プランゲ文庫所蔵資料のうち、何らかの検閲処分を受けた資料の割合は2%に達しません。しかし検閲関連資料のほとんどはプランゲ文庫にしか保存されていない事が多く、これらの資料の重要性は計りきれません。検閲関連資料は、GHQ/SCAPが占領下の日本で出版業界を厳しく監視していた事実を裏付ける証拠として非常に重要な資料であると思われます。
「プレスコード」は1945年9月に発令され、検閲の基礎骨組みと位置づけられました。一方で、検閲官が使用した「キーログ」は定期的に更新され、「プレスコード」ではカバーし切れなかった細かいガイドラインを補う役目を果しました。例としては、連合軍兵士と日本女性の「親密な関係」や、ヤミ市に関する事柄などは「キーログ」に含まれました。
民間検閲局は文書を定型化し、出版社とのコミュニケーションや、出版物の管理を行いました。文書の例をFlickrサイトに掲載しておりますので、ご覧ください。
キーログ(1946年6月)
Criticism of SCAP | Criticism of Military Tribunal |
Criticism of SCAP Writing the Constitution | References to Censorship |
Criticism of United States | Criticism of Russia |
Criticism of Great Britain | Criticism of Koreans |
Criticism of China | Criticism of Other Allies |
General Criticism of Allies | Criticism of Japanese Treatment in Manchuria |
Criticism of Allies’ Pre-War Policies | Third World War Comments |
Russia vs Western Powers Comments | Defense of War Propaganda |
Divine Descent Nation Propaganda | Militaristic Propaganda |
Nationalistic Propaganda | Glorification of Feudal Ideals |
Greater East Asia Propaganda | General Propaganda |
Justification or Defense of War Criminals | Fraternization |
Black Market Activities | Criticism of Occupation Forces |
Overlaying Starvation | Incitement to Violence & Unrest |
Untrue Statements | Inappropriate Reference to SCAP |
Premature Disclosure |
[…] その為一部の出版社は、CCDの検閲を通過した旨を公表すればよい、と考えたのかもしれません。ルールに基づいて出版業を行っていると示す意味合いもあったのでしょうか。しかし奥付に「検閲済」などと書いたりCCDの記録用番号を記したりすることは、キーログで定められた検閲処分対象の「検閲に関する記述」に違反となり、皮肉な結果として、削除などの検閲処分を受けてしまうことになりました。下記の例をご覧ください。 […]
[…] 当文庫が所蔵する「同志」1巻2号(1946年7月)には山之内公威氏による「天皇制護持論」という記事が掲載されています。この記事は、プレスコードに違反するとしてDisapprovedの検閲処分を受けたことが、民間検閲局(CCD)が残した文書から見て取れます(左の画像をクリックで拡大) […]
[…] まずプランゲ文庫室長が、検閲の基礎骨組みとなったプレスコードを詳しくたどりながら民間検閲局(CCD)による検閲のプロセスを説明し、どのような出版指標が日本の出版社に与えられたのかを説明しました。そしてCCDが「タブー」として特に注目していた話題の例を挙げ、具体的な資料を見せました。ここで取り上げた「タブー」の話題とは、「検閲の事実を知らせるもの」、「原子爆弾」そして「軍事的宣伝」の3点です。 […]