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第219話 荒野の国とソースの縁
瞬く間に時は流れ……僕らがノエル姉さんから依頼を受けた、その2週間後。
諸々の準備を済ませ、僕らはいよいよ今朝から、商隊と共に一路『リアロストピア』へ向かっている最中である。
しかし、商隊の護衛任務は、今までも何度か経験あるけど……今回のは規模が違うな。
何せ……中型から大型の馬車が、実に数十台、列を成して行進している。
乗せている品物は馬車ごとに違い、多種多様。日持ちするように加工された食料品から、日用品、本、武器や防具、薬、酒やタバコやコーヒーといった嗜好品まである。
こんだけの量をキャラバンで、しかも他国に運ぶって……そんな上客いるのか、この国に?
「上客、っちゅーか何ちゅーか……まあ、ええ客なんは確かか。欲しいゆーてるもん持ってったら、ほぼ間違いなくあるだけ買うてってくれるし」
同じ馬車にノエル姉さんに、興味本位で聞いてみたところ、そんな答えが返ってきた。
「へー、そりゃまた豪快な……この国の貴族か何か? 景気いいね随分」
「……いや、実はそーでもないんやけどな」
「え、そうなの?」
姉さんの答えを意外に思って、僕は思わずそう聞き返す。
物を持ってけば持ってった分だけ買ってくれるんだから、てっきりこの国――あるいはこれから行く先だけかもしれないけど――よっぽど景気いいんだと思ってたよ。違うのかな?
「ああ、これから行く先な……ほとんどは『あるから』やなくて、『ないから』売れるねん」
「は? えっと……どゆこと?」
「単純に物がないんよ。食料とか、資材とかが。せやから、外から行商なんかが来た時に、こぞって逃がさんと買い入れんねん。自国ないし自領内で調達でけへんからな」
「あー、そうなんだ……食料自給率とかの問題ってことね」
「お、難しい言葉知っとるやん。まあもちろん、食料だけの話やあらへんけどな……こないだ、『リアロストピア』がどーゆー国なんかはちらっと教えたやろ?」
確認するように聞いてくる姉さんの言う通り、僕らは事前に、簡単にではあるが、今回の行き先である『リアロストピア共和国』がどういう国なのかの説明を受けている。
そして、理解している。この国が……今まで居た、あるいは訪れたことのある『ネスティア』や『ジャスニア』といった国とは、少し、いやだいぶ違うということを。
面積とか、国力とか、それ以前に……『情勢』が。
『リアロストピア共和国』
それは、『6大国』の1つに数えられる大国にして……大国の中で最も歴史の浅い国。
建国からまだ十数年ほどしか経っていない、新興国である。
大陸中央部……ネスティアの東であり、ローザンパークの南であり、ジャスニアの北に位置するその国は、かつては『ベイオリア王国』という名前だった。
6大国の1つに名を連ね、ネスティアなどと同様に王政によって統治される国だったが……十数年前に起こったクーデターにより、当時の王権は妥当され、新政府が樹立した。
それに伴って名前も変わり、今の『リアロストピア』となった。
しかし、クーデター後、最低限の政治システムはすぐに構築されたものの……国内全ての混乱を収めることは到底できなかった。決してせまくはない国土のあちこちで、王権の崩壊と情勢の混乱に端を発する紛争や内戦などが多発したのである。
それらの内戦は、すぐに収まったものもあれば、建国から十数年が過ぎた今なお続いているものもある。そして、今も続いているものの多くは……収束の見通しは立っていない。
それが、この国『リアロストピア』の現状だ。同じ国にありながら、政情が安定している地域とそうでない地域がこれでもかってくらいに分かれている。
もちろん、今回の遠征でノエル姉さんの商会が相手にするのは、前者である。
すでに情勢が安定している地域と、大きな紛争がほぼ収束し、これから安定していく見込みの地域の2種類に分かれるそうだけど、どちらもそれぞれ異なる理由で物資を欲していることから、いい客になるんだそうだ。
すでに安定している地域は、生活や人の心に比較的余裕が生まれ、嗜好品や多少のぜいたく品の需要が出てくる。
