【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アップルが米大統領選の候補としてドナルド・トランプ氏が指名される見通しの7月の共和党大会に協賛しない予定だと、政治専門紙ポリティコなど複数の米メディアが報じた。米IT企業ではヒューレット・パッカード(HP)などに続く動き。米ブルームバーグによれば米金融大手のJPモルガン・チェースやウェルズ・ファーゴ、米フォード・モーター、米物流大手UPSなどにも同様の動きが広がりつつある。
トランプ氏はイスラム教徒らマイノリティーや女性に対し差別ともとれる発言を繰り返しており、人権団体からの圧力も強まっている。大企業の間では、自社のブランドイメージへの影響を懸念する声が高まりつつある。コカ・コーラも協賛内容の縮小を検討しているという。マイクロソフトは共和党と民主党の協賛内容に差をつけると発表している。
特にアップルはティム・クック最高経営責任者(CEO)が同性愛者であることもあり、アップルのブランドとマイノリティーの権利を保護するリベラルな思想を結びつける意識が強い。思想的に対極にあるトランプ氏が指名される党大会に協賛することは同社のブランドにとって打撃になる可能性が高い。
トランプ氏がアップルを好んで標的としてきたことも背景にある。アップルは製品の大半を中国で委託生産していることもあり、製造業の米国回帰を訴えるトランプ氏からは度々批判されてきた。アップルが米連邦捜査局(FBI)からのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」のセキュリティー解除命令に従わない方針を打ち出した時には、アップル製品の不買運動を呼びかけていた。
アップル、グーグル、マイクロソフトなど米IT(情報技術)大手は、政治との関係づくりのため、民主、共和両党の党大会へ技術やサービスの提供、寄付などで協賛をしている。アップルも4年前の両党の大会には製品提供で協賛していた。通常は製品やサービスの販売への影響を避け、政治的な中立性を維持するために、両党の間で条件を変えることはしない。アップルが今回、民主党の党大会も協賛せずにバランスをとるのかはまだ分からない。
フェイスブックはマーク・ザッカーバーグCEOが不法移民の合法化活動を支援しており、トランプ氏とは対極の立場にあるが、今のところ共和党大会の協賛から撤退する動きはみせていない。こうしたスタンスについてはリベラル層から批判を浴びている。