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魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第13章 コード・オブ・デイドリーマー

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第233話 長い一日の始まり



「全軍、前進!」

リアロストピア王都での会議により、『旧王家派』ならびにその縁者への対処の方針が決まった……その2日後。
場所は、『ネオリア』の郊外。

そこに……一見して数万にもなる数だとわかる規模の『リアロストピア正規軍』が整列し、上官の命令と共に、行進を開始していた。

もともと城には、近々大規模な摘発を行うために、兵士達が大勢集まっていた。
それを、今回の大規模粛清作戦のために、装備から補給まで全ての準備を整え、最低限防衛に必要な数を残し、再編成された軍隊……その数、実に4万。
さらに、道中立ち寄る砦でさらに合流し、最終的には今の倍以上の数が集まる。

これから彼らは、行く先々で町や村を1つ1つ回りながら、粛清対象であればしかるべき処断を行い、問題なければ、その次の村までの食料や備品を補給して進んでいく。
そして、リアロストピア北部にある、『旧王家派』の拠点と見られている町で、その兵力を持って彼らとその協力者――貴族達が、ミナトらをしてそう呼んでいるわけであるが――を一網打尽にする粛清を行うことになっている。

そしてそのために、『旧王家派』に潜りこませているスパイに命じて、人質を取るなり、近傍にいる軍の部隊を手引きするなりして、ターゲットであるミナト達を目的地まで誘導する……というのが、今回、貴族達が考え出した作戦だった。

そんな建前と、そこに隠れた貴族達の下卑た思惑と共に……軍は一路、北へ進軍する。

――その作戦が、始まる前から頓挫しているとも知らないで……。

☆☆☆

――リアロストピア中北部、アノルガース砦――

「ほ、報告しろぉ! 何が起こっている!?」

「わかりません! い、いきなり炎が……うぎゃああぁぁあああ!?」

「て、敵襲、敵襲―――!!」

「見ればわかるわ、そんなことはぁ!」

「くそぉ……何なんだ、誰なんだよお前はぁ!?」

突然の敵襲にパニックになる砦にて……その襲撃者を視界に捕えることが出来ていた1人の兵士が……眼前にたたずむ1人の女に向けて、叫ぶように問いかけた。

その視線の先にいるのは……クリーム色の髪に、狐の耳と尻尾、そして……手にしている、独特な形の刀剣が特徴的な、1人の(見た目は)若い女性だった。

「――あァ?」

女性――ノエルは、兵士の問いかけに、静かに……しかし、凄まじい殺気と共に視線を向ける。
たったそれだけで、気の弱い兵士は体が動かなくなってしまっていた。彼のよく知る『実力者』達……自分の上司や、剣の師匠が、部下へのしごきの際に見せる怒気とは、あまりにもレベルと……種類が違いすぎた。

「『誰』……か。つい数日前に喧嘩売ってきてくれよった癖に、終わってもーたら関係あらへん、ってか? ええご身分やなぁ……あの襲撃の時に動員された部隊の連中がここに逃げ延びてきとるんも、アレに乗じてちょろまかしよったうちの商品がここで山分けにされとるんも、ネタはとっくに上がっとんねやで?」