これから安定していく地域は、復興その他のために食料なんかの基本的な物資が必要なので、こちらも需要は十分。
それぞれのニーズに合わせた品物を提供できるように、これだけの種類、これだけの量の商品をこうして持ってきてあるわけだ。
もちろん、リアロストピア自体が海外から物資の輸入やら支援やらを受けて物資を入れてるんだけど、それでは到底足りないわけで、その不足分を独自に外国の紹介や行商から買い付けているのだ、そういう地域は。
ノエル姉さんの商会は、相手を選びつつ、そういう感じの取引を結構前から行ってきており……その過程で仕入れた情報から、だいぶ『リアロストピア』も軌道に乗り始めてきているんじゃないか、と判断したらしい。
今回の商談の結果次第では、今後取引を増やしたり、支店を置くことも考えるそうだ。
今んとこ、姉さんの商会の支店はネスティアとジャスニアにしかないけど、ここに出来れば3カ国展開になる。商品を売り込めるのはもちろん、ここの特産品なんかを安定的に買い付けて2国に流したりすることもできるようになるだろう。
「もっとも……そこまで旨みのある『特産品』っちゅーんもそう多くないんやけどな、この国」
「あ、そうなんだ」
「それに、一部の地域は裕福になったゆーても、そうでなくて未だに不安定な地域も多いし……治安もあんまし褒められたもんやあらへんし、そのへんは不安要素やな……。聴いた話やと、同じ国かってくらいに、町ごとの貧富の差が酷いらしいし」
ふーん……地球で言う『南北問題』みたいな感じかな?
途上国や先進国に成り立ての国じゃ、そういうの多かったみたいだし……この国『リアロストピア』もそんな位置づけみたいだ。
ノエル姉さん曰く、この国で今相手にしてる取引先はどれも『上客』だけど、今後も安定してお得意さまでいてくれるかどうかが不安……だからまだ慎重になる、と。
「せめてこの国特有の資源か特産品でもあれば前向きに考えられるんやけどな……」
「資源は知らないけど……特産品は難しそうじゃない? なんか、ここで作れるようなものなら、大体他の国とかでも作れそうだし」
さっきからひたすら殺風景な荒野が広がってるばっかりで、樹木や背の高い草なんかもほとんどない。見渡す限り茶色、砂礫ばかりの荒野だ。見た目一発、不毛。
砂漠とかよりはましだろうけど、それでも……命の息吹って奴をほとんど感じない。
ここで採れる売り買いできそうなものって言ったら……土地くらいか?
「……土地買い上げてから魔法薬か何かで緑化・再生でもして価値上げて売れば、差額で設けるみたいなやり方は出来るか……?」
「おい、なんか危険な実験とかに繋がりそうな気配がするんやけど」
いや、別にやらないけどね?
☆☆☆
その翌日……僕達は、リアロストピア東部……国境付近の町『バルジア』にいた。
ここで、姉さんが『お得意様』の1つとの取引と、それに関する諸々の交渉を行う。そして、それが済むまで……僕ら護衛チームは、待機という名の自由時間となる。
自由時間、なんだけど……
(な~んにも、やることがない……)
暇だ。ひたすらに。
普段の僕なら、自由時間ってことで意気揚々と食べ歩きにでも出かけるか、ラボにこもって研究でもするところだけど……今、そのどっちも出来ないからなあ。
商隊に足並みを合わせていく旅路だってことで、『オルトヘイム号』に乗ってきてないから――まあ、その気になりゃ呼べるけど――ラボに入れないのだ。
それに、食べ歩きにしても……いや、できないことは無いんだけど、その……
(ダメだ……。しばらくローザンパークで暮らしてた間に、完全に舌が肥えたみたいだ……)
さっき、ためしにその辺で売ってた串焼きを1つ買って食べてみた。
結果は……あんまり美味しいとは言いがたい味だった。
火はしっかり通ってるのに肉は固いし、味付けも薄くて肉の臭みみたいなのが残ってるし。
コレ……僕の舌が肥えたことを考慮に入れても、ちょっとアレだな……。
やっぱ、復興途中の途上国(?)のグルメって、先進国(?)に比べるとレベル下がっちゃうんだろうか? それとも、物資不足で調味料とか香辛料が手に入りにくいから節約して調理しないといけなくて、結果、料理の味が悪い……とか?
