2016.06.20 Mon
話題のサービス「Disco Curly Fries」の誕生秘話からファッションのものづくりの未来まで聞いちゃいました。山縣 良和×江原 理恵インタビュー
灰色ハイジ
こんにちは、灰色ハイジです。先日リリースされた「Disco Curly Fries」(以下DCF)。事業責任者の江原 理恵さんと、アーティストとして参加しているファッションデザイナーの山縣 良和さんにお話を伺ってきました。
テクノロジーとファッション、それぞれの最先端を知るお二人に、Disco Curly Friesの開発秘話から、ファッションの未来まで語っていただきました。
あわせて読みたい:東京とNYCのアーティスト作品をMIXして、Tシャツなどのアイテムが3Dモデル上で作れるサービス「Disco Curly Fries」
聞き手の私・灰色ハイジ、山縣 良和さん、江原 理恵さん。
山縣 良和 (Yoshikazu Yamagata)
2005年にセントラルセントマーチンズ美術学校卒業。ジョン・ガリアーノの デザインアシスタントを務めた後、帰国。2007年リトゥンアフターワーズ設立。 2015年LVMH Prizeに日本人初としてノミネートされる。
ファッション表現の実験、学びの場として、2008年より「ここのがっこう」を主宰している。
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江原 理恵(Rie Ehara)
ボタニカルデザイナー / インタラクティブデザイナー
植物を通して、人と人とのコミュニケーションをデザインする”というコンセプトを掲げ活動中のデザイナー。草花そのものを使った作品から、空間デザイン、ウェブサービスやアプリのディレクションを行うなど、デジタルとリアルの間を行き来したアウトプットは多岐に渡る。また、活躍の場は国内に留まらず、アメリカNYCに赴きスタートアップ企業を取材し情報発信を行うなど、ジャーナリストとしての活動も行っている。
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東京とニューヨークを繋ぐクリエイティブプラットフォームを作っていきたい
ーーまず今回、東京とニューヨークのアーティストが参加ということですが、どのような経緯だったのでしょうか。
江原 理恵(以下・江原):DCFは東京にベースをおいているオリジナルTシャツの販売・作成サービスを運営するスタートアップ「spice life」と、ニューヨークのクリエイティブプラットフォーム「to.be」とのプロジェクトです。日米を繋ぐクリエイティブプラットフォームを作っていきたい為、東京とニューヨークをベースに活動しているアーティストの方を中心に今回の人選となりました。
to.beのファウンダーであるニックは日本に住んで仕事をしていたことがあり、私も過去に取材でニューヨークに行って彼らの仕事のお手伝いをしていたことがあります。Tシャツという共通言語を使って、デジタルアートやコラージュなどを楽しむクリエイティブコミュニティを東京にも広げたいというのが今回の思いです。
ーー今回、山縣さんへのオファーを決めた理由は?
江原:まず、私が山縣さんの作品や、(山縣さんが手がけるファッションブランド)「written by」のサイトを見ていて、ファッションだけに限定していない活動に、勝手ながらto.beと共通するものを感じました。あと、山縣さんの主催しているファッションスクール「ここのがっこう」に私も通っていたんです。自分にいろんな方向から良い刺激を与えてくださって、ローンチの記念にぜひ参加していただきたいと思って一番最初にお願いをしました。
ーー山縣さんは、ファッションデザイナーの枠組みを超えて、表参道 ROCKETでの展示や美術館でのショーなどいろんな場所で発表しているのが面白いですよね。今回は発表の場がデジタルプラットフォームですが、山縣さん自身はオファーを聞いて、どう思われましたか?
山縣 良和(以下・山縣):プラットフォームとして新しい試みだと感じました。元々、ニューヨークで面白いなと感じたムーブメントとリンクする活動しているのも良いですよね。僕もそういったものに関わっていくことで良い影響を受けることができそうだなと思い引き受けさせてもらいました。
ーーニューヨークで面白いと思った活動というのはどんなものですか?
山縣:「DIS Magazine」などの若いアーティストとコラボレーションして、to.beがTシャツを作っているのが面白いと思って。
江原:DIS Magazineという、ファッション業界をDisる新しいメディアがニューヨークにあるんです。ファッション業界のヒエラルキーを問うたり、壊すというのが編集ミッションなのだそうです。to.beがローンチするタイミングでコラボレーションしていました。
to.beの画面。デジタルコラージュがたくさん並ぶ。
江原:to.beにはデジタルコラージュが無数に公開されていて、デジタル世代の10代を中心に1万人くらいのクリエイターがこのプラットフォームを使っています。毎日こういった画像がアップされているんですね。過去の常識にとらわれないコラージュ作品が公開されていくムーブメントが、特にアメリカでは大きくなっていて、日本でもそういうものを時々見かけるようになってきました。
ーー今回のサービスもこれがベースになっているんですか?
江原:これがベースになってますね。to.beでは、コラージュを作る画面が3Dではなく、平面上に絵を描くように作れるのですが、今回はTシャツをデザインしやすいように3D化しています。
DCFでは、ユーザーが自発的に作るプラットフォームというよりは、アーティストさんをこちらが選定させてもらって、お手本的なものを提示しながら、そこにユーザーが参加していくという、半分ユーザー参加型の形をとっています。作り慣れてない人でも、Tシャツのデザインカスタムすることを自由に楽しんでやってもらいやすいかなと思いました。
ーー開発はニューヨークチームとのことでしたが、東京ではどのような役割を担っていますか?
江原:毎週Skype MTGを設けて、サービスについて一緒に様々なことを決めていますが、基本的にはTシャツ全面に柄をプリントできる業者の選定や流通経路など、主に実際の運用のオペレーションのところを構築するのが日本側の重要な役割です。生産〜配送までの流れをきちんと構築するところが一つのミッションでした。
もうひとつは、山縣さんをお誘いしたように、面白いデザイナー、アーティストの方に参加していただくキュレーション業務。コミュニティのリサーチもやっています。日米で様々なところに認識の差があるので、ミーティングはいつも大変です。
全面プリントは通常、肩のシワやプリントズレが起きやすいが、昇華転写という日本の技術を使うことで、DCFのTシャツは綺麗に仕上がっている。
ーー全面プリントは、日本じゃないと難しかったのでしょうか?
江原:アメリカでも出来るんですが、肩のところにシワが出来たりだとか、印刷がズレるなどクオリティは日本ほど高くはありませんでした。その辺に対する信頼感もニューヨークのチームからあって、サンプルを送ったところ絶対日本でやりたいという話になりました。
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