ミナトが壊滅させた『ガーソン砦』以外にも、あの晩の襲撃部隊の残兵の帰投先となった砦はいくつかある。その1つが、この『アノルガース』砦だった。

ノエルの言葉から、目の前にいる者の素性を察した兵士は、焦りと怒り、それに恐怖がごちゃまぜになった、妙に甲高く上ずった調子の声で、

「あ、なっ、き、きさ……あの商隊の……! こ、こんなことをしてただで済むと思っているのか、商人風情が! 我ら正規軍に楯突こうなど、言語道断だぞ!」

「先に喧嘩売って来たんはそっちやろ。襲って燃やして奪って盗って……山賊まがいのことしてくれよってからに。恨まれとらんとでも思っとったん?」

「う……うるさい! アレは任務中のことだ! 我々は任務として不穏分子を摘発し成敗するために戦い、その場にあった物品を接収しただけだ!」

「そうだ! 公務の上での正当な行為だ! それを貴様……許されることでは無いぞ!」

「商人かその用心棒だか知らんが、生意気な! 黙って我々に協力していればいいのだ、むしろ、国の平和を守る我らの役に立てることを光栄に思え!」

「…………くくく……」

再び放たれる殺気。それと共に、小さいが妙によく通る、押し殺した笑い声。

そして次の瞬間――

「ホンマになぁ……状況わかってへんやろ、あんたら?」

横一文字に降りぬかれる、妖刀『朱星』。
その瞬間、兵士達は一様に……胸の辺りに鋭い痛みと熱を一瞬だけ感じ……すぐに、何も感じなくなった。そんな段階は、通り過ぎてしまった。

屍となった兵士達の、肩の当たりから上と下が泣き別れになり……胸像のような見た目の死体がいくつも出来上がる。

「ま、そのことがなくても、あんたらは勝手な都合でミナトに……『キャドリーユ家(うち)』に見事に喧嘩売ってくれよったんや。落とし前……きっちりつけてもらうで」

「あ、ノエルお義姉さま~! 2階、終わりました?」

と、そんな軽い調子の声と共に……下の階から階段で上がってくる者がいた。

手にした炎の魔剣に猛火を纏わせ、無造作に近くの壁を焼け焦がしながら上ってくるのは……シェリーである。剣を持っていないもう片方の手には……大きな袋を持っていた。

「ま、こんなもんやろ……火ぃの回りが早ぉて、上の階の連中、降りるに降りれへんみたいや。煙もどんどん昇って行っとるからどっち道危なそうやけどな……それで、どやった?」

「ありましたよ? ほら」

言いながらシェリーは、手にしていた袋を開け……中に入っている、色とりどりの宝石や、見た目でも貴重な素材化何かだとわかる鉱石類などをノエルに見せた。

宝物庫から強奪してきた財宝……というわけではない。
保管庫に閉まってあった……先日の『襲撃』の際の接収品の一部である。つまりは、強奪された『マルラス商会』の取扱商品だ。

ノエルとシェリーの『火炎×剣士コンビ』は、襲撃したこの砦で、接収されたもののうち、特に高価だがすぐに金に変えるのが難しいであろうものがまだ残っていると見て、手分けして探していたのである。途中襲ってくる兵士達を、容赦なく焼き払って。

取り返していたのであって、決して、強盗のようなことをしていたわけではないのだ。

「ま、財宝そっちの方も貰うけどな、この後で」

「あ、そうなんですか?」

取り返していたのであって、決して、強盗のようなことをしていたわけではないのだった(・・・)

「慰謝料と損害賠償やそんなもん。『公務』の中で出た被害やったら、普通に考えて補償対象やろ。正面から言うても払ってくれるわけあらへんし、逆に難癖付けられるの目に見えとんのやから、差し押さえさせてもらう。関税とかも足元見てバカ高かったし、丁度ええわ」

(わー……ノエルさん、怖ーい。容赦なーい)

戦闘能力や手段ではなく、その容赦ない思考回路に……いつも笑顔で応対し、時折ミナトにツッコミを入れる狐耳美女とはかけ離れた凄みを感じ取ったシェリーは、その背中を黙って追いかけた。

この数十分後……アノルガース砦は、全焼という形で陥落を迎える。

☆☆☆

――リアロストピア中北部、ベントロワ砦――

「ひ、ひぃぃいいっ、何なんだよ、こいつらはぁ!?」

「ビビッてる暇があったら1匹でも多くぶち殺せ! このままだと本当に門を……がっ!」

「せ、先輩っ! ちくしょう……この骨野郎がぁ!」

「どうして……どうしてこいつら、ここを襲って来るんだよぉ!? あともう数日で国軍が来て、俺達も大規模な作戦に参加するっていうから、準備でただでさえ大変だったのに……」

(そりゃまあ……数日後に国軍が来る予定の砦だから襲ってるんだもんねぇ)

