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 宮城県石巻市で2010年、元交際相手の姉ら2人を殺害し1人に重傷を負わせたとして、殺人罪などに問われた千葉祐太郎被告(24)の上告審判決で、最高裁第一小法廷(大谷直人裁判長)は16日、被告の上告を棄却した。被告は事件当時18歳7カ月で、裁判員裁判で少年に言い渡した死刑判決が初めて確定する。

 犯行時に少年だった被告の死刑が確定するのは、山口県光市で1999年に起きた母子殺害事件が12年の最高裁判決で確定して以来。「永山事件」の最高裁判決(90年)以降では5件目、7人目になる。

 判決によると、千葉被告は10年2月10日朝、石巻市内にある元交際相手の実家に押し入り、元交際相手の姉(当時20)ら居合わせた2人を刃渡り約18センチの牛刀で刺して殺害。1人に重傷を負わせ、元交際相手を車で連れ去った。

 この日の判決は、被害者の数や犯行の残虐性など、死刑を適用する基準として最高裁が83年に示した「永山基準」に沿って検討。3人が殺傷された結果の重大性や犯行の残虐性を挙げ、「犯行時に少年で、前科がないとはいえ、動機や態様を総合すると被告の深い犯罪性に根ざした犯行というほかない」と述べた。その上で、遺族の処罰感情が激しいことにも触れ、死刑もやむを得ないと結論づけた。一方、両親が離婚し、幼少期に母親から虐待を受けたことなど被告の生い立ちや成育歴、更生の可能性については触れなかった。裁判官5人の一致した意見。

 裁判員裁判で実質5日間で審理された一審・仙台地裁判決(10年11月)は、被告の年齢について「総合考慮する際の一事情にとどまり、ことさら重視することはできない」と述べていた。二審・仙台高裁も死刑を維持していた。

 弁護団は「計画性などで事実誤認があり、重大な結果のみで漠然と死刑を選択したのは承服できない。一審は裁判員裁判の欠点が顕著に出た拙速な審理だったが、控訴審も最高裁も追認した」と批判した。再審請求も検討するという。

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 16日の最高裁判決について、最高検は「少年時の犯行とはいえ、社会に大きな衝撃を与えた凶悪な事件であり、死刑判決を是認した判決は妥当なものと考えます」とするコメントを出した。

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 〈おことわり〉 朝日新聞はこれまで、犯行時に少年だった被告について、少年法の趣旨を尊重し、社会復帰の可能性などに配慮して匿名で報道してきました。最高裁判決で死刑が確定する見通しになったことを受け、実名での報道に切り替えます。国家によって生命を奪われる刑の対象者は明らかにされているべきだとの判断からです。本社は2004年、事件当時は少年でも、死刑が確定する場合、原則として実名で報道する方針を決めています。

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 最高裁第一小法廷が16日に言い渡した判決の要旨は次の通り。

 【主文】本件上告を棄却する。

 【理由】

 弁護人の上告趣意はいずれも、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない。

 被告は2010年2月4~5日、同居相手の女性(当時18)に対し、模造刀などで全身を数十回殴るなどして暴行し全治約1カ月の傷害を負わせた。同月10日早朝には、実家に戻った女性を連れ出そうとして、女性の姉(当時20)と友人(当時18)、姉の友人男性(当時20)の胸などを牛刀で突き刺して姉と友人を殺害し、友人男性に右肺損傷などの傷害を負わせた。強い殺意のもとに、3人に対して牛刀で攻撃を加えており、結果は重大だ。

 身勝手きわまりない動機に酌むべき余地はなく、被害者らに責められるべき点はない。犯行時18歳7カ月の少年であり前科がないとはいえ、動機、態様などを総合すると、被告の深い犯罪性に根ざした犯行というほかない。被告のために酌むべき事情を十分考慮しても被告の刑事責任はきわめて重大で、一審判決の死刑を是認せざるを得ない。

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 〈宮城県石巻市の男女3人殺傷事件〉 判決によると、千葉祐太郎被告(24)は2010年2月10日朝、元交際相手を連れ出そうとして、宮城県石巻市内にある実家に押し入り、居合わせた元交際相手の姉(当時20)と、元交際相手の知人の女子生徒(当時18)を刃渡り約18センチの牛刀で刺して殺害。さらに、その場にいた元交際相手の姉の知人男性の右胸を刺して重傷を負わせたうえ、元交際相手を車に乗せて連れ去った。