ある日、仁(ひとし)さんという人から連絡がきて、ブログを片っ端から熟読しています今度ランチでもどうですか、と誘って頂きました。
仁さんとのランチ中は、ブログについてそのスタンスや考えを聞かれ、例によって、何の考えも信念も方向性もない僕は期待に沿う回答が何一つ出来なかったわけですが、それでもランチはとても盛り上がりました。
どこか陰のある不思議な独特の雰囲気を持ち、資本主義社会に心底疲れてしまっている様子で、精神的に病んでしまって会社に行けなかった時期もあると話す仁さんですが、「実は僕も昔、一度だけ、変な “ポエム” を書いたことがありましてねぇ、熊谷さん、見て下さいよ(ニヤリ)」と、とつぜん自慢気に切り出してきて、そして、彼がかつて彼女に送った恋文をチラリと見せてくれました
え、いやあ人の恋文(変なポエム?)を読むなんて、何かちょっと気恥ずかしいし、ムズ痒いですよ、と不思議な気持ちで、というか内心いやいやそれを読み始めたんですが、結果的にその変なポエムは僕の糞尿まみれのブログ記事なんかよりよほど良い文で、なんだか読んだあとも不思議と僕の心に残ったので、仁さんへの許可の元、いまモゾモゾと文字におこします
さてこの手紙は、彼女(周子さん)をとある飲食店に呼び出し、お品書きを装って置いておいたそうな
〜特別メニューのお品書き〜
▼平成=年11月 群馬県高崎
仁・周子は凡そ五年の時を経てテニスコートで再会しました。大学時代をともにした部活の盟友が結婚したその前座だったのでした。
仁、周子にテニスコートでアドラーやユングなど名だたる心理学者について質問する。
周子、返答に困る。その後、二人はソフトテニスで相対する。仁の主観によればそれは死闘だったが、儚くも周子に仁は敗北を喫する。仁は東京にきたら是非、観光においでと、周子にレコメンドして群馬(旧上野国)をかっこ悪く落ち武者のごとく後にしたのだった。
▼平成=年2月某日 東京都新宿区
周子からLINEで仁あてに連絡がくる。暇だったら食事でもどうか?という内容だったのです。
仁、人生で初めて女子自発発信で連絡をもらう。心躍る。
当時、仁は今よりも経済的困窮に喘いでいた。手元にあるのは二百円程度とわずかなモンゴル紙幣のみだった。これでは、自宅の初台から周子のいる新宿にいっても帰れない。貨幣経済と時の神様に対して、絶望した。
断腸の思いで、仁、周子に嘘をついて断りの連絡を入れる。無論、その嘘は男の見栄というやつだった。虚栄の連絡を周子にいれてから仁、悶々とする。本当は、予定もない引きこもった五畳半のその部屋の中で立ちつくし、ただうろうろと虚ろな表情で歩き回った。
何を血迷ったか、そしてもう一度、跡形もない泡沫の財布の中身を確認する。
そして、
奇跡的に一枚のQUOカード(五千円分)を発見したのだった。それは、天に導かれた邂逅そのものだった。お正月にお婆さんからもらったお小遣いカードだったのだ。
今思えば、お婆さんは仁と周子にとってコウノ鳥的な存在であったことはほぼ間違いない。
QUOカードの裏面を見る。
するとそこには、コンビニエンスストア以外に提携しているファミリーレストランのロゴが。否応なく目に入ってきたのだった。
デニーズ
自宅から徒歩3分のそこにデニーズはある。
今でも、デニーズだけはどんな批判も批評も受け付けない、頭が断じて上がらない外食の聖地、
仁と周子にとって、少なくとも仁にとっては一筋の光明であり、二人が心落ち着き話し合えるエデンのような、あるいは桃源郷のような場所であった。
仁、周子に条件つきで連絡を入れる。
「新宿ではなく、新宿から一駅の初台まできてもらい、且つ居酒屋ではなくファミリーレストランでよければ、是非食事しましょう」
条件というのは、選択肢を絞ることではなく、それは己が生を全うし、他者の最大幸福を願う極限の選択肢として条件というものはあるのだ、ということをここで悟った。周子に断りの連絡を入れてから30分後のことだった。
仁からの連絡を受けその内容が視界に入った時、周子はどう思ったのだろう。周子は間もなく新宿からつくばへ帰路を辿るまさにその直前だったと振り返るが、逡巡したのかは分からない。だが、恐らくそれは殆ど二つ返事とも言えるスピードで承諾の旨の連絡を入れた。
その後、周子が京王新線という新宿の魔界都市に埋もれたその呪われた路線に辿りつくまでに混迷を極めたことは疑いの余地もなかったが、一方の仁は新宿から初台まで一駅という距離の近さだけを強調し、特にその道のりを周子には説明しなかった。
仁の圧倒的な非おもてなしに対して、周子の意志の強さがそれに勝っていたのであろうが、一般に条件を提示した者が、相手に寄り添わないというのは、非道であり新宿というラビリンスを考えればそれは極道とも言えるのではないだろうか、と仁は回顧する。
