の周りで一斉に武器を構える兵士たち。
処刑見物のカッコつけのために武装してたから、全員あっという間に戦闘態勢だ。

加えて、飛んで火にいるなんとやら的に現れた標的=大手柄を仕留めんと、将軍さんの周りにいた別な高級軍人連中――俗っぽいというか、貴族が着飾って戦場に出てきてえばってる的な雰囲気がある――が、我先に兵隊たちを動かして僕を殺させようとしている。

そして、僕を囲んでいた円がじりじりと狭まってきて……その中の一人が、雄たけびと共に、槍を構えて突撃してきたのを皮切りに、戦いは始まった――


――という表現は適切ではない。
なぜなら、僕はすでに……着地直後から攻撃を始めていたので。


突撃してきた兵士――槍で突き刺す気満々で走ってきてた。捕える気ないよね君?――は、数歩走ったところで……胸を抑え、泡を吹いて倒れた。
それに続いて走り出していた兵士も、同じようになる。

それに驚いた他の兵士たちは、さすがに無策で突っ込んでは来なかったけど……無駄。
数秒後、動き出していない兵士たちも、ばたばたと倒れだす。

そこに至って、ようやく僕の『攻撃』の正体に気づく者が現れだした。

「毒だ! 毒を使っているぞ!」

「全員、防毒布で鼻と口を覆え!」

へー、防毒布……そんなのが軍の支給品にあるんだ?
でも……果たしてそんなもので、僕の毒を防げるかねェ……?

この僕の新技……『サタンポイズン・火山ガスバージョン』を……。

体内の老廃物と魔力を材料に、『硫化水素』をメインにした毒を作成し、魔粒子と同じ要領で微粒子化……周囲一帯に魔法性の猛毒ガスをばらまいている。

『硫化水素』がどんな毒物かは……まあ、簡単に言えば、濃度次第では、人間なんて一息で簡単に即死するし……金属を腐食させる効果がある。しかも、僕が魔力で強化して生産したものなので、たぶん魔法金属でも時間をかければ腐食させられると思う。

さらに、このガスは実は可燃性であり……それゆえに、僕が今持っている|この武器≪・・・・≫と、すさまじく相性が抜群なのである。

今、僕が手に持っているのは、パッと見ると……薙刀に見えるであろう武器。
正確には、『青龍偃月刀』という種類の武器だ。柄や刃に竜をかたどった装飾がある。ただ、カラーリングは赤に近いオレンジ色だから……『青』龍、かどうかはちょっとアレだけど。
三国志とか、古代中国を舞台にした物語なんかを読むと、よく出てくる武器だ。

「大人数相手に無双するなら……やっぱ武器は長物だよね。ってことで……」

僕の背丈よりもだいぶ大きいこの武器を、ぶぉうん、と振るった……その時、

――ドゴォォオオオン!!

刃から炎が噴き出し……周囲に漂っていたガスに引火。一気に燃焼・爆発した。
その結果、爆風で毒素がさらに広範囲に広がる――引火・爆発しても、する前ほどじゃないとはいえ、十分毒性は強く残る。そうなるように作った――のに加えて、単純に爆発の威力で何十人も兵士が吹き飛んだ。

(……うん、予想通り使えるな……この武器と、この技のコンボは)

吸わせれば即死+金属腐食効果を持ち、火をつければ大爆発する、凶悪な猛毒ガスをばらまく『サタンポイズン・火山ガスバージョン』。

そして、この青龍偃月刀――もとい、振るうと広範囲に超高熱・超威力の爆炎を発生させる、青龍偃月刀型オリジナルマジックウェポンにして……僕の作品の中でも、1、2を争うほどにひどい厨二ネームを持つ武器……その名も『焔魔橙皇エンマダイダイオー』。

爆発に耐えられる僕が、この2つを同時に使うと……ひと振りごとに爆炎と斬撃と猛毒をあたりにばらまきながら暴れまわる狂戦士の一丁あがり、というわけ。

さて……じゃあ始めようか! 7万人のリアロストピア兵諸君!

キャドリーユ家最悪の問題児に……このミナト・キャドリーユに喧嘩を売ったこと、1人残らずあの世で後悔させてやるよ!



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