編集委員・石飛徳樹
2016年6月20日19時30分
第29回三島由紀夫賞に選ばれた仏文学者で、映画評論家の蓮實(はすみ)重彦さん(80)。記者会見での“一触即発”の受け答えが、世間の話題になった。おめでたいはずの会見場の空気がどうして凍りついたのか。受賞作『伯爵夫人』に込めた思いは――。蓮實さんにあらためて聞いた。
先月16日に開かれた三島賞の会見で、蓮實さんは終始不機嫌そうだった。「お答え致しません」「馬鹿な質問はやめていただけますか」などと厳しい言葉を幾度となく発した。会見の模様はメディアを通じて広がり、三島賞は例年に増して世間の耳目を集めた。
会見直前、蓮實さんは版元の新潮社幹部に「この会見は本の売れ行きに関係するんですか」と聞いたという。「そうしたら『関係いたします』とお答えになったので、『では、そのようにやりましょう』と。会見後、(幹部に)『お見事』なんて言われちゃいましたけれど」
会見が話題になるや、蓮實さんと新潮社が仕組んだ大芝居ではないかとの臆測も流れたが、蓮實さんはきっぱり否定した。
妻のシャンタルさんが入院中で、選考会の翌朝に別の病院へ移ることになっていたという。「三島賞のことなど完全に忘れてしまっていました。ですから心ここにあらずで会場に行ったのは確かなんです」
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