今、このやり取りを振り返れば、振り返ってみると、周子のマザーテレサ具合、仁が例え悪漢であったとしても今、この周子の意志決定、或いはジャッジメント、仁は周子に対する一層の愛を禁じ得ない。好きです。大好きです。愛しています。
その後、予定より30分以上も遅れて周子は初台に辿りつき、二人はデニーズという種々とりどりのメニューが咲く満開のお花畑で、二人は過去と今、そして時々未来を想い想いに話し合い、つかの間の蜜月となった。
当然、5000円という緩い制限、祖母の温かな懐、御心の中で、仁はビールを、そして周子は麦酒を早々にオーダーし、お会計は5000円を少し超えた。もしかしたら、その端数分は周子に捻出してもらったかもしれない。
支払不能という最大リスク、食い逃げ犯になるところを救済してくれたのにも関わらず、今となっては覚えてはいません。
しかしとはいえ、我々は、コスパの権化、ファミリーレストラン飲み(通称ファミ飲み)の先駆的な存在であったことは言うまでもないでしょう。
■それから
二人は二人になることを約束し、至極あいまいで不完全でそれでいていつでも法律的に逃避できる「付き合う」という口約束を交わした。
それから、今日まで二人はいつも、風が強い日も、雨が降りしきる夜も、雪のしたたる朝も、季節はいつも春のようにうららかで、のどかで、創造的な日々を楽しく過ごした。
ところで閑話休題。プロポーズの前座として書きだしたが、筆が止まらない。このペースで仁と周子のこれまで一年半を書いたら小論文ではなく論文並みのボリュームになってしまうことは容易に想像でき、それは質の有無を問わずこの場において、あるいはTPO的によろしくないので、果たせるかな、はしょります。
二人の食事はいつもミシュランよりキタナシュラン、花も窯も鷹も沢山みたし、動物や魚や鳥のさえずりに沢山触れあったし、歴史や文化にも沢山ふれ合った。
お互いの生家にも行ったし、我孫子と出雲は湖沼や土地柄も似ているし、バーナードリーチによって文芸という点でもつながっているし、それは仁と周子のつながり以上に深く強く、そして朗らかであった。運命というより奇跡に近いその出会いは軌跡となって、無色のキャンバスに多くの色彩を描き出し、それは未だ完成をみない、目的地の分からない余白を泰然と今も残している。
去年の周子の誕生日に僕は会社を休職する、という6月18日は休職記念日という悲劇をも、アマテラスオオミカミのような優しさで受け止めてくれた周子。休職期間中に仁は㈱JINSトラベルを創業し、二人の出会ったその土地、群馬県は四万温泉に旅行してしまったことは会社にも話をしていない。
四万の病に効能のある温泉、周子の誕生日プレゼントと銘を売ってはいたが、実態は仁の、荒んだその心の病を治したかったわけで、少なからず滑らかなアルカリ泉で英気を癒し、地産の食材は五臓六腑に染みわたった。
その後、その黒い病は周子の光によって徐々にその色合いを変え、黒は青に、青はやがて緑に、そして緑は灰色に、そして今、限りなく白に近い黄色に色を変え、健康な体と精神を取り戻しました。
本当にありがとう。
周子の言葉通り、「仁、長生きして、私たぶん長生きするから」の期待に応えられるように、生に対する哲学も固執もなく、ただ想いのままに、誰かの願いが叶うころと願いながら、ひたすら生命の燃焼を繰り返していた仁にとって、深紅の業火に焼きつくされそうになっていたこの私を救ってくれたのは、その周子の囁き、或いは女神の息吹であったのです。
■平成=年6月18日という今日、そしてこれから
江角周子様、誕生日おめでとう。
これからも、今よりももっと、もっとよりずっと、
お互いに支え合い慈しみ合いながら、これから永く続く道を、
そして時間を、長く、濃く、テノールとアルトのような和音を奏でながら、
今より続く明日を共に歩んでいきたい、と心から思います。
未知の苦難、障壁があっても二人であれば、沢山の方々の協力やチカラを仰ぎながら、
受難の時があっても影が闇に変わらないように、光に照らされ輝きに満ち溢れた人生という刻を、
一つ一つ進んでいければと思います。
そして、もうひとつ。
薄々というより、かなりの濃度で気付かれていると思いますが、
プロポーズの証として、今日これを親愛なる周子へ送りたいと思います。
その後、お二人は無事成就されたそうで、おめでとうございました。そして素敵なポエムをおすそ分け頂き、なんだか、有難うございました。
さて本題に入りますが、これからプロポーズを控えており彼女への手紙を書くにあたって上述の文章をドヤ顔でまるパクりしたいです、という手段を選ばない外道なお客様、僕の方にご連絡を頂ければ上記ポエム1回の使用につき12万円、なんと12万円にて承ります
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