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摂食障害 理解と支援を広げたい

 若い女性を中心に広がる「摂食障害」への理解を深め、患者や家族を支援しようと医師らが日本摂食障害協会を設立した。病気と考えず隠したがる傾向があり、患者数もはっきりしない。心身の成長期に発症して一生を左右しかねず、家族も偏見などに苦しむだけに、社会の理解と手厚い支援態勢が欠かせない。

     摂食障害は、神経性やせ症(拒食症)と神経性大食症(過食症)に大別される。

     拒食症は過食症へ移行することが多い。食べすぎた後、吐いたり下剤を使ったりして排出する行動も目立つ。見た目は少しやせているだけで、外見からは気づきにくい。

     極端な低体重で命を危うくするだけでなく、食べ物を粗末にする罪悪感や自己嫌悪による自殺も少なくないという。吐き続けて胃酸で歯がボロボロになり、骨粗しょう症や不妊症などに苦しむ人もいる。

     女性のやせ志向などを背景に1980年代に増えた。患者の約90%は女性だが、男性も増えている。厚生労働省の調査では小学生の発症も報告され、低年齢化の傾向がある。

     2万人強が医療機関を受診しているとみられるが、症状に苦しむ人はもっと多い。国立精神・神経医療研究センターの安藤哲也ストレス研究室長は「対応の進む英国の患者は75万人と言われ、日本に100万人いてもおかしくない」と分析する。

     しかし、周囲の支えは乏しく、治療体制の整備は進んでいない。

     「本人がわがままなだけ」と切り捨て、「育て方が悪い」「母親に原因がある」などと決めつける偏見が根強い。拒食も過食も、自らコントロールできず、そのこと自体に悩み苦しんでいる。家族関係を問題視するのも誤った見方である。

     専門医や病院は足りない。命にかかわる緊急性を問われる場合があり、心理療法を中心にした息の長い対応も不可欠だ。人手と時間のかかる領域に取り組む医師は多くない。

     厚労省は「治療支援センター」を5カ所に作る計画だ。設置の希望を募り、昨年度中に福岡県(九州大学病院)と宮城県(東北大学病院)、静岡県(浜松医科大学付属病院)にできたが、残りはめどが立たない。病気への理解が希薄で、年間600万円の運営費の半額負担もあるため、都道府県は及び腰のようだ。

     摂食障害協会は、受診をためらう患者らへの情報提供などの支援とともに、治療体制の整備を行政に働きかける考えだ。生野照子理事長は「発症者の苦境を和らげ、未来ある若い人の心身の健康と命を救いたい」と語っている。患者と家族を孤立させず、可能性を奪わないために理解と支援を広げたい。

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