城門を死守すべく、剣を振るい、槍を突き出し、盾を構え、矢を、魔法を放って、死に物狂いで戦う兵士達。

対するは……数百数千という数になるであろう、ガイコツの魔物『スケルトン』の軍勢。
そして、それを生み出し、操っている黒衣の男……ミシェル。

「ここ、どうやら軍の糧食や物品その他の集積地でもあるみたいだからね……まずはここを攻め落とせばアドバンテージになるし、溜め込んでた物資はそのまま貰っちゃえる。となれば……ノエル姉さんみたいに焼き払うのも、イオ兄さんやミナトみたいに全部ぶっ壊しちゃうのもまずいから……僕がやるのが適任ってわけだ」

「で、私はそのお手伝いと。まあ、確かに似たような技能持ってますけどもね」

ミシェルの隣では、彼と『召喚・使役コンビ』を組んでいるミュウが、彼と同様に次々に魔物を発生させ……進軍に参加させて城攻めをさせている。

ミュウの『召喚術』は、ミシェルの『死霊術』とは違い、すでに用意されている魔物を召喚する形なので……魔力がいくらあっても、それ以上の魔物を呼び出すことは出来ない。
ただし……通常は、だが。

今、ミュウが召喚している魔物は……彼女の背後に3体立っている、スケルトンだ。
しかし、ただのスケルトンではない……よく見ると、外見からもそれがわかる。

形はスケルトンだが、材質が骨ではなく……プラスチックのようなものでできているのだ。
そして、肋骨の内側に、丸い水晶玉のようなものがある。透明度が高い上、肋骨と防具のせいで見えづらいが。

結論、というか答えを言ってしまうと……この魔物、ミナトが作ったCPUMである。
その名は『スケルトンスライム』。その名の通り、スケルトンの形のスライムだ。

ただムダにスケルトンの形をして、スケルトンのように剣やら何やらで戦うだけ、というわけではもちろんなく……スライムゆえの強みも残している。

まず、核が無事である限り再生できる。
スケルトンを象って硬質化しているため、スケルトン同様斬撃に強く……しかしある程度の柔軟さも残しているため、打撃にもそこそこ強い。

仮にそれを打ち破って砕かれたとしても……核が無事なら、それを中心に肉体(液体だが)を再構成して復活し、また戦える。さらには核の硬度は金属以上なので、防具と肋骨に守られた状態であれば、一撃で壊されるようなことはそうそうない。

加えて、任意に体をスライム状にすることも出来るため、敵に密着した瞬間に体を液化させて酸の体液で溶かす……などということもできる。

そして、十分な水分と魔力を糧に分裂することが出来る。
ミュウは先ほどから、この能力を使って、際限なくスケルトンスライムを発生させているのだ。契約しているのが3体だけでも、水と魔力さえあればいくらでも増やせるのだから。

今、ミュウとミシェルは、砦から少し離れた所の湿地帯にいる。川が近くを流れ、地面の湿気がかなり高いため、あとは魔力だけでいくらでも増やせる、というわけだ。

その『魔力』も、本来は有限である……が、そこを解決したのは、ミナトの発明品だった。

現在、ミュウとミシェルが腕に装備している腕輪……そこから、彼らの背後にある巨大な貯水タンクのような機械に、コードが延びている。

この機械こそ、ミナトが作った『魔力炉』であり……ここからの供給を受けて、ミュウとミシェルは無尽蔵のスケルトンの軍団を生み出し続けているのである。無限に魔力を発生させるわけではないが、戦闘1回分の魔力を供給するくらいは十分に可能である。

……なお、この『魔力炉』は、以前からミナトが『オルトヘイム号』の動力源として使っているものを小型化したタイプのものであり……最近ミナトが作った、ある同種の危険な発明品とは別物であることを追記しておく。