いや、それ以前な部分もあるな……火の通り方や調味料のかかってる量が均一じゃなくて、場所によって固かったりやわらかかったりするし、味の濃さも不均一だ。
中学校や高校の文化祭の売店でも、コレよりは美味しいと思う……そんな感じで残念な味。
もしかして、これから先で行く町も皆そんな感じなのかな……?
うわ、テンション下がる……初めて行く国ってことで、ネスティアやジャスニアにはない、その国独自の美味を食べるのを楽しみにしてたのに……
今回の旅路、ひょっとしたら食道楽とは縁遠いものになるかもしれない……と思い至った僕が、失意の中で串焼きの固い肉を飲み下していた……その時、
(……ん?)
僕の鼻が……どこかから漂ってくる、何やら美味しそうな匂いをかぎつけた。
何だ、これは……ソースのにおいか? このへんの露店の薄い味付けとは明らかに違う……デミグラスソースみたいな匂いだ。
薄味じゃあ絶対に出ない匂い……コレは気になる!
反射的に足が動き、その匂いが漂ってくる方角に向けて早足で歩みだす。
この方向……大通りから外れる? 裏通りか? 裏通りに、隠れ家的な名店、あるいは知る人ぞ知る屋台か何かがあるのか?
迷子にならないように注意しつつ、やや道幅の狭い裏道に入って少し歩いていると、
「どけどけぇ――っ!!」
「コラ――!! 待てこのドロボ――っ!1」
目の前に見えた十字路の向こうから、そんな声がしたかと思うと……次の瞬間、その角を曲がってこっちの道に、浮浪者のような小汚い身なりの男が走ってきた。
身なりだけでもちと怪しいんだけど……それ以上に、その両手に持ってるものがアレだな。
右手にナイフ。左手に抱えるようにして……女物のハンドバッグ。そんな状態で、右手のナイフを振り回しながら大急ぎで走っているとくれば……。
「はぁ、はぁ……あっ! そ、そいつ捕まえて! バッグ盗られたの!」
「そこをどけぇえっ! ぶっ殺すぞぉ!!」
(あ、やっぱりそんな感じか)
まあ、見た目どおりの状況だな……と心の中で勝手に納得しつつ、ホントに斬るつもりがあるのかどうかわからないけど、ナイフを振りかざしてこっちに突っ込んでくる男を……避けるふりをして、足をスパァン! と払って転ばせる。
「おぅわっ!?」
キレイに弧を描くように決まった僕の足払いで、男はその場で縦に90度回転し、顔面から地面に突っ込んだ。
その際、左手から飛んだバッグは、きちんと落ちないようにキャッチ。
そして男は、今ので運よく気絶してくれたらしい。ぴくぴく痙攣してるけど、起き上がる気配はない。
通行の邪魔なので、足で通路の端に押っつけたところで、被害者らしい女の子がこっちまで走ってきた。
そこで、すっとバッグを差し出してやると、心底安心した様子が表情から伝わってきた。
結構な距離走ったのか、息が荒いのが収まる気配がちと見られないけど、気持ちは落ち着いたようで、深呼吸して体のほうも落ち着けようとしつつ、
「ふぅ……ありがと、お兄さん。助かったよ……私の足じゃ追いつけなかったからさー」
「いやいや、どういたしまして。あ、中身無事か一応確認したら?」
「あ、うん、そうだね。まあ、何か抜き取ってる暇も様子も無さそうだったけど、一応……」
通路の隅っこでひくひくしてる男を憎憎しげに一瞥すると、女の子はバッグを開けて、中身を1つ1つ確認し始めた。色々入ってるな……マジックアイテムじゃなさそうだけど。
その間、ふと女の子の顔を見ると……おそらく僕と同い年かそこらであろう、けっこうな美少女だった。ちょっとツリ目気味の目と、茶色の髪の、活発そうな雰囲気の娘だ。
視線を下にずらして、『服はちょっと普通というか地味目だな』なんて感想を僕が抱いた直後……偶然目に入った、バッグの中のあるものに気付き……はっと、僕がここに来た目的を思い出した。
なぜなら、バッグの中に入っていた小さな包みから……さっき僕が感知したおいしそうな匂いが漂ってきていたから。
いきなりの急展開に気を取られて気付かなかった……匂いの発生源はここだったか!
