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【社会】

愛知ヤクルト「性同一性障害 公表強要」 社員が提訴へ

 性同一性障害の診断を受け名前を女性名にした愛知県の四十代の会社員が、職場で障害をカミングアウト(公表)するよう強要されるなどし精神的苦痛を受けたとして、勤務先の「愛知ヤクルト工場」(同県日進市)を相手取り、三百三十万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こすことが分かった。

 会社員は戸籍上は男性。二〇一四年一月に性同一性障害の診断を受けた後、女性名に変更し、同年五月に保険証や年金手帳の書き換え手続きのため、上司に改名を報告。職場では男性名の使用を希望したが、会社側は掲示物の名前などを女性名に書き換えた。

 会社側はさらに男性従業員と別の更衣室を使えるような配慮や男女双方が利用する来客用トイレの使用を認める代わりに、障害の公表を要求。同年六月、会社員は朝礼で全従業員に性同一性障害であることを公表させられ、不眠や抑うつ状態になったという。昨年一月にはうつ病と診断され、三月に半月ほど休職。復職すると窓や空調のない部屋で一人で作業するよう命じられたといい、会社員は「『追い出し部屋』で事実上の退職勧奨だ」と訴えている。

 性的少数者の職場環境を巡る訴訟では昨年十一月に、戸籍上は男性だが女性として勤務している経済産業省職員が女性トイレの使用など処遇改善を求め、国を訴えた例がある。

 <愛知ヤクルト工場の話> 職場での氏名の変更は本人の申し出によるもので、通称名を許可しないと拒否した事実はない。職場での公表は特別な配慮をする以上、情報を開示して他の従業員の理解を得るのが職場全体の協力体制につながるという判断から打診した。強制ではなく、本人は同意し、自らの意思と言葉で公表した。昨年三月の復帰以降の職場環境も劣悪ではない。人格権の侵害や安全配慮義務を欠いた事実はないと考えている。

 <親会社のヤクルト本社の話> 工場の対応は適切だと考えている。

 

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