そうこうしているうちに、砦からは鬨の声よりも悲鳴が多く聞こえるようになってきていた。

「んー……地道なやり方だけに、時間かかるね」

「そこは仕方ないでしょう。でも、予定より時間押してますね……ちょっと急ぎません?」

ミシェルは、ミュウの問いに『そうだね』と返すと……スケルトンだけでなく、ドラゴンの形のスケルトンを一緒に作り出し始めた。
そして、その背中に、スケルトンとスケルトンスライムを乗せ……空から攻めさせる。

「これで早くなるでしょ」

「そうですねー」

この数十分後……ベントロワ砦は、占領という形で陥落を迎える。

☆☆☆

――リアロストピア北部、ナジャム砦――

ここについては、あまり説明の必要は無いかもしれない。

「ぬええぇええい!!」

「「「ぎゃあああぁぁぁあああ――――っ!!」」」

巨大な金棒のような武器を振り回し、力の限りに暴れているだけ。
それだけではあるが……彼・イオの巨体から繰り出されるその一撃一撃は、急激に砦の体積そのものを減少させていた。

「と、止めろォ、奴を止めろォ!」

「無理です、止まりません! 攻撃がまるで効きません!」

「魔法や矢で狙い打て! 投石器も使え!」

「使っていますが……効果ありません! もともとの防御力に加え、体表面に何らかの……魔力的な障壁のようなものが展開しています!」

自前の武器である金棒と、ミナトが用意したバリア発生用のマジックアイテム。
超攻撃力と超防御力を両立させた今のイオは、ただひたすらに破壊を振りまく存在となって、軍事拠点である砦を崩し続けていた。

兵士など狙わなくても、破壊の際の崩落で勝手に死んでいく。

そこに更に、追い討ちをかけるような存在が……反対側から現れた。

『モ゛ォォォオオ―――ッ!!』

「……っ、な、何だぁ!?」

「う、牛です! きょ、巨大な牛がこちらに向かって……」

「見ればわかる! アレは何だと……? 背中から何か……うぎゃああぁあ!!」

イオが破壊している側とは逆側から襲ってきた、巨大な鋼の牛……CPUM『バッファロー』。
その背中から放たれた大量のミサイルが、比較的無事だった砦の逆側を破壊していく。

それを見て、イオは……

「ぬぅ……確かにここの砦は、ほとんど更地になるまで破壊するのが一番ではあるが……あの爆ぜる筒はちとこちらも危ないな。おい、牛! できれば、打撃攻撃のみでやれィ!」

その指示に、『バッファロー』は『モ゛ォッ!』と吼えると、ミサイルの発射を止め……頭(というか、角)から砦に突っ込んだ。
そして、前足を連続で踏み鳴らしたりして……指示通り、物理攻撃で破壊していく。

「うむ、それでよし! しかし、中々頭がいい牛だな。愛嬌もあるし……移動手段と破壊の手伝いぐらいに考えていたが……後でミナトに、似たようなのを一頭もらえんか頼んでみるか」

そんな感想を抱きながら……イオは、破壊と言う名の作業に戻った。

この数十分後……ナジャム砦は、全壊という形で陥落を迎える。

☆☆☆

場所は、リアロストピア北部、フランドル砦。
現在時刻……昼過ぎぐらい。

「………………」

「………………」

「…………なんか、作業ゲーみたい」

「「は?」」

「ああいや、こっちの話」

その砦は今……空中にいる浮遊戦艦から、雨あられと降り注ぐミサイル群によって、すでに半壊状態にあった。
まあ、僕がこの『オルトヘイム号』から降らせてるんだけど。

現在、この『コントロールルーム』には、ネリドラ、僕、クロエがいて、船の武装とかレーダー機器とかを操作している。
けど、多分1人だけでもどうにかなったと思う。基本的に火力高いし、この船。