「……うん、盗られたものなし! 大丈夫だっ……どうかしたの、お兄さん?」
と、チェックが済んだらしい女の子が、僕の視線がバッグの中に向いていることに気付き、きょとんとしてそう聞いてきた。
「……あ、ごめんごめん、ちょっと気を取られて」
「いや、気を取られてって何に……あ、そうだ、お礼しなきゃね! えっと、今あんまり持ち合わせないんだけど……」
「え? いやいや、いいって別にお礼とか。思わず体が動いただけっていうか、ほとんど無意識みたいなもんだったし、そんな大げさな」
「いや、そういうわけにはさぁ……ていうか、無意識であんな見事な蹴りってすごいね?」
感心半分、困り顔半分、って感じの顔でそう言ってくる女の子。
どうやら、困ってるところを助けてもらったんだからきちんとお礼したい、ってことらしいんだけど……ホント別にこのくらいなんでもないし、これでお礼のお金とか貰ったらこっちが微妙なんだけど……あ、そうだ!
「あ、じゃあさ、お金とかいいから……それ、どこで買ったか教えてくんない?」
「へ? それって……あ、コレ?」
そう、そのバッグの中の包み。
現在進行形ですごくおいしそうなにおいを漂わせてる、何か。
女の子がそれを取り出して、包みを半分ほど開けると……中身はサンドイッチだった。
具はどうやら、ベーコンとレタスとチーズ。そしてそこに……おいしそうな匂いのソース。
さえぎるものがなくなると、より一層匂いが引き立ってるな……濃厚で、匂いだけでも味にコクがあるのがすごくよくわかる……やっぱり、デミグラスソースみたいな感じだ。
やばい、めっちゃ食べたい。
お金貰わないための方便とか、妥協案なんかじゃない……むしろ僕のメインの欲望である。
お金には困ってないけど、今僕丁度、舌と胃袋が困ってるから。
……しかし、現実は残酷だった。
僕の頼みを聞いた女の子は、なぜか『う~ん……』と困った風な顔になると、
「ごめん、その……コレ、屋台の売り物とかじゃなくてさ。私の、っていうかうちの職場でもらった、軽食用のお弁当みたいな感じで……売ってないんだ」
「…………あ、そうなの……」
それを聞いて……上がっていた僕のテンション急降下。
期待が大きかった分、落胆も大きいです。そりゃないよ……。
割とガチでへこんでいる僕の様子を見て、少しの間困った感じの表情になっていた女の子が……ふと、何かを思い出したか思いついたかのように、はっとした感じの表情になった。
「あ、そ、そうだ、でもさお兄さん、その……今夜、何か予定ある?」
「え? いや、別にないけど……」
「そっか。じゃあ、えっと……『アストロ亭』っていう宿があるんだけど、知ってる?」
と、聞いてきた。
『アストロ亭』? 知ってるも何も、そこって確か……
「いや、知ってるっていうか……僕、正にそこに泊まってるんだけど」
「あ、そうなんだ? じゃあさ、今日の夜……」
☆☆☆
そして、その日の夜。
昼の間をそれぞれ思い思いに過ごした僕ら『邪香猫』一同は、宿屋と一体で設置されている食堂――というよりは酒場みたいな雰囲気だけど――に来ていた。ノエル姉さんのおごりで。
いやまあ、そもそも『依頼』の間の食事とかはいつも姉さんが持ってくれてるんだけどね? 宿の食堂に話つけて前払いしといてくれたり、外に食べに連れてってくれたり。
ただ、そういう場合は普通の定食みたいな、言ってしまえば無難で普通なメニューなんだけど、今回は珍しく『好きなだけ飲み食いしてええでー』って言われた。
どうやら今日は大口の商談がまとまったらしく、ノエル姉さん、機嫌がいい。
それで、僕ら一同この酒場に来たわけなんだけど……今、僕は驚愕していた。
「……これって……」
目の前に置かれている……今さっき運ばれてきた、いくつもの料理。
その中の1つ。分厚いハンバーグと新鮮で瑞々しいレタス、そして濃厚そうなチーズ――が、はさんであるサンドイッチ。大皿1つをほとんど占拠していて、かなりのボリュームだ。
そして、そのハンバーグサンドからは……記憶に新しい匂いが漂ってきていた。
間違いようもない……昼の、あのソースだ。
ひったくりに遭った女の子の弁当から漂ってきた、しかし非売品(?)だとわかって涙を呑んだ、あのおいしそうなソースの匂いだ。
それを思い出すと同時に、僕はあの後、去り際に女の子に言われた言葉を思い出していた。
あの時は、何でそんなこと言ったのかぽピンとこなかったけど……。
『お兄さん今日の夜さ、『アストロ亭』の食堂に来なよ。そしたら……いいもの見れて、いいことあるかもよ?』
今思うと、アレはこのことだったのか?
