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魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第13章 コード・オブ・デイドリーマー

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第234話 エルクとダガー



「……それは、一体……どういう意味だ⁉」

「で、ですから、その……今しがた入ってきた報告でして、まだ完全に精査し終えたわけではないのですが……」

「ほかの部署等からも立て続けに入ってきている点、および、いくつかは目撃情報や斥候による調査報告と合致する点もあり、間違いないかと……」

行軍開始初日ということもあり、早めに休むことを事前に決めたリアロストピア王国軍は、天幕を張ってすでに野営の準備に入っていたのだが……そこに、方々から凶報が飛び込んできた。

幹部のみが軍議等に使用できる天幕に、突如として入ってきたいくつもの報告。
詳しい話を聞くために、将軍――この軍の総司令官でもある――をはじめとする、幹部たち全員が集まる中で……そこに通された伝令兵の口から伝えられたことこそが……彼ら全員の度肝を抜く内容だったのである。

これから、戦勝の前祝にと、野営にはいささか不釣り合いな豪勢な夕食を取ろうとしていたことなど、忘却の彼方に追いやってしまうほどに。

卓上に広げられているのは、この国の地図。そこに、軍事上の重要拠点である砦や城塞都市の位置や、その規模等が記されている、のだが……

「こんなことがあってたまるか! たったの……たったの一日のうちに、わが国の北側の砦がほぼすべて落とされたと言うのか⁉」

憤慨して怒鳴る幹部の一人。
その剣幕に、膝立ちになっている伝令兵は、おびえたようにビクッと身を震わせる。

しかしだからといって、自分が持ってきた情報を嘘だと言うわけにもいかない。いくら、幹部たちがそう言ってほしそうにしているとしてもだ。

「たった半日で……砦が大小合わせて9つも落ちるなど何の冗談だ⁉」

「そ、それが……どうやら敵は、いくつかに分散して襲撃を行ったようで……」

「嘘を言うな! 砦を落とすほどの大軍勢を9も動かせば、確実に目撃証言がいくらでも入ってくるだろうが! そもそも連中にそれだけの兵力があるはずがない! 不可能だ!」

「そ、それはその……情報を分析したところ、敵は9に分かれたわけではなく、もっと少数のようです。おそらく、数は4から6ほどで……短時間で1つ砦を攻め落とした後、移動して別の砦の襲撃を行ったものと……」

「バカを言うな! 少数の兵力で一日にいくつも砦を落とすような者などいてたまるか!」

「もしそんな者がいるとすれば、単騎で国家間のパワーバランスすら崩しかねん大戦力、ということになりましょうな」

「あまりに現実的ではない話だ……冗談も休み休み言いたまえ!」

戦とは数。そして武具の質、そして戦略……それは、彼ら『リアロストピア』の軍に属し、長らく指揮を執ってきた者たちにとって、常識以前だった。

確かに、優れた将が指揮をとれば、寡兵で大軍を相手取って勝利することもできる。
歴史を紐解けば、幾重もの策を張り巡らせ、2倍の兵力を覆して戦に勝利した名将の伝説などもいくつも残っているのだ。

しかし……たとえどんな名将が率いたとしても、10人で1000人を相手に勝つなどということは無理なのだ。そこまで極端な兵力差を覆せるほど、戦略は万能ではない。
ましてや、地の利を得ることもできず、準備はおろか戦うための時間も短いとなれば、なおさらである。

挙句の果てに、相手は城にこもっているのだ。城を攻め落とすには、その3倍の兵力を用意しなければならないというのは、戦略を少しでもかじった者ならば皆知っていることだ。

まさか、たった1人で数百、数千の敵を圧倒できるほどの実力者が敵側に複数おり、その全員が高速で移動できるマジックアイテムを所持し、片っ端から砦を破壊していっていたなどと……その場にいる幹部たちは、想像できるはずもなかった。

「し、しかし現に……」

「まだ言うか! それ以上不正確な情報で我らの軍議を混乱させるようなら……」

「待て、お前たち」

混乱から次第に激怒へと感情がシフトし、報告を誤報だと決めつけて伝令兵を糾弾し始めた幹部たちをいさめたのは……将軍。
この軍の頂点に立ち、王政府より権限の一切を譲り受けている、総大将であった。