城壁は焼け落ち、本丸は炎上。もう何もしなくても、数十分後には崩れ去るだろうと予想される。
……けど、あえて止めを刺してみる。

ど真ん中に、全部貫通するようなコースに設定して……と。

「『荷電粒子砲』……発射、っと」

はい、発射しました――はい、キレイに消滅しました。
端っこの方の城壁のかけらが少し残ってる程度で、本丸やら何やら、全部キレイに消し飛んだ。

こうしてここ、フランドル砦は、消滅という形で陥落を迎えた。

ほぼ更地。まあ、キレイに平らじゃなくて、盛大にえぐれてる……どころか、超のつく高熱のせいで地面が溶解して、ドロドロのマグマオーシャンになってるけど。

……まあ、この近傍の軍に集結されて軍事拠点にされると厄介な場所で、跡形もなく消し飛ばすくらいが丁度いい砦だったわけだから……別にいいか。
とはいえ、やっぱりちょっとやりすぎたような……?

けどまあ、やっちゃったもんは仕方ない。
とりあえず次の攻撃目標の所まで移動する間に……今後の展望でも考えてようか。

まず僕らは、昨日ウェスカーから早速届いた情報をもとに、どういう感じでこの国に落とし前つけてもらうかを話し合った。

まず懸念として……この国の軍の連中は、今回の僕らおよび『旧王家派』の討伐にかこつけて、各地の町や村に部隊を派遣して査察を行い、不穏分子の粛清を行うつもりでいるらしい。
要するに……抜きうちのガサ入れだ。大規模な。

情報によれば、不穏分子が見つかれば……その人数や問題行動の度合いに応じて罰が科せられ……よくて連帯責任で村全体の増税、悪いと村全体の粛清までありうるらしい。

しかし、問題がなくても褒美などは当然なく、さらに今後の軍事行動のために、備蓄してある食糧とか物資の一部を徴収していくってんだから……もう完全に追いはぎである。
一応、お金は払うみたいだけどね……かなり割安なお値段で。

挙句の果てに、無実でも何かしら難癖つけて罰を科したりすることもあるってんだから最悪である。ホントにただの盗賊じゃないかこいつら。

まあ、軍の兵士の皆さんが悪いんじゃなく、その上に立ってる貴族の連中が悪いのはわかってるんだけどもね?
ウェスカーからの資料に、そのへんも書いてあったから。

つか、ホントにアイツ、一晩でよくこんだけ詳細な資料作ったもんだな……。
組織の規模を考えれば仕方ないことなんだろうけど、情報収集能力とそれをまとめ上げる速度はとんでもないものがある。

とはいえ、今回は呉越同舟的な感じで味方してくれただけだし、普通に利用したら金かかる……以前に信用やら何やらの問題あるから、今後利用することは無いと思うけどね。ウェスカー探偵局は。
うちの情報担当はやっぱりザリーです。

さて、この粛清大行進なんだけど……その途中に立ち寄る可能性のある町や村に、いくつかレジーナ達とゆかりがある場所があるらしく……そこが軍靴で踏み荒らされ、村の人たちが受けなくていい被害を受けるのは、やっぱり嫌なんだそうだ。

僕としては、よく思っていないのは、あの『旧王家派』の連中だけであり、レジーナたちについては、最初のソースの縁に始まり、旅の道中の楽しい会話やら何やら、そして、真実が明らかになった時には素直に謝罪し……そして、その時に見た弱々しげな彼女の一面なんかもあって、別に悪くは思っていない。

なので、可能な限り迅速にこの国を滅ぼすことにした。
その村や町が荒らされる前に。

加えて……全部の町や村をその行進で回るわけじゃないだろう、と思っていたら……違った。
確かに、『大行進』では全部は回らない。しかし……その近傍にある砦やら駐屯地やらに集まっている兵士達が動員され、回らない分の町・村もいくつかは査察されるんだとか。
その後、その兵士達も大行進に合流するそうだけど。

それも気分悪いし……敵に余剰兵力を残させて、別働隊みたいなのを作られても困る。

なので……全部一気に解決することにした。
その方法は……単純明快。

『片っ端から全部潰していく』……以上。

そんなわけで、僕らは今……『四大問題児』を中心にした4つのグループに別れ、これまたウェスカーから貰った砦の分布図を参考にして、北側から順番に、一定以上の規模のある砦を潰して行っている。
全部潰すと自衛機能とかに問題があるので、ある程度残してるけど。

