記者会見は独演会なのか
安倍晋三首相の記者会見が最近、「独演会」化しているのではないか。
そう思いつつ、1日に首相官邸で行われた記者会見の動画を改めて見た。消費税率引き上げの再延期を正式に表明した首相会見である。
首相が会見場に現れ、立ち去るまで49分48秒。首相はそのうち前半の25分、一人で引き上げ再延期について語る。
最初の7分はこれまでの政策の自画自賛である。その後再延期の理由に入りそうになるが、ここからまたアベノミクスがいかにうまくいっているかの説明に4分を費やす。
開始後11分になって「世界経済は不透明感を増している」と背景説明が始まり、15分すぎにようやく「延期すべきだと判断した」と表明する。「約束とは異なる新しい判断」の“名言”が飛び出すのは20分になったあたりだ。
後半の24分は記者との質疑だが、首相の回答がいちいち長い。しかも内容の多くはアベノミクスのPRだ。質問に向き合うというより、むしろ自分の政策の宣伝に余念がないといった印象である。
首相会見はこれが当たり前-ではない。例えば小泉純一郎元首相の会見では「武器の輸送は行われるんですか」「行いません」「それは実施要項の中で担保されるんでしょうか」「そうです」など簡潔で明確なやりとりもあった。
安倍首相は第1次政権時代、「今年の漢字」にちなんで記者から「首相のこの1年を漢字1字にするとしたら?」と問われ「それは…『責任』ですかね」と答えたことがある。そもそも質問をちゃんと聞いているのだろうか。
首相は国会でも、質問に正面から答えない一方で、野党攻撃となるとやたら力が入る。どうも「対話力」が欠けているのではないかと思う。
独演会は気持ちがよかろう。しかしそれでは、自分と違う考えを持つ人との対話を通じて、より良き解を見いだす-という政治の妙味が失われる。政治家の「発信力」がもてはやされる昨今だが、まずは対話力を求めたいものだ。
=2016/06/19付 西日本新聞朝刊=