「将軍! し、しかし……」

「気持ちはわかるが、感情で話をするのは愚行だ。私もその話はいくら何でもことが大きすぎるとは思うが……このような報告が入ってきた意味を考えねばならんだろう」

幹部たちをいさめつつ、将軍は伝令兵に視線を移す。

先程から顔色の悪いその兵士は、今まで自分を怒鳴っていた幹部よりもさらに階級が上の将軍の視線をその身に受け、別に怒鳴られていなくても大いに緊張していた。

「伝令兵。今一度最初から報告を頼む。その際、どれほど小さな情報でも、確認が取れていない不確かな情報でもいい、お前の部署に入ってきた全ての情報を報告せよ。真贋の判断等はこちらで行う。ゆっくりでいい、一旦言った後のことでも構わん。全てだ」

「は、はっ……ではまず……」

そうして話させた情報から、彼らは真贋も考慮して現在の状況を推察する。
あまりにも突拍子もなすぎた先の報告をうのみにはせず、かと言って全てを切り捨てもせず。

しばしの話し合いの結果、軍議は一応のまとまりを見せた。

「ここまで情報が錯綜しているとなると、敵による情報戦略の線も疑わねばなるまいが、火のないところに煙は立たぬとも言う。おそらく、何か所かの砦が落とされたのは事実だろう……ただし、数はそこまで多くはないはずだ。あってもせいぜい、2、3か所だろう」

「しかし、現実に落とされている砦が存在する……すなわち、向こうには短期間で砦を落とすことができる戦力がある、という点が問題だ。どんな手を使ったのかは知れんが、放置すれば北部の戦況が悪化する可能性は高いですな」

「うむ……まあ、われらが率いるこの大戦力が向こうに到達すれば、少数のネズミ共ごとき、ひねりつぶすのはたやすい。とはいえ……無駄にあ奴らに勢いをつけさせてはいいことはない。それに、戦後処理もいろいろと面倒が多い事態になりそうだ……」

そこに至り、彼らは出した判断は……この後、最寄りの砦まで止まらず進軍するというもの。

敵対勢力が、絡め手か何か(と思っている)によって砦を落とすだけの力を持っている、あるいは策をめぐらせていることを危惧し、当初予定していた各村々への査察、徴収は最低限として……一刻も早く奴らの中心勢力を撃滅することを最優先とするものだった。

そしてそのために、今日ここで野営するつもりだった予定を変更。

今日明日で可能な限り進軍すると共に、別動隊として村々への査察を行わせる予定だった軍を途中の砦にまとめ上げ、防衛力を強化。そして、本体が到着し次第それを吸収し、北上を続ける。

伝令兵は、自分が持ってきた情報とは異なる形に収束してしまった会議の結論と、それを基にした方針に一抹の不安を抱きながらも……新たに託された指示を届けるため、その天幕を後にしたのだった。

☆☆☆

「1日で9つ……」

「頑張りました、うん」

さて、ここは……リアロストピア中北部にある、とある廃墟。
正確に言うと……もともとは『町』だったんだけど、内戦その他によってボロボロになり、住民も一人残らず引っ越すか死ぬかしてしまったため、廃れて滅んでしまった町の残骸……とでも言うべきだろうか。

場所的にちょうどいいし、宿泊設備(という名の浮遊戦艦)は持参しているので、寝泊りする場所の問題はない。ここで落ち合うということで集合地点にしていた町なのだ。

僕のチームが『オルトヘイム号』で到着すると、すでにノエル姉さんとシェリー、そしてミュウちゃんとミシェル兄さんが到着していた。イオ兄さんはまだみたいだ。

まあ、集合時間にはまだ余裕があるので、気長に待つことにして、それぞれ自由に時間を使っているところ。

で、僕はその自由時間である今、何をしているのかというと……

「はい、エルク……これ。返すよ」

「……うん、ありがと」

そう言って、エルクに……布に包んでしまっておいた、あるものを渡す。
先の戦いで壊れてしまった、エルクの『ダガー』を。

「…………」

何とも言えないような感じの表情で、エルクは手の中の……包んでおいた布ごと僕が渡した、壊れてしまった短剣を見下ろしていた。

「一応、その……可能なところまでは直しておいたんだけどさ、修理以外の手を加えないようにすると、それが限界で……」

「……そっか。……刀身は、丸ごときれいに残ってたのね?」

エルクの言う通り、この『ダガー』、確かにこないだの戦いでバキッと折れたんだけど……刀身が折れたわけじゃないのだ。

摩耗していた金具が壊れて、柄と刀身の接続が外れてしまっただけ。だから、水晶を削り出すか何かして作られたと思しき刀身は……折れてないどころか、傷やひび一つ入っていない。
柄の部分を作り替えて付け替えれば、そのまま再利用できるだろう。