具体的に言うと……ならず者の対処には対応できるけど、大規模な革命が起こったら耐えられなそうな基地は無視してる。
それ以上の規模……明らかに軍事作戦を起こせるレベルに兵力が集まってる砦や、それに重要そうな場所に立っている砦は潰している。

なお、今僕が消し飛ばした砦……これで今日3つ目である。朝から動いてたから。

最初の2つは、実は……自分で直接殴りこんで壊滅させてたんだけどね。
『ジェノサイドアームズ』や、高火力のCPUMを召喚して、殲滅戦で。

あとは、『ジャイアントインパクト』や『タワーリング・インフェルノ』なんかの技も使って、とにかく暴れまくっていた。

けど、2件目やってる最中に……なんか面倒になった。
だから、3件目からは空爆にした。今、ここね。

迷惑で腹立つ連中に引導を渡してやるのに……わざわざ律儀に自分で出てく必要もないか、と思って。まあ、内部資料や物資の回収の必要がある場合とかは、また別だけどね。

それに……だ。今現在、僕は……この世界に転生してから、おそらくは初めてであろう思いを胸に抱いている。

いつだったか……もう随分前に、話したと思う。そう、確か……『真紅の森』でだ。
僕が、徒手空拳をメインに戦う理由について。

もちろん、放出魔法の才能がなかったから、ってのもあるけど……それ以上に、自分がこの手で魔物を、人を殺める時に……それを『忘れない』ようにするため、ってのもあった。

自分は今、身を守るため、あるいはお金や素材を得るために、命のあるものを手にかけてるんだぞ、って。
ゲームみたいに、経験値稼ぎや素材稼ぎのためだけに倒す、データだけの存在じゃないんだぞ、って。

そういう……相手に敬意を表する的な、何とも自己満足に満ちている理由で、できるだけ、文字通り『この手で』僕は魔物や敵を倒すようにしてきた。
……まあ最近、マジックアイテムの乱開発やその試し撃ちで、比率やや減ってきてるけど。

……しかし、だ。
今回の、この戦いに関しては……

(微塵も……そういう気にならない)

結論を言うと……僕は、命を狙われ、エルクの身柄を狙われ、勝手な理屈で非難され……さらに今、他の仲間達共々下卑た理由で狙われているこの現状に……心底キレている。

そのせいだろう……この戦いで、仕留めていく命たちに対して……今言った『敬意』的なものを払おうという気力が、全く湧いてこない。
繰り返しになるが、戦っている兵士達は、貴族達の命令で動いているということはわかっている……それでもだ。毛程も『失礼だ』とか『申し訳ない』とか思うことができない。

むしろさっきから『邪魔だな、さっさとどっか消えてくんないかな?』『相手してる時間もったいないんだけど』『さっさと消し飛ばせる爆弾でも作っときゃよかった』『何でこいつら生きてるんだろう?』『いちいち殺すのもめんどくさい』……とかちょくちょく思ってる。

人間は皆、誰しも心の奥底に『残虐性』を持っている、って前に聞いたことがある。

憎い奴、嫌いな奴を殺してしまいたい、死ぬほど苦しめてやりたい……そんな暗い感情を、心のどこかに抱え……しかし、ほとんどの人は、決して表には出さずに生きている。
どうしても我慢が出来なくなった時にそれは氾濫し、初めて表にでてくるそうな。

多分、僕にもあるんだと思う……しかしそれは、今回出てこなかった。
というか多分、そういうの通り越して今のこの感情がある。

苦しめてやる気にもならない。そんなことに時間を割きたくない。さっさと終わらせたい。

「……事実は小説よりも奇なり、か……」

「? 何か言った、ミナト?」

「何でもないよ、クロエ」

……さて……じゃ、次行こうか。
夕方に、中部の何とかって町に集合予定だから……それまでに、あと1つくらい潰したいな。


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