ということは……あの娘はここの従業員か何かで、非売品(?)のソースを料理に使って出してくれた、とか?
とか考えていると、隣に座っているエルクが『ん?』と何かに気付き……料理の全てを運び終えて立ち去ろうとしているウェイターを呼び止めた。
「ねえ、ちょっといいかしら?」
「はい? 何かございましたでしょうか?」
「これ何? 私の記憶が正しければ……多分、誰も頼んでないんだけど?」
と言って、僕の目の前のサンドイッチを指差すエルク。
うん、そう。言い忘れたけど……これ、頼んでないんだ。
頼んでないのに運ばれてきて、僕の前に狙ったように置かれて、しかもあのいい匂いがするって……わけがわからないよ。
するとウェイターは、
「ああ、はい。そのサンドイッチですね。説明が遅れ申し訳ありません。そちらは、私どもの方のスタッフの1人から、そちらの黒い髪に黒服の方に特別に、とのことでして」
「「え?」」
聞き返した僕とエルクの声がハモった。
え、何それ、どういうこと? スタッフからって……
もしかしてアレか? ドラマでオシャレなバーのシーンとかでごくまれにある『あちらのお客様からです』とかいう類の奴か?
現実にあるのかそんなの。初めて見たよ……ていうか当事者で体験しちゃったよ。
というか、その『スタッフ』の人がもしかして昼間の……
「スタッフって……私達今日初めてこの宿に来たのに、そんなことあるの?」
と、横で話を聴いていたシェリーと義姉さんも会話に加わってきた。
シェリーがそう言った後、義姉さんが店員さんに向き直り、
「その人、ミナト……ああ、この黒いコね? そのスタッフさんが知り合いか何かなの?」
「私が聞いた限りですが、知り合いというか、今日助けていただいたそうで……ああそれと、スタッフとは申しましたが、正確には…………ああ、丁度いいですね」
と、ふいに店員さんが振り返って、店のある一角に目をやった。
何事かと、僕らもつられてそっちに視線を向ける。
……何気に今気付いたんだけど、この店、簡単なショーか何かやれそうなステージが、奥のほうに設営されていた。
ひょっとしてここ、酒場っていうかキャバレーに近い感じなんだろうか。
そのステージ、周囲に置かれたロウソクなどの照明器具で、簡単にだがライトアップされていて……その袖から、やはりというか、踊り子らしき何人かの女の子が出てきた。
全部で7人、かなりギリギリな感じで露出多めな衣装に身を包んでで、どの娘も若……ん!?
……その中に……いた。
昼間の、あの女の子が。
あの時とは180度違う、扇情的、いや蟲惑的といってもいいくらいの衣装に身を包んでいて……薄く化粧もしてる感じで、ステージの上に立っていた。踊り子として。
しかも位置取りはセンターだ、すごいなオイ。
その女の子は、ばっちりここにいる僕にも気付いたようで――いや、それ以前に来てるの知ってたんだっけ――踊りに入る前、センターに立った瞬間に……ぱちっ、とウインクしてきた。
そしてその直後、舞台挨拶みたいな感じに行われたトークの後、彼女……レジーナ・ドララットをセンターにすえた女の子達は、いつの間にかスタンバイしていた楽団の演奏に合わせて踊りだすのだった。
+注意+
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