ただし……柄の部分は、結構豪快に壊れてしまっている。

今言った、刀身との接続の部分はほぼ全損。パーツも、あの戦いで飛び散ってしまったため、そっくりもうなくなってるし……鍔の部分も、三分の一くらい欠けてしまっている。
柄のほうにまでひびが走ってしまっている始末だ。

専門家として言わせてもらうと……これはもう、直せない。

これを直すとすれば、それは結局……金属を溶かして、さらに足りない部分の体積を他の金属を継ぎ足して合金にして補い、整形して新しい柄にして、刀身をつけることになる。
ひびや破損部分だけを修繕して使うのは無理だ。強度的に厳しすぎる。

それをエルクもわかっているんだろう。
たっぷり1分ほど、悲しみや寂しさのこもったまなざしをその短剣に向けていたかと思うと……おもむろに、それを再び布で丁寧に包んだ。

「……ほんとバカね、私って。あんたに初めて会ったあの頃から……ちっとも変わってない」

そして、ぽつりぽつりと……そんなことを話し出す。

「思い返せば、あの時も私……コレが原因で、あんたにとんでもない迷惑かけたんだっけ。騙して、裏切って、襲って……でも、結局何もかも助けられて……それなのに……」

「あのねエルク、あの時も僕言ったけど、別に僕は……」

「わかってる。気にしてないし、その分の謝罪は受け取った……そう言いたいんでしょ?」

僕の考えてることを、いつも通り的確に先読みしてくるエルク。

「わかってるわよ、それは……だから、あの時のことは私も、未熟な時分に世話になった、って思うようにしてる。でも……今回は、さすがに……ね」

溜息一つ。思い出すように、宙空に目を泳がせるエルク。

「前々から、何度も言われてたことだった。この短剣、寿命が近い……って。そりゃ、激しい戦いを何度も経験すれば、いくら業物のマジックアイテムでも、こうなるわよね……ましてや、数百年前の遺跡から出てきた出土品だもの。……こうなることは、わかってた」

なのに、と……ぐっと悔しそうに下唇を噛む。

「私のわがままで……あんたに、いや、みんなに迷惑と心配かけて……。素直にあんたやシェリーの申し出を受けてたら、こんなことにはならなかったかもしれないのに」

「いや、それは……こう言っちゃなんだけど、僕の力不足でもあるから。事前にエルク……だけでなく、みんなに渡してた防御術式なんかも、力不足だったみたいだし」

僕は普段から、『邪香猫』のみんなに使ってもらうマジックアイテムや武器・防具なんかを作ってるわけなんだけど……小さな小物とかアクセサリー類には、いろいろと防御用の術式をなるべき仕込むようにしている。

例えば、戦闘の際に相手が使ってくるかもしれない、精神に干渉して隙を作らせるようなタイプの魔法やマジックアイテムから身を守ってくれる術式を組み込んだり、とか。

その中には、こちらの意にそぐわない形で魔法的な干渉をしてくることを妨げる魔法――転移魔法も防御対象に含む――も組み込んであったんだけど……今回、その組み込んでいた術式が、転移魔法の出力に負けてしまい、役に立たなかった。
かなり防御範囲を広げたせいで、汎用性の代償に出力が小さかったのかも。要改良だ。

「それでも、私があんな、バカみたいに大きな隙を見せたのは、このダガーが原因だし……さらにその原因を作ったのは、火種をつぶしておかなかった私の自業自得そのものなの。だから、そこはきちんと反省しなきゃいけないし……謝らなきゃいけない。……本当に、ごめん」

そう言って、頭を下げるエルク。後頭部が見えるくらいに。

……女の子にこんな風に頭を下げられることが苦手な僕だけど……これは、黙って受け取らなきゃいけない謝罪であるような気がした。エルクは、本当に心の底からそうしたがっていることがわかるから。

時間としては、ほんの1秒ほどのことだったけども……一拍を置いた後、僕は、左右からエルクの肩を抱くような形で姿勢をもとに戻させて、

「ありがと、エルク。エルクって、いつも……ほかの誰より自分に厳しいよね」

「……買い被りよ、私なんか……」

「いーや、これは否定させないよ? 断言できる、そうだって。僕、君のそーいうところも含めて全部、好きになったんだから」

と、言うと……かああっ、と目の前でエルクの顔が赤くなあぐっ⁉

唐突に、下から勢いよくエルクの手が伸びてきて……僕のあごをとらえ、ぐいっとカチ上げるように、僕の顔を上に押し上げてそらした。
僕の目には、もうそろそろ暗くなり始めている空しか映らなくなる。あ、月出てるもう。

あの……これはこれできれいな景色だとは思うけど、何これ?

「あのー、エルク、さん? ちょっと、これだと君のかわいいお顔が見えないんですけども……ってか、地味に首痛いよ?」

「だからよ! そのまま上向いてなさい!」

「? いや、なんでわざわざ僕首痛くしなきゃ……な、何か怒らせることした?」

「そうじゃなく、その前……っ、何でもない! いいからしばらくこのまま!」

と、ツッコミ系の怒声……にしては若干上ずっているというか、変に高い感じに聞こえた気がするんだけど……と思っていると、

「察するに……ミナトさんに何かうれしいこと言われたせいで、顔は赤いわ口元はにやけてくるわでちょっと見られたくないからしばらくよそ向いててっ、ってところだと思いますー」

「「!?」」

そんな声が。

目の端でどうにか横を見ると……さっきまではいなかったはずの、エルクと並び、我がチームのもう1人のキュートなジト目の持ち主であるミュウちゃんが、大きめの瓦礫を椅子代わりにして座り、にやにやとこっちを見ながら笑っているところだった。

「みゅ、ミュウ⁉ あんた、い、いつの間に……」

「つい今しがたですよ。ご飯がそろそろできるそうなので、呼びに来ました。そしたらまあ、見事に2人だけの空間に入っていましたので、声かけるタイミング伺って気配を極力殺していたというわけです、はい。こんな風にして」

言うが早いか、ミュウちゃんは得意の猫変身で、クリーム色の子猫に変身。
にゃあ、と一声鳴いて……そのまま瓦礫から飛び降り、走り去っていった。

「あ、こ、こら!」

「早めに来てくださいねー♪」

制止に応じず、ネコ科動物らしい素早さで視界から消えるミュウちゃん。

ひっかきまわされた挙句後に残されたエルクはというと……まだ赤みの残る頬のまま、固まっていて……あー、どうしたもんかコレ……

……とりあえず……

「ねえエルク、今の話ホンtぐはっ⁉」

「よりにもよって何を聞いてきてんだあんたは!」

さっきはやわらかい手が当てられて押し上げられた顎に、今度はいいアッパーが入った。

いや、ごめん……つい、その……見たくて。
エルクの赤面顔、冗談抜きにかわいいから。

「あんたはいつもいつも……不意打ち気味に変なタイミングで褒めきたかと思えば、今度は変なところほめてくるし……っ! 別に私の赤面なんか見たところで、面白くも何ともないでしょうに……」

「いやいや、それはない。忘れたの? ほら……あーもう1年以上前だけどさ、僕がエルクの最強コンボ食らって気絶させられたの」

「はぁ? 最きょ、って何を……ああ、あれか……」

少し考えて、思い至ったらしい。
そう、あれは……『ナーガ』との戦いが終わった、あの日の夜。僕とエルクの関係が、一歩進んだあの夜のことだ。

当時、思春期真っ盛りのエロガキと化して、おっかなびっくり花街デビューなんぞ考えていた僕のところにエルクが来て……その後、何やかんやあった後に、僕はエルクから『ほっぺにちゅー』というとんでもない不意打ちを食らった、

しかもその時、僕の女の子のストライクゾーン五大要素である『ジト目』『強気』『眼鏡』『赤面』『ツンデレ』を全装備した状態のエルクに『べっ、別にあんたのためにやったんじゃないんだからね!』的なセリフを言われた結果……僕は、キレイに気絶した。

あの当時から僕、落石が頭に直撃しようが気絶しないレベルの頑丈さはあったはずなんだけど……ものの見事に、いとも簡単に意識を刈り取られた。

だからほら、自覚してよエルク。君の攻撃はホントに僕に対しては、防御力無視してダイレクトにくるものばっかりなんだから。

「あいかわらずよくわからん価値観してるわね、あんた。こないだも確か、そう……何つったっけ? 男が憧れる女の子とのシチュエーションベスト3、とか何とか言って」

? 男が憧れる、って……ああ、商隊の男衆や、僕ら以外の護衛の皆さんに酒の席で絡まれてた時に話題に上がったあれね。

酒がだいぶ回ってた人が多かったことや、酒が入ると下ネタが増える人が多かったことも手伝って……その人たちの大半は『何人もの美女がベッドの上で云々』『絶世の美女を嫁にもらって毎晩どーたらこーたら』『金を稼いで毎日朝まで花街のキレイどころをアレコレ』って感じのものが多かったんだけど……僕の場合、エロ系よりかわいい系のシチュエーションが好きだ。

なので、その時パッと頭に浮かんだ僕のベスト3は……ええと、たしか……

「『口のはたについてるクリーム的な何かをとって食べてくれる』『身長差のある女の子が背伸びしてちゅーしてくれる』『寒い日に長いマフラーを2人で一緒に使ってあったまる』『お風呂上がりの女の子が男物の大きいサイズのシャツ1枚だけ着てる』……だったわよね?」

「……4つあるけど」

「あんたこの4つから絞り込めないってその時言ってたじゃないの。その後、男連中に『色気はないけどそれもいいな!』って同意されてうやむやになってたけど」

ホントよく覚えてくれてるな、この子は……。

さて、空気もいい感じに落ち着いたところで……そろそろ、ご飯食べに行こうか。

☆☆☆

ご飯の用意ができているということで、ここでごはんにしよう、と決めていた広場に向かう。
オルトヘイム号の食堂で、と最初は考えてたんだけど……イオ兄さんは入れないので、野外でバーベキュー的に食べることにしたんだよね。

その会場である、広場に行ってみると、そこには……予想外の人物が。

まあ、イオ兄さんがようやく到着してそこにいた、ってのはいいとして……

「……ふぅ、どうやら間に合ったようですね。飛ばしてきた甲斐がありました」

何でここに、アクィラ姉さんが? しかも……後ろに、スウラさんとギーナちゃんを引き連れて。



とりあえず、立ち話もなんだし……せっかく作ってもらった料理が冷めるのも嫌なので、みんなで食べながら話すことに。
量ならあるので、アクィラ姉さんたち3人もご一緒していただくことにした。

で、そこで聞かせてもらった話によると……どうやら、こういうことらしい。

僕があの……何とかって砦からエルクを奪還する前に、『リビングメール』でドレーク兄さんたちに『ちょっと国滅ぼす(略)』って伝えた後、当然のようにネスティアは即座に必要な対策をとる必要が出てきた。何せ、隣国が滅ぶんだから。

それに関する情報が一刻も早く欲しい+できればそこで何かがあった時、ネスティアにかかる火の粉が最小限で済むようにコントロールしたい、ってことで……僕と仲がいいスウラさんとギーナちゃんがまたしても動員されることになったらしい。

しかし、その2人では、僕の陣営に潜り込んで助言した情報を得ることに問題はなくても、何かが起こった時対処するだけの力が足りない。

2人とも結構強いことは強いんだけど、いくら何でも国家規模の戦争が起ころうとしてることを前提に据えるとなると、それもかなり厳しいというか、頼りない。

そのため、いざという時でも力技で対応できる大戦力として+僕に対する影響力も大きいほうがいいってことで……アクィラ姉さんが選ばれたんだそうだ。

「つまり、僕のお目付け役ってわけ?」

「そうとも言えますし、そうでないとも言えます。別に私は、あなたの行動を邪魔するためにきたわけではありませんから。状況の変化に応じて、必要な対処を物理的および政治的に行うだけですので、今ミナトが進めていることは、そのまま続行していただいて大丈夫ですよ?」

あ、別に隣国が滅ぶのは止めないと。

「ええ。すでに王宮では準備は着々と進んでいますので」

「準備?」

「滅んだ後のリアロストピアの暫定自治府等に政治的に介入する準備です」

しれっとそんなことを言う姉さん。
何気にすごいこと言ってるよな……この人、一応公人だったはずなんだけど。

「公人である前に、あなたの姉であり……エルクちゃんは私にとって、未来の妹ですから。直接は聞いたことはないかもしれませんが、十分に知っているでしょう? 私たち『キャドリーユ家』は……家族や、大切なものに手を出す奴は、誰だろうが何だろうが絶対許さない、って」

うん、知ってる。
母さんに言われたしね。もしそんなことがあったら……相手が国だろうが構わない、滅ぼしてでも大切なものを守れ、って。

「あなたが言う通り、私は公人です。ですから、感情に任せて暴れるというのはさすがにまずいんですよ……私個人の問題ならともかく、籍を置いているネスティアにも迷惑がかかりますから。でも、だからといって止める気は全くないので、存分に暴れなさい、ミナト」

あと4、5日待ってくれたら、私かお兄様のどちらかだけでよければ参戦できたんですけどね、と最後に付け加え、すごくいい感じの笑みを浮かべている。

で、代わりってわけじゃないけど、アクィラ姉さんは、この戦いの観察ともう1つ……非戦闘員や、戦闘に関係ない人たちを守るために立ち回ってくれるそうだ。
人道支援とか、そういった感じの行動になるんだろうか? この場合。

それに加えて……スウラさんとギーナちゃんを僕に貸してくれるらしい。

「え、でも、それってまずいんじゃ……? 2人とも軍所属だよね? 他国で暴れるのって、後々問題になったりしないの?」

軍人って、要するに『公務員』だし。アクィラ姉さんとは地位こそ違うけどさ。

「問題ありませんよ? 今回、彼女たちはここを通って『ローザンパーク』へ向かう外交特使の護衛役として同行しており、その障害を排除するために最低限の自衛および警察権行使の権利を有しています。つまり、その目的達成のためであれば、武力行使可能なわけです」

「あ、じゃあ今回の戦いも、そういう建前でやるのね……」

「ええ。そういうわけなので、スウラ・コーウェン少佐、ギーナ・シュガーク上級騎士。こちらに手を出してくる者があれば、今後の外交上有利になりそうな人から順にジャンジャン逮捕してしまってくださいね? 下っ端はいりませんので処分しても結構です」

「「はっ!」」

びしっ、と2人そろって敬礼。

かなりとんでもない命令だけど……軍人らしく上官の命令には忠実らしい。
あるいは……雲の上の人すぎてそこんとこ気にする余裕がない、とも考えられるけど。特にギーナちゃんとかそのへんは。

「しかし……驚きましたね。まさか、ミナトが……ベイオリア旧王家の出だったとは」

と、アクィラ姉さん。

ああ、言うのが遅くなったけど……僕はさっき、話の時、現状を正確に把握してもらうため、みんなに『代理出産エピソード』のことを話してある。
今回明らかになった、僕の『最初の』身の上のことまで全部含めて。

驚かれたけど、そのあとすぐに……『別に気にしない』って、全員から言ってもらえた。
『生まれが特殊だろうと、家族、仲間であることに変わりはない』って。純粋にうれしかった。

というかむしろ、アクィラ姉さんは僕が『ベイオリア王家』の血縁であることが気になるようだった。外交的にいろいろとあれな要素があるとかないとかで。

でも……その『ベイオリア』に関しては、今後特に意味はなくなると思うんだけどな。
その肩書というか、血筋その他が意味がなくなる=こっちにちょっかい出してくる理由がなくなるように、この後『リアロストピア』と一緒にぶっ潰すつもりでいるから。『旧王家派』とやら。

……まあ、ウェスカーが過激派と一緒にそっちの対処もある程度するみたいなこと言ってた気がするけど。そうなったらそれで楽でいいな。

「さて……ほな、まとめると……お?」

と、ノエル姉さんが何か言いかけたところで……何かに気づいたように空を見る。
その視線の先を追ってみると……1羽の鳩みたいな鳥が、僕のところに降りてくるところだった。その足には……手紙が。伝書鳩?

……いや違う、この魔力の感じは……

「……あいつの『召喚獣』か……?」

その予想は当たっていたらしく、足についていた手紙を受け取ると……ふっ、とその場で鳥は空気に溶けるように消えてしまった。

その場にいたみんなが多少なり驚いている中、手紙を開いてみると……なるほど。

「ミナト。何それ? 誰から?」

「ウェスカーから。王国軍の最新情報」

その言葉に、何人かがさらに驚く。
何で新進気鋭の闇組織の大物からそんな手紙が!? って感じの表情を浮かべてる人が多いけど、説明は後でさせてもらうとして……手紙の内容は、こうだった。

どうやら、ようやく王国軍にも『砦大量に陥落』の報告が入ったらしいんだけど……幸か不幸か、連中はそれを本気にしてないらしい。
誤報だと勝手に決めつけて……せいぜい落ちたのは1つか2つだろうと思ってるそうだ。

しかし、一応それなりに危機感は抱いたそうで……村々への査察という名の略奪は最低限にして、速度重視で進軍+過激派の本拠地の粛清を最優先でこなす方針みたいだ。

……村々への粛清はそのあとやるとか。結局やるのかい。
まあ、その頃にはそんな余裕は間違いなくなくなってるだろうけど。

さて、コレを踏まえて、今後どう動くかだけど……


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