7月10日投開票の参院選という政治イベントを前に、日本経済は円高、株安への強い圧力にさらされている。
英国の欧州連合(EU)離脱(Brexit)懸念が、世界経済のリスク要因として意識される中、安全通貨としての円に資金がシフト、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見送りも円買いを加速させた。個人消費の動きも鈍く、失業率の低下が、物価上昇をもたらすメカニズムも、うまく作動しないままだ。
日銀は6月16日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決め、追加緩和を見送ったが、市場では早くも7月の追加緩和を期待する声が高まっている。異次元緩和の限界が指摘され、マイナス金利への批判が高まっている中、黒田日銀は次の一手をどう繰り出すのか――。『黒田日銀 最後の賭け』の著者・小野展克氏が分析する。
1ドル105円が「攻防ライン」
日銀総裁・黒田東彦に近い筋は、こう指摘する。
「黒田さんは、為替相場の円高に神経を尖らせていた。1ドル=105円を大きく超える水準まで円高が進めば、大胆に追加緩和に動くだろう」
日本の大手輸出企業が想定する為替レートは1ドル=107円~108円程度が中心で、急速な円高が企業の収益環境を悪化させている。
そもそも異次元緩和の狙いは2%の物価上昇を実現し、デフレから脱却することにあった。ただ、株価を好転させるインパクトを与えたのは、強力な金融緩和が生み出した為替相場の円安だと考えてよいだろう。円安は輸出企業が海外で得た収益を円に換算した時に、連結ベースの利益を膨らませるという効果で企業収益を拡大させた。
そう考えると黒田日銀の異次元緩和のみならず、アベノミクスの心臓部は、「円安」だと指摘しても良いだろう。黒田が、為替相場の適切な水準を判断する場合、購買力平価とみなされる「1ドル=105円」を意識しているのは、当然と言える。
6月23日には英国のEU離脱の是非を決める国民投票が控えている。仮にユーロ離脱が実現した場合、5月末時点と比べて円は対ユーロで10~15%上昇、対ドルでも1ドル=100円を突破する円高になると予測する市場関係者が多い。
こうなると異次元緩和が生み出した円安効果がすべて吹っ飛んでしまう。これはアベノミスクの危機